第112話 VSアスリン・ライヤ⑤

 前に出てくるアスリン。 ジェルは自然と彼女の武器『生と死のナイフ』に視線を向ける。


 死者を操るナイフ……おそらく、そのナイフで刺し殺した者が限定なのだろう。


(しかし、あくまでこれは推測。不死鳥が言うには、あのナイフは人を操る毒のようなもの……だとしたら、刺されなくとも僅かに傷つけられただけで効果を発するかもしれない)


 ジェルは警戒心を強める。 


 後衛職に違いないアスリンが飛び込んでくる。 


 ならば、あるのだろう……相手を必ず斬りつけれる必勝法を――――


 だが――――


 突如として大きな声が響く。その声は離れた場所――――上位冒険者たちの中から出されたものだった


「アイツだ! ジェル・クロウが仕組んだ……今度は、あの女性を襲おうとしているぞ!」


「誰の声だ? 何を言っている?」とジェルの集中力が削がれる。


 その冒険者はジェルにとって見知らぬ男だった。 


 結果として、接近していたアスリンが後方へ――――間合いを大きく取った。


 そして、そのまま集団でる上位冒険者たちに紛れるように消えた。


「――――ッ!(し、しまった。まさか、既に『生と死のナイフ』を使用している」


 上位冒険者たちに紛れ込んだアスリンは、気配を消す古代魔道具を使用。 完全にジェルの認識から消え去った。


「察するのが遅すぎましたね」とアスリンは1人笑う。


(この古代魔道具『生と死のナイフ』の効果は、速攻性だけではありません。 あらかじめ、刺した者を任意のタイミング操り人形にできるのです)


「さぁ、ジェル・クロウさん。この上位冒険者たちの中、誰が敵かもわからない中で私を殺せますか?」


 そんな中、躊躇するジェル。だが、上位冒険者たちに近づかなければならない。


 彼等の中、数人がアスリンの操り人形として襲い掛かって来たら――――


(――――勝ち目はない)


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・・


 最初にジェルに向けて大声を叫んだ男は、仲間たちに取り押さえられていた。


 おそらく、錯乱したのだと思われたのだろう。


「ジェルくん、これはどういうことなの?」と最初に寄ってきたのは女性魔法使い。


 霜将軍の分析をして、大学を紹介してくれた女性だ。


「さっきの女性、あの僕らを襲った――――えっと、ケンタウロスを操り、攻撃をしてきた黒幕なんです」


「確かに、あの遠距離での武器を使ったケンタウロスは奇妙な動きをしていたけど、本当なの? 」


「気をつけてください、気配を消して攻撃をしてきて……そうだ。人を操る武器を持っています。刺されたら、あのケンタウロスのように操られてしまいます」


「――――っ! そんな事が……いえ、聞いた事があるわ」


「それは、一体?」


「その人を操る武器――――こんな感じじゃなかったかしら?」


「え?」とジェルは膠着した。 なぜなら、女性魔法使いが持っていたのは『生と死のナイフ』だったからだ。


   

 

   

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