第137話 南下作戦参謀 トム将軍
ドワーフのトム。 今は、彼の事をドワーフだと思う者はいない。
ドワーフという擬態を止めた彼の肉体は巨大化。
全身を甲冑に身を包み――――まるで、古代魔道具による魔族化以前の体。
亀の魔物を連想される肉体になっていた。
ドワーフだった頃の面影があるとするならば、背負った武器――――巨大なハンマーくらいのもの。
そんな彼が今、レオの体を倒して馬乗りになった。
馬乗りになり、殴り続ける。
その拳は鋼鉄の籠手に覆われている。 鈍器と代わりない。
だが、勇者となったレオの超回復。
倒し切れない。殺しきれない。
――――それでも構わない。
超回復を使わせれば、レオの魔力を消費させ続ける。
そうすれば、いずれは――――
だが、それはレオも理解している。
「うおおおおおおおおお!」と裂帛の気合。
それは魔法ですらない。 ただ、自身の魔力を暴走させて――――爆発を起こした。
「――――ッ!」と白煙の中、レオは立っていた。
超回復によって、ダメージは見えない。 しかし、消費続けた魔力の代償だろう。
疲労は隠せず、異常な汗と乱れた呼吸。
対して「――――っ」とトム。彼の鎧は――――今、彼の代名詞である鎧は破損した。
その構図――――明らかにレオが不利。だから、自然と口が開く。
「前衛を手にしたか……ジェル」
巨大なトムの体。その背後にジェルが立っていた。
「2対1……いまさら卑怯なんて言ってくれるなよ?」
「まさか? ここでお前等2人を倒せるとしたら――――ありがた過ぎる機会だ」
「流石だ、レオ。この状態で希望を失っていない。『勇者』の二つ名に相応しい」
戦いが再開される。 今度こそ、巨大なハンマーを手にしたトムが、レオに向かってソレを叩き落す。
レオは聖剣を持って受けようとする。しかし――――彼の意図ではなく、トムの攻撃が弾かれた。
「なに!」と驚きの声を出したのは、トムか? レオか? あるいはジェルだろうか?
レオを守るように魔力の防御壁が生まれている。
「新手の敵? 何者か!」とジェルは声を張り上げる。
気配――――巧妙に隠しているが――――
「そこか!」と攻撃魔法。ファイアボールをソイツに狙って放った。
「当たったはず。しかし、なんだ? この手ごたえは?」
魔力を防御されたり、弾かれたりした経験はある。 それとは何か違う方法で無効化された。
未知の技を、あるいは未知の魔法を使う敵。それがジェルの警戒心を強める。
「――――」と無言で姿を現した敵。 それは、初めて見る顔ではなかった。
「お前は――――ドロシーか?」
かつて、レオの――――そして、ジェルの仲間だった魔法使い。
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