第109話 VSアスリン・ライヤ②
「私の名前はアスリン・ライヤ。字は黄金……黄金のアスリン。教団第十三課、通称は『
高らかに名乗るアスリン。
「おい、ジェル。コイツ名乗りやがったぞ」とシズク。
「あぁ……教団? スプリガン?」と疑問を持ちながら警戒心を一段階あげるジェル。
今、ここ……このタイミングで名乗る理由。
「私たち教団は、あなたたちのような古代魔道具使いを脅威としています」
それは宣戦布告と同じだ。
「だから、その存在を抹消、封印してきました。今も――――そしてこれからも!」
今から、お前たちを殺す。 だから、名前も所属も明かす。
明かしても殺すのだから問題ない。 逆に言えば、殺せなければ――――
「行きなさいシオン!」
かつて狂戦士だった女侍が動く。
「――――ッ! コイツ、速いぞ。強化されている」
接近戦。それも対剣士戦において、絶対の有利を誇るはずのシズクの古代魔道具。
それも剣を振るえればの話。
今のシオンは、シズクが剣技を発揮する事すら封じる高速の抜刀術。
防戦となれば、体力の削り合い。 純粋たる剣聖――――もはや、剣聖の領域に到達したと言っても過言ではないシオンの猛攻に耐えきるにはシズクであっても不可能に等しい。
「今、行く。虚空斬撃――――え?」とジェルは、支援のために斬撃を飛ばそうとする。しかしできなかった。
高速で接近する白い影。 後衛職だと思われたアスリンが突進してきたからだ。
その攻撃は、杖による殴打。 前衛職たちの技と比べれば拙い技――――そのはずだったが……
「くっ! 速い」とジェルも舌を巻く。
「当り前です。古代魔道具使いから魔道具の使用を封じるのに一番シンプルな方法――――それは、超高速戦闘術で魔道具を使わせる隙を与えない事ですよ」
アスリンの攻撃。 それを受けてのジェルは考察する。
杖は、剣を打ち合う強度があり――――それでいて、鉄の武器よりも遥かに軽いのだ。 体術も変則的。 彼女の言う通り手数と体力で反撃を許さない戦闘方法。加えて――――
「私たちは戦闘開始よりも前に使用できる古代魔道具。支援と自己強化に特化したもの――――戦闘中に使用しなければならない系統の古代魔道具に比べれば――――こら、この通りです」
強打が入る。 アスリンの細腕から発せられたとは思えぬ威力はジェルの体を吹き飛ばす。
壁に衝突するジェル。 その様子から、ここが勝機と感じ取ったのだろう。
「今です! 撃ちなさない――――ドロシー!」
アスリンは、ここで切り札を切った。
「なっ!」とジェル。ここで初めてドロシーが潜伏している事に気づく。
『ファイアボール』
巨大な火球が発射される。
(回避と防御はダメ――――同じ魔法で相殺するしか――――いやッ!)
ジェルは瞬時に考える。 しかし、選択したのは――――
『ファイアボール』
同じ魔法の使用だった。 なぜか? それは――――
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