第3話 迷宮前

 近隣の村まで馬車で移動。


 そこから徒歩。半日かけて目的地に到着した。


 「疲れた~ 早く天幕を立ててよ」と疲労を口にしたのはドロシー。


  彼女は魔法使い。体力は少ない。


  だが、4人分の荷物を背負っているジェル――――俺に当たり前のように命令する。

 

 「……」と俺は無言で本拠地を作る。


 それが反抗的と受け取ったのだろう。


 「チッ!」と彼女は舌打ちをして離れていく。


 迷宮から少し離れた場所。 


 日が暮れるまで、暫く時間があるが本格的に迷宮に挑むのは明日になるだろう。


 天幕で休憩をする、レオたち。 


 俺は、「偵察に行ってくる」と鎧を外し、軽装になる。


 長剣も残し、予備武器である刃の短い剣に変えた。


 斥候としての能力は、山の民である両親から教わった技術だ。


 山の獣は、人間の臭いを嫌う。 


 鉄の臭いはもちろんダメだ。体や衣服を石鹸水の臭いも敏感に感じ取り、近寄ってこない。


 それは、山の獣だけではなく、魔物も同じだ。


 結果として、薄汚れてみすぼらしい恰好になるが、斥候としては必要な装備だ。


 しかし――――


「おい、ジェル……もう、それ止めないか?」


 一瞬、言われた意味が分からず「え?」と返す俺。


「今回は初心者向け迷宮だぜ? 地図もあるだ、そこまで警戒する必要あるか?」


「いや、それでも行方不明者が出てるんだ。警戒は必要だろ?」


「はぁ、わかってねぇなジェル」とレオはため息をつく。


「行方不明が出てるの単純に冒険者の質が下がっているだよ」


「それは……」と俺は言い淀む。 


「だってそうだろ? 初心者向けのダンジョン。ターゲットは突然変異のゴブリン1匹……それでダンジョンの難易度があがるはずないだろ?」


「――――」と言葉を探している俺に対して他のメンバーもレオに賛成してくる。


 まず、剣士のシオンは、


「今回の目的は捕獲のはず。戦闘や探索ではないのだろ? ならば、今回は時間との戦いだ。小休憩後に迷宮に向かうべきだと思うが?」


 魔法使いのドロシーは、嫌がりながらも、


「私は疲れているから、明日からが良いのだけれども……

 正直、私が活躍しそうな強い魔物がいそうにないのよね、ここ」


 暗に「戦闘に参加しないから、今からでも構わない」と言ってるようだった。


「そういうこった。まぁ、斥候しか能のないお前は役立たずだ。荷物持ちに専念してくれや」


「がはははは……」と馬鹿にするような笑い。


 それで決定だ。俺には反論できない。


 僅かな休息後に、迷宮に挑む事になった。

  

 それがまさか――――

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