第130話 古代魔道具の復旧作業

「ソイツは、そこからが強い」


 ジェルの言葉。レオは――――


「……なに?」といぶかしがる。


(手ごたえは十分。幻覚の類ではない。しかし……)


 彼は改めて、確認する。


 倒れた執事の遺体。確実に命は刈り取っている。


 それでもレオに迷いが生じているのは、他ならぬジェルの言葉だから。


「逃げるつもりか、ジェル・クロウ!」


「逃げるつもり……か。そう思うなら追いかけてこい。そいつを倒せたなら……生き返れ! 不死鳥フェニックス!」


「――――なに!」とレオが驚いたのは、倒れていた遺体が動き出したからだ。


 ゴトゴトと動き出し、炎が上がる。


 一瞬で燃え上がり、眩い光に包まれ――――次の瞬間に遺体は燃え尽きていた。


 燃え尽きた跡から鳥が、炎の鳥である不死鳥が出現した。


「伝説の怪物。不死身の代名詞……そんな切り札を隠していたか。しかし――――」


 レオが持つ『勇者の聖剣』 その輝きが増して行く。


 それに合わせた不死鳥フェニックスの咆哮。 


 その効果だろうか? 『暗殺者』と『魔術師』にも異変が起きた。


 その体を守るように、炎の鎧が出現。身に纏う。


「不死者の眷属。本体の力が逆流したか? だが、ここで斬る!」


 接近してくる炎の暗殺者。 


 自信の体から火を引きちぎるって見せると、牽制のように火球を飛ばす。


 それをレオは切り払い、横薙ぎの一振りを――――できない。


 魔術師の支援。 炎の茨がレオを捕縛……肉が焼ける音。髪の燃える臭い。


 苦痛に襲われるレオへ。本体である不死鳥フェニックスが襲い来る。


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


 1人迷宮を進むジェル。 背後から聞こえる戦闘音……にしても、あり得ないほどの破壊音が聞こえてくる。


「……不死鳥フェニックスなら、最悪死ぬことはないだろうが……迷宮ごと破壊して閉じ込められないようにしてくれよ」


 時折、不安そうに背後を確認するジェルだったが――――


「不自然に狭い通路。おそらく、部屋を隠すための構造……ここか!」


 ジェルが抜いた刀――――名刀コテツ。 その効果は武器及び防御破壊。


 耐物兵器とも言える剣は容易に壁を切り裂いた。


「中には……やはり」と警戒心を強めながら、中の様子を窺う。


 やはり、隠し部屋。 しかし、光源はなし。 真っ暗で良く見えない。


「シャイニング」と周囲を照らす魔法を使用。ジェルの周囲に小さな光玉がくるくると飛んで回る。


 部屋の真ん中には――――


「古代魔道具……しかし、死んでいるか」


 ジェルの知っている古代魔道具『自動販売機』とは、形状が違う。


 しかし、経験則から古代から伝わる古代魔道具の種類には違いない。


 ジェルは剣を鞘に納めたまま、手にした。 コツコツと剣先で地面を叩きながら――――


「音が違う。空洞に……いや、別にも何かある」


 地面を斬る。 中には配線が通っていた。


「魔力の残量はなし……。雷の魔法を通す」


 ジェルの背後に雷系の魔法。電気を帯びた球体が浮き上がる。


 魔法の球体から生物の触手のようなものが伸びた。


 それが潰れた線の代わりに、徐々に電気を繋ぐ。


「魔力を流し過ぎて、壊さないように……慎重に……」


 ジェルの雷魔法は、もはや生物のように動く。


 潰れたり、切れた配線の代わりに触手で繋ぎ、電気を流し続ける。 

 

「これで生き返るはず……よし!」


 暗かった室内に点灯が蘇る。 そして、真ん中に置かれている古代魔道具は――――


「いらっしゃいませ。足元にご注意してお乗りください」


 


 


 

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