第138話 復活のドロシー

 魔法使いのドロシー。かつてのレオとジェルの仲間……


(なぜ、彼女がここに? それに彼女は――――) 


 ジェルは彼女の強さを計測する。


(過去と変わらない。魔法使いとしての実力――――魔力の総量も。だが、なんだこの圧力は? 姿も、魔力も変わらないが……明らかに強くなっている。不気味なのは、その理由がわからないというところだ)


 ドロシーは当たり前のようにレオの背後にまわる。


 レオが前衛。ドロシーが後衛……そんな懐かしいスタイル。


「……助けて来るのか、ドロシー?」


「当り前じゃない。私たちは仲間じゃない」


 おそらく、2人が仲間として戦うのは数年ぶり……のはず。


 それでも大きな脅威を感じる。


「トム、警戒すべきはドロシー……新手の魔法使いだ。レオの妨害を越えて潰せるか?」


「それがジェルさまの命令とあらば、この命に変えましても」


「よし――――行け!」


 その声に合わせて、トムが突進していく。 


 武器は巨大なハンマー。本人の巨体と合わせて、大きなリーチ。


 レオよりも速く、遠い位置からの攻撃を可能とした。


 トムと比較すると子供と間違えられかねない体格差。 その猛攻を受け切るレオの力量も高い。 しかし、忘れている事がある。


 ジェルは、純粋な後衛ではない。


 トムの巨体に隠れて、自身も前衛として前に――――レオを越えて、ドロシーへ直接攻撃に出る。


 前衛を相手に接近で可能な後衛などいない。


 杖のみが武器の魔法使いが剣による攻撃を防げるわけがない。

 

「今までは命までは取らなかった。しかし、ここで因縁を断つ。――――刺突」  


 吸い込まれるようにドロシーの胸にジェルの剣が突きつけられる。しかし、


「俺の剣が止まった。魔法か? しかし、不自然な結界。古代魔道具か?」


 剣による攻撃が不発に終わったジェル。 動きが止まった彼に、ドロシーが杖を振る。


(杖に無詠唱魔法……風属性を付加させて切れ味を有している。まるで魔剣だな)


 ジェルはしゃがみ込み、攻撃を避けた。その頭上に切れ味を持つ風が通り抜けて行った。


「凄いなぁ……しかし、風属性で間合い延長した剣と思えばいい。しかし、俺の刺突を無効化した方法はなんだ?」


「もちろん、古代魔道具よ」とドロシー。


「うむ。……俺は、この世界で一番、古代魔道具に詳しい研究者と自負している。しかし、その杖を含めて初見の武器だな」


「当然よ」と、ドロシーは杖を構えたままで続けた。


「あなた達は知らないでしょうが、今の教団第十三課スプリガン……あのアスリン・ライヤの後継者なのよ?」

   

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