第2話 ダンジョン探索前日
冒険者ギルドにて
冒険者ギルドの役割は冒険者と依頼人の仲介が一番の仕事だ。
それらを冒険者の実力に合わせて斡旋していく。だが、その日は――――
「あん? なんでゴブリン退治しか依頼がないんだよ?」
レオは受付嬢に対して苛立ちを隠さなかった。
「申し訳ございません。しかし、こちらは特別な依頼になっておりまして……」
「あん? 特別依頼だぁ?」と半信半疑で受付嬢から提示された資料に目を通して行った。
「
「はい、初心者向けのダンジョンで死者、行方不明者が増大しています。その原因と思われる赤い目のゴブリンが目撃されています」
「ふ~ん、赤目のゴブリンね。報酬は……すげぇじゃん! 前金まで出るのかよ」
「はい、
「よし、みんなこれ受けるぞ!」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
冒険者ギルドの建物には飲食店が入っている。
なんでも、ギルドとは冒険者が集まる酒場を国が管理、法整備して生まれた職業組合だかららしい。
「とりま、前祝だ。
そう言って、テーブルに並べられた豪華な料理を食べながら、前金を
「えっと……俺のは?」
「なんだ、ジェル? お前、前金がいるのか? ただの荷物持ちのクセによぉ」
「――――」と俺、ジェル・クロウは言い返せなかった。
確かに俺は荷物持ちだ。
でも、4人の冒険者仲間の食糧や必需品を運ぶ。それも舗装されていない迷宮の悪路を。
加えて、他の3人たちが寝ている間は1人起きて、徹夜で周辺の警戒。
場合によっては仲間たちより先行して、斥候の真似事までやる。
なにより、自分の身を守れるだけの戦闘能力はあるつもりだ。
だが――――
「いじめちゃダメよ、レオ」
そう言うのは、ドロシー。
魔法が使える彼女は、冒険者でも珍しく回復魔法と攻撃魔法の両方が使用できる。
そんな彼女の言葉は、別にジェルを庇ったわけではない。それどころか、
「誰もが私たちみたいに優れた能力を有しているのではないのよ」
クスクスと笑い、ジェルに対して嘲笑う態度を隠さない。
「全くだ。働かざる者、食うべからず……これは拙者の国の言葉だが、まるでお前のためにあるようだ」
賛同したのは、シオン。東洋から武者修行に来た黒髪の剣士……女性だ。
この地で『剣聖』と呼ばれ、活躍している同胞たちを目指して、海を越えてやってきたそうだ。
彼女は「――――」と無言。ただ、その愛刀の如き鋭い視線をジェルに向けるだけだった。
「た、確かに俺は戦闘力では、みんなに劣るけど……それなりに――――」
「それなりになんだ?」とレオは俺の言葉を遮る。
「成果を出さず頑張ったから評価してくれとでもいうつもりか? 底辺冒険者のくせに」
俺は言い返せなかった。 俺は怒りを抑え込むだけで精一杯。
レオ達は、その様子すら揶揄って笑うのだ。
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