第61話 金策の誤算③

 ―――冒険者ギルド―――


「あれれ、ジェルさん。どうなされたのですか? そんな目立たない恰好をして」


 受付嬢は変装をしているつもりのジェルに声をかけた。


「静かに! 実は相談があって……」


「?」と訝しがる受付嬢にコカトリスを捕縛したことを告げた。


「なんと! それで逃げ出していたコカトリスは、今どこに?」


「連れ回すわけにもいかないので、町の外でシズクと一緒に待機させてある」


 あの後、ジェルたちは簡単な檻を作ってコカトリスを閉じ込めたのだ。


「けど、そこら辺に落ちてる木材で作った檻だ。いつ壊されるかわからない」


「わかりました。すぐに対処します」


 そう言って受付嬢は、資料を広げる。


 大量の資料に凄まじい速度で目を通すと、何か書きこみ始めた。


「これで完成です。すぐに上の者にこれを!」


 その後、魔物捕縛用の部隊が編制された。


 すぐさま、コカトリスは移動させられた持ち主の元に帰って行った。


 なお、二度と脱走しないように再調教となったが、調教師たちはコカトリスが従順になっていたことに驚いた。


「はい! ジェルさん」


「ん? これは」


「順番は逆になりましたが、ギルドの正式依頼を受注した証明書になります」


「もしかして、コカトリスの探索依頼を成功させたって事に……」


「はい!」と答えた受付嬢は、ジェルが複雑そうな表情をしているのが不思議そうだった。


 ・・・


 ・・・・・・


 ・・・・・・・・・・


 宿に戻ったジェルとシズクは話込んでいた。


「もう目立たずに、効率的な金策なんて無理だぜ?」とシズク。


「そうは言ってもなぁ。冒険者ギルドの評価が高まれば、難易度の高い依頼を振られる事になる。2人パーティじゃ限界が来るぞ」


「増やしたらいいだろ? 仲間を」


「いやいや、簡単に言うけど俺たちには絶対に知られたらまずい秘密がある」


『底辺冒険者』と言われていジェルを強者に押し上げた 古代魔道具アーティファクトの存在。


 それはシズクも一緒だ。


 彼女は『特別怪物』と言われる魔物だったが、人間に紛れ込んでもバレないのは、 古代魔道具アーティファクトにあった『魔族ガチャ』の効果。


「……いや待てよ」とジェルは、荷物から地図を取り出す。


 その地図は、世界中に存在しながら秘匿されている古代魔道具『自動販売機』の設置場所が書かれている。


「どうした、ジェル?」


「たしか、この地図には『自動販売機』の位置と一緒に開催されている『限定ガチャ』の内容も――――あった。これだ!」


 ジェルが指したのは、地図に書かれている『自動販売機』の横。


 そこには、こう書かれていた『復刻!期間限定! 魔族ガチャ』……と。


 それを見たシズクは――――


「まさか、お前……やらせるつもりなのか? 不死鳥フェニックスに魔族ガチャを?」


「うん、ダメかな?」


「いや、わからねぇ。 なんせ、伝説の魔物だからな。魔族になって弱くなったり……」


 そんな2人が指針が決まりそうになっていた時だった。


 コンコンと控えめなノックが響いた。


「すいません、冒険者ギルドの者です」   


 ドアを開けると、ギルドの受付嬢が立っていた。

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