第133話 VS巨人ゾンビ

「なるほど、ここが実験施設か」


 地下2階。 実験施設と言われる場所。


「ここから上のゾンビたちは増えていたのか」


 広い空間に大きなガラス容器が幾つもある。


 その内部にはゾンビたちが入ってる。


「動かない。この液体……培養液にヒミツがあるのか」


 コンコンとガラス容器を叩く。 液体が入ってる分、音が鈍い。


 しかし、その頑丈さはわかった。


「暴れたり、動き出してた厄介だ。念のために壊しておくか」


 培養液が供給されているらしきパイプ。それを剣で切断していく。


 そうやって進んで行くと――――


「随分と大きいな。しかも、中身がない」


 通常のガラス容器の5倍以上の大きさ。それが真ん中に設置されていた。 


「……うん、地面が湿っている」とジェルは地面に触る。


 中身の培養液が漏れたのは、最近……数時間も経過してないということだ。


「偶然ではなく、上の階層で戦闘や破壊の余波と考えるべきか。さて、中身は目覚めたばかりで徘徊してると――――」


 ぺちゃ…… ぺちゃ……


 

      ぺちゃ…… ぺちゃ……


 天井から、何かが零れ落ちている。 天井に張り付いているのは巨大な――――通常の5倍。巨人のゾンビがジェルを狙っていた。 


 そして、巨人ゾンビは自由落下を開始する。ジェルに向かって、巨大な牙を――――


「だが、ファイアボール!」


 カウンターの魔法。 巨大な火球を叩き込んだ。

 


 全身が炎に包まれた巨体は地面に落下。 そのまま、身を焼かれ動かなくなった。


 しかし――――


「火災を抑えるために水か。床からの白い煙は……ゾンビが暴走した時に鎮静化するための薬物か?」


 天井にスプリンクラーが作動して、巨人ゾンビを炎から守った。


 再び立ち上がったソイツは、激しい敵意を見せた。


「なら、コイツはどうだ? ホワイトエッジ!」


 白い氷の刃が巨人ゾンビの四肢を貫いた。 


 まるで複数人で行われた剛槍の突き。壁に串刺しにされて動きを封じる。


 捕縛から逃れるように激しく暴れ回るゾンビだった。しかし、氷の槍と化したジェルの魔法を引き抜くために手を伸ばす。


「ほう……ゾンビ化しても、本能のまま暴れるだけではなく、その程度の知能はあるのか。興味深い」


 ジェルは、さらに魔法を発動。ホワイトエッジの追加で巨大ゾンビを壁に張り付けにする。


 天井から降り注ぐ水も凍りつかせ、ソイツを氷の彫刻へ変えた。


「どうやら、本能だけでも過ぎれば、獣と同等の知能は宿る……か。いや、まだ生きてるのか。生命力に特化している……ゾンビのクセに?」


 一方的に優位を保っているように見えるジェル。 


 (しかし、決め手に――――決定打に欠けるか。ここは、逃げよう)


 彼は名刀コテツを構えると地面を切り裂いた。 


 人が入れる程度の穴。巨人ゾンビは腕も通らないだろう。


「念には念を入れて――――」とジェルは出現した魔導書を掴む。

 

 その魔導書は雷属性の効果を上昇させる物。 加えて――――


「水に囲まれている状態に叩き込む――――雷光の槍ライトニングジェベリン


 『雷撃上昇の魔導書』と『雷光の槍ライトニングジェベリン


かつては2人で行っていた魔法の相乗攻撃。 今は1人で可能だった。  


    


 

 


 

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