第136話 戦いの乱入者

 5年間、ジェルが古代魔道具の実験を繰り返していたのに対して、レオもまた実験を繰り返していた。


 しかし、ここでいう実験――――その両者の方向性は別物。


 ジェルは、古代魔道具を収集。


 とある目的のための収集ではあったが……それらを戦闘に使用するために、それぞれの特色を把握に重きを置いていた。


 対してレオは、徹底的に古代魔道具の対策に時間を費やしていた。


 その結果、レオは気づいた。


 古代魔道具の使用する時、使用者には魔力の揺らぎが存在している。


(ジェル……きっと、おまえは気づいていないだろう。古代魔道具を手にすることで強くなって行ったお前では……そんなお前に勝つために鍛錬を重ねた俺に――――)


 断っておくが、従来ならば魔力と言うものは肉眼では見えない。


 それを激しく動き合う戦闘中に感じ取れるほどにどれほどの鍛錬が必要だったのか?


(来る……右から。種類は自己強化系……それと同時に俺の周囲に極めて微妙な磁場を展開させてくる)


 ジェルが使用している魔道具は、確かに自己強化系のソレ。 加えて、重力系の魔法で対象に気づかけず反応を遅らせるもの――――つまり、レオの古代魔道具に対する考察は、それほどまで精度の高いものだった。


 剣がぶつかり合う音が何度となく聞こえてくる。


 ジェルの攻撃からは焦りが見え隠れし始めた。


(なぜだ……古代魔道具を使えば、使うほどに不利になっていくような感覚。それほどまでに俺とレオの実力差があるということか? そんなこと――――)


「認められるか!」


 ジェルの全身が自身の魔力によって包まれる。膨大な魔力を剣に――――魔剣に乗せて振るう。


 それは剣技の領域を越えて、凶悪な破壊活動と化す。


 振るわれる刃は、ただ物体を切り裂くだけにはとどまらず――――


 延長戦の空間すら切断してみせる。


 だが――――


 それはレオにとって予定調和に等しい効果だった。


 回避と同時に反撃に出たレオ。 大振りの攻撃に隙を見せたジェルには防御すら難しく、その刃を身に浴びる――――そう思われた直前だ。


 2人の頭上。 何か巨大な物が、天井を破壊して――――姿を見せる間もなくレオへ攻撃を開始する。


「このタイミングで乱入者!? 何者だ!」


 レオはジェルへの攻撃を中断。 新たな敵を排除しようとする。


 その新手は巨大。 巨大な亀だった。


 正体に気づいたレオは、ソイツの名前を張り上げた。


「この攻撃は南下作戦参謀――――トム将軍か! なぜ、ここに!」


「愚かな勇者レオ! ワシの忠義は距離なんぞ、容易だ! 容易に越えて見せるわ!」


 トムの攻撃は落下攻撃。 レオの体を掴むと体重を浴びせるように倒した。

 



 

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