第144話 乱入者と決着

 乱入者。 何度、このやり取りを繰り返しただろうか?


 だが、その圧力を無視することは難しい。


 その場にいた3人、ジェル、レオ、ドロシー&シオン……


 反応はそれぞれ、三者三様ではある。だが、迫り来る強者に警戒心を強めているのは同じだ。


 そして、乱入者は姿を表した。その者は3人が知る者……


「久しぶりですね。あの時のメンバーが全員揃ってますか?」


 言葉の通り、乱入者はジェルたちが知る人物。しかし――――


「死んだはずだろ? アスリン・ライヤ!」 


 白い魔術師にジェルは叫んだ。


(幻術、幻覚? 俺には、そういう部類が効かないはず……)


 だから幻覚ではない。


 そして、レオやドロシー、シオンの3人と違って間違いなく死んだはずの人物。それがアスリンだったはず。


「お前のところで匿っていたのか、ドロシー?」


「私!? ……あまり、気安く話しかけてほしくないのだけど?」


「何を今さら……そんなことよりお前の組織の人間だっただろ? その様子じゃ、何も知らなそうだな」


「じゃ……」と次に視線を移したのはレオだった。


「言っておくが、俺も何も知らんぞ。一番、事情に精通してるのはお前だろ、ジェル?」


「俺も何も知らないから聞いているのさ。さて――――本物かな?」


「――――」とアスリンは無言。3人のやり取りを面白そうに見ているように見える。


 ゆっくりと近づいてくると――――


「ジェル・クロウ……あなたは察してるでしょう。もちろん、古代魔道具の効果ですよ? あなたが欲しがっている死者を蘇らせる魔道具を――――」


 アスリンは最後まで言えなかった。 ジェルが襲いかかったからだ。 


「もしも――――もしも、本当にそんな物があるなら、お前が持っているなら、俺に寄越せ!」


「この程度の挑発で心を乱す――――数年の成長は見込めず、やはり拙い」


 もちろん、ジェルに殺意はない。 捕える事が最優先。 


『巨人の魔手』


 捕縛専用の古代魔道具がジェルの手から投げられた。


 しかし、アスリンは「今の私に捕縛は通用しませんよ?」と余裕を見せる。


 事実、鉄縄の魔道具はアスリンの体をすり抜けた。


「――――実体がいない? 幻覚系の魔法か?」


「いいえ、現実です」


 今度は自分が攻撃の番と、アスリンは杖を振るう。


「やはり攻撃は拙い」と剣で弾いてカウンターを狙うジェル。


 しかし――――彼女の杖はジェルの剣をすり抜け、ジェルの頭部に強打を叩き込んだ。


 予想外の痛みに「くっ!」とダメージを受ける。 反撃に剣を走らせるも、既にそこにはアスリンの姿はない。


「――――確かに、現実。実体があるが攻撃がすり抜ける。これがお前の蘇った古代魔道具の効果の1つか? それとも他にも魔道具が?」 


「教えるわけないでしょ? さて、今日は復活の挨拶に来ただけです。そろそろ、帰りたい所ですが……」


「そう簡単に――――ぐっ!」とジェルは足止めを狙うも、アスリンの杖を腹部に受けた。逆に動きと言葉を止められる。


「私の秘密が欲しければ、私を追えばいいでしょう。さて、次は――――ドロシー」


「はい」とドロシー。


 彼女はアスリンが死んだと思っていた。そして組織に入り、彼女の跡継ぎとして――――組織を乗っ取った。 その後ろめたさがあった。


「好きにしなさい」


「はぁ?」


「もう私は組織に執着はありません。教団第十三課スプリガンは好きにしなさい。まぁ、先輩として、指摘することがあるかもしれませんが」


「――――」とドロシーは言葉を飲み込んだ。


 それは、気に食わない事をすれば攻撃を行う宣戦布告と同じ。


 彼女が何も言葉を返すことはできなかった。


「さて――――レオについては、特に言うことは――――まぁ、ジェルを早く殺しなさい」


 それだけ言って、彼女が姿を消した。


「……」と残された3人は無言。 やがて――――


「どうする? 続けるか?」と口を開いたのはレオ・ライオンハート。


「俺は興が削がれた。やるんなら、2人でやれ」


「……私はアスリンを追うわ。やるべき事ができた」とドロシー。


「俺も――――奴を追う。そのために、俺に追わせるために姿を見せたんだろ」とジェル。


 3人は視線を逸らし、別々に方向に歩き始めた。


  

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『購入無双』 復讐を誓う底辺冒険者は、やがてこの世界の邪悪なる王になる チョーカー @0213oh

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