第134話 地下2階と突入者

 上の階は静かになった。 


 倒せたのかは不明だが、巨人ゾンビは動きを止めたのは確実だろう。


「さて、もう一度、床を切り裂いて、倉庫とやらを見ても良いが……」


 ジェルは周囲を確認する。 ほとんど、地下1階と変わらない光景。


 培養液が満たされたガラス容器が並んでいる。中身は――――


「――――いや、これは! ……ゾンビではないのか?」


 地下1階でゾンビが入れられたガラス容器と同じ物と思われたソレ。


 しかし、中身が違った。 


「中身は人間……いや、エルフか? 生きているのか?」


 ジェルは考える。


 地下1階の状況を考えると、おそらく中に入っているには、ゾンビ化する前の人間。


「いや、逆なのか? ゾンビ化していく経過観察をしているように見えるが……ゾンビを人に戻している? あるいは――――」


 ゾンビを材料にして、理想の人間を製造している?


 ジェルは背中に寒気を感じた。なぜならそれは────


「正解か? 俺たちの、いや、俺が求めている技術の1つ」


 魔物を人間化する技術。それは、古代魔道具『自動販売機』にもあったもの


「なら、この下の階層。倉庫とやらには完成品が────」


そこでジェルは言葉を止める。


 感じ取ったのは、急接近する脅威の存在。


 ソイツは上の階層を────床を破壊して現れた。


 土煙の中、微かに見えたのは巨人ゾンビ。


 上の階層に出現した、迷宮の主とも言えるソイツは……


 ゴトッと音を鳴らし、切断された巨人ゾンビの頭が床を転がる。


 戦場で打ち取った敵将の首標のような扱い。


 巨人ゾンビを倒して、首をはねた人物の正体は────


「俺の予想よりも遅かったな。レオ・ライオンハート……俺の部下たちはどうした?」


「倒したさ。無限に生き返る怪物だって、殺さないなら倒す方法はいくらでもある」


「……ほう、流石のお前でも殺せなかったか?」


「俺とお前の間で挑発する意味があるか?」


「確かに……ない。俺たちは、もう――――」


「殺し合わなければならない」


 レオが剣を抜く。 それは、『勇者の聖剣』


 溢れる輝きをジェルにぶつけるために、高速で接近を開始した。


 対するジェルも剣を――――『魔王の魔剣』


 禍々しい闇が周囲を輝きを奪い去る。 迫り来る脅威への追撃に込められた魔力は、レオが間合いに入った瞬間に解き放たれる。


 衝撃が周囲の空気を震わせた。 両者は離れた。


 たった一合の打ち合い。 だが2人とも、呼吸が大きく乱れ、頬には切傷が複数できていた。


 自動的に回復魔法が傷を癒し、体力の消耗すらも回復していく。


 2合目―――― 3合目――――止まらない。


 体力とダメージは受けた瞬間に回復していくが、魔力の消費は膨大だ。


 戦いは短期決戦となる。



 

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