第131話 地下1階

「いらっしゃいませ。足元にご注意してお乗りください」


 その言葉に誘われジェルは古代魔道具に近づく。


 彼は知らない。その魔道具がエレベーターと言われる古代の遺産と言う事を……


「ほう……乗り物だったか。迷宮の地下には何があるか? 単純に地下迷宮が広がっているなんて話は遠慮したいのだが……」


 独り言。しかし、古代魔道具は独り言にすら反応を示した。


「地下1階は、商品開発部。地下2階と3階は実験施設。以下は商品倉庫となっています。まずは地下1階の受付で確認をお願いします」


「会話のできるタイプの古代魔道具。なら、これを知っているか?」


 ジェルは、精密な絵を保存する魔道具を取り出す。 


 空中に浮かび上がった絵は、古代魔道具『自動販売機』


(古代魔道具だからと言って他の魔道具の情報を引き出すことはできないだろうが……)


 そんなジェルの予想は、覆された。


「こちらは、自動販売機。商品名は『ジハンくん』ですね」


「……知っているのか?」


「はい、こちらは当社の商品となっています」


「――――うむ。ならば、これと同じ物が、ここの地下にあると?」


「はい、ただいま照合を開始します。当社に保管されている自動販売機の在庫は――――21014」


「なに?」と思わず聞き返した。 


 1つあれば、天下が取れる。 


 ジェルは世界にある『自動販売機』を数個発見。なんとか持ち帰り、実験と研究を行っている。 


 その結果、世界の王族と戦争を起こし、少なくはない勝利を手にしていた。



「それが2万も……だと? 生きているなら、持ち帰り。死んでいるなら、破壊するしかあるまい」


「……」と古代魔道具が無音。 


(言葉が剣呑すぎたか? 敵と認識されたら防御システムが動き出すはずだが……)


「それでは、地下1階の受付に案内いたします」


「……」と罠を警戒しながらも、ジェルは魔道具『エレベーター』の中に入った。


「それでは動きます」の言葉と同時に魔道具の床が動き出した。


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


「地下1階になります」の声と共に扉が開いた。


 広い空間。 目の前には、机と椅子……その背後には象徴エンブレム


「当然、人はいない。どうやら、この文字は古代文字で……『受付』か。ふっふふ……俺も勉強したもんだ。しかし――――」


 ベルトは周囲を警戒する。ここは普通の空間ではない。なぜなら――――


「毒が散布されている」


 ジェルは分析する。相当な猛毒……常人なら、1時間以内で死を免れない。


 しかし、ジェルの肉体は薄い結界によって守られ、毒は通さない。


 それに加えて解毒の魔道具も手にしている。


「ここの階層だけではない。全てが毒に汚染されている。地下の2階、3階は実験施設と言っていたな」


 振り返り、古代魔道具『エレベーター』に戻ろうとする。 しかし、反応がない。


「……受付で、ここで何らかの方法で許可と取れという事か。面白い」


 ジェルは膨大な魔力を解き放つ。 


 魔力で階層を覆い、魔物を含めて危険な存在を把握……


「いるのか? こんな場所にも魔物が……いや、食料はどうやっている?」


 魔物の存在を把握したジェルは、剣を抜く。 魔物の住み家らしき空間に踏み込んだ。


「やれやれ、ゾンビ系の魔物か。本当に食料はどこから手にしていたのか?」


 ジェルは攻撃を開始。ゾンビを蹴散らし始めた。 


 

 

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