第5話 特別怪物

「チッ!」と舌打ちを1つ。それから、レオは俺を掴んでいた腕を外す。


「おい、ジェル。あまり、俺を舐めるなよ? 次はないからな」


「……あぁ、ごめん」と頭を下げる。


「クズめ。急いでゴブリンを追跡しろ。その先に目的の特別怪物エクストラモンスターがいるに違いないからな」


「――――」と無言で俺はゴブリンを追う。


 だが、内心では


(クソっ! クソっ! クソっ!)


 怒りよりも情けなさが感情を支配する。 そして――――


(もういい。これが、この依頼が終わったら、俺は抜ける。別の仲間を見つけて、別の土地で冒険者を続けるんだ!)


 そんな事を考えながらゴブリンを追う。 前を走るゴブリンは俺の事に気づいてないはず。


 足音のしない走行術。 それでいて悪路は、四足の魔物を追跡できるほどに俺は速い。


 そして――――


「くっ……これは」とゴブリンを追って、とんでもないものを見てしまった。


 それは、武装したゴブリンの軍勢。 


「馬鹿な。コイツ等……どこで、上等そうな剣や鎧を?」


 全員が全員、武装しているわけではないが……


(ヤバそうなのは、鉄の鎧に身を包んだホブゴブリン。魔力上昇の杖を持っているゴブリンメイジ……)


 そして俺は見た。 軍勢の真ん中で座っている1匹のゴブリン。


 赤い目をしている。


「間違いない。あれが特別怪物エクストラモンスターだ」 


 そして、その赤い目が動いて、俺を捉える。


「――――っ! 見つかったのか? この距離を光源もないのに」


 言葉では否定しながらも、俺は反射的に駆け出していた。 


 合流した仲間たちは――――


「なに? ゴブリンの軍勢だと?」


 レオは疑いから入った。


「あぁ、それも武装していた。少なくとも100匹はいた」


「馬鹿を言え、ゴブリンだぞ? 統率が取れるはずがない」


「実際に統率が取れるから特別怪物エクストラモンスターって事なんだろよ。お前たちが撤退しないなら、俺1人でも帰らせてもらう」


「チッ! 落ち着け、わかったよ。態勢を整えよう」


 だが――――


「危ない!」と俺はレオを庇うように前に出て剣を振い、攻撃を切り払った。


 攻撃してきたのはゴブリン。 だが、奇妙な事が1つ。


「なんだ、コイツ等? 武器が異常に長いぞ」  


「言ってる場合か。数は10……荷物持ちはドロシーを守れ」


 レオを実力は確かだ。 


 すぐに敵の数を把握。それと同時に後衛の護衛を指示する。


 それと同時にシオンが口にする。


「あれは……あの陣形は危険だ」


「知っているのか、シオン?」


「あぁ、我が国で有名な将が、雑兵に長い槍を使わせて成果を出していた……気をつけよ。集団で使用される長槍は危険だぞ!」


 長槍と言うよりも原始的な武器だ。


 そこらへんの長棒。それに石を削って切れ味を出した刃を括りつけている。


 冒険者仲間の全員が異常に気付いているが、その事に声を出さずにいた。それは――――


 『ゴブリンが戦術を使っているだと?』


 

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