第87話 邂逅 レオ・ライオンハートとケンタウロスの少女③
セツナが装備している魔道具――――その正体は察しの通り、銃である。
狙撃専門の銃。 しかし、魔道具とあって特殊な銃だ。
手で握ると、生物のように腕と一体化する。 そのため、純粋な鉄製というよりもかなりの軽量化を行われいる。
最大射程距離は2キロではあるが、現実的には500メートルの狙撃が成功できれば、達人と言われるレベルだ。
幸い、セツナの腕前は十分に達人の領域まで達していた。
そんな達人、セツナから見てレオたちは――――
(むっ、動き出したの? 遮蔽物から身を出すか――――)
「なるほど、基本の動きだね」とセツナ。
レオは盾を構えながら、身を屈めて前進。 少し離れて、後衛のドロシーが続く。
「なるほど、なるほど……基本の動きと思わせて誘導。バレバレだよ」
レオとドロシーは安全のために身を屈めているのではない。
進軍速度を遅くしても不自然がないようにしているのだ。
「本命は、侍の女。 視界が開けて遮蔽物がない右ではなく、左から迂回して私を背後から襲う計画だな」
セツナの五感は人間とは別次元にある。
加えて、風はレオからセツナに向かって吹いている。
セツナには、3人の匂いが届いていて、正確な位置まで把握できている。
「それじゃ、私はこう動かせてもらうよ」
セツナは腕の魔道具――――狙撃銃でレオを狙う。
(低い体勢は、確かに狙い難いけど――――難しいだけなら私は外さない)
着弾。 レオの盾に弾丸は炸裂した。 しかし――――
「これは驚いた。なぜだか知らないけど、こっちの攻撃のタイミングが読まれている? 完璧に盾で弾いたなんてね」
セツナの言う通り、レオは盾で受けるだけではなく、弾丸の軌道を逸らすように弾いて見せた。
「でも、魔道具の衝撃は、確実に痛みを与える。そして――――」
彼女は2発目を放つ。 レオに絶望を与えるため――――それでありながら、彼の闘志が折れてしまわないように――――盾を狙って撃つ。
3発目。 4発目――――
当然、盾で完璧に防御しきれるわけはない。
盾を貫通した弾丸は、レオの体に直撃する。 盾を貫いた時点で貫通力は落ちているので、レオの鎧までは貫くほどの威力はない。
だが、弾丸が生み出す衝撃は、確実にレオに強いダメージを与え続けていく。
「そろそろかしら?」とセツナは笑う。
背後に来ている。 気配は消しているが、この自然の中で自分の五感を誤魔化せることはできない。
(今は、飛び出すタイミングを狙うタイミングなのだろうが――――残念だな)
セツナは、駆けだした。
左側に向かって駆け出す。 右側と違って視界が開けていると言う事は、遮蔽物が少ないと言う事だ。
「つまり――――狙い放題だ」
だが、
レオが笑っているのを
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