第111話 VSアスリン・ライヤ④
「やれやれ……もう、次に戦ったら勝てねぇだろうぜ?」
シズクは、その場に座り込んで休憩を始めた。
彼女の目前には、持ち主を失った日本の刀が地面に転がっている。
『妖刀ムラマサ』と『名刀コテツ』
その持ち主はジェルではなく、シオンだった。
シオンの猛攻に防戦に徹するしかなかったシズクだったが――――
勝負を一転させたのは、ジェルから放たれた不死鳥フェニックス。
不死鳥は、ドロシーを飲み込んだ直後に目標をシオンに変更した。
シズクに攻撃をし続けていたシオンは背後から迫る不死鳥に気づくことすらなく、飲み込まれたのだ。
そしてシズクの言葉――――『次に戦った勝てねぇだろうぜ?』
それは、シオンに対しての言葉でもあり、不死鳥フェニックスに対しての言葉だった。
・・・
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「……そうか、シオンも保管できたか」
戻ってきた不死鳥を労うように撫でるジェル。 炎の体であるが、ジェルには熱を感じていないようだった。
撫でられるのが心地良い反面、高い矜持が邪魔をしているのか?
不死鳥は、ジェルの手から逃れるように身を捻った。
その様子に――――
「なんです? 何ですかそれは!」
悲鳴のような声。 黄金のアスリン――――最強の手駒として、ドロシーとシオンの命を奪ってまで操っていた彼女は、理解できないと顔を青く染めていた。
「あり得ない、あり得ないですよ……それは、その姿は、まるで伝説の魔物……」
「そう、不死鳥だよ」と平然と答えるジェル。
「――――ッ!」と無言で驚くしかアスリンはできない。
不死鳥は役目は終わりと言わんばかりにジェルが腰に下げたランタンに戻って行った。
「ドロシーもシオンも元に戻らない。けど、お前の持つ古代魔道具『生と死のナイフ』を奪えば――――」
「そのために、2人の体を不死鳥に……肉体と魂を補完してみせた……そういうことでしょうか?」
「その通りだ」
「……」とアスリンは無言。
(ジェル・クロウだけなら殺す事は可能でしょう。しかし、あの不死鳥を単独で倒す事は――――いや、ここにいる上位冒険者たちを騙して、討伐対象だとご認識させれれば――――)
そんな計画と立てる彼女。 その内面をジェルは読み取っていたかのように――――
「いや、もう不死鳥は戦わないよ。矜持は高いけど、怠惰な奴なんだ」
「それを私が信じると思いますか? どっちにしても、貴方が死んでも不死鳥が貴方を蘇らすだけでしょ?」
「さあ? どうだろうな……隙があれば、コイツは俺の事を殺そうとしてるんじゃないかな?」
「――――(嘘を言っている様子はないですね。ならば、ここでジェル・クロウを殺せれば、逆転の目はありますね)」
「どうやら、信じてくれたみたいだな?」と二本の刀を構えるジェル。
「人は間違うもの、勘違いするものですが……どうやら、貴方は勘違いしてる事が多いようですね」
「?」
「1対1なら、後衛職の死霊使い……そんな私に勝てると勘違いしていますね!」
黄金のアスリンは、片手に杖を――――もう一本の片手に『生と死のナイフ』を構えて前に出た。
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