第54話 不死鳥フェニックス攻略戦②

 短時間の作戦会議。 


 話し合いを終えたジェルとシズクは、穴から顔を出す。


「おいおい」とシズク。


「あの鳥……周辺の森を燃やし尽くすつもりか?」 


「……」と少しだけ黙って、ジェルは魔力の分析を始めた。 


「森を燃やして、大量の魔素を取り込んでいる。ついでに、自分の優位な土地に作り替えてる」


 魔法を執行するには、体内で作られる魔力を使用。あるいは、空気に漂う魔素を取り込む必要がある。


 加えて、相手は不死鳥。 火から生まれ、火から蘇る。


 周囲が火に囲まれていれば、魔力はもちろん……魔物としての存在が強化されるのだ。


「元から、大量の魔力を作り出してるのに、さらに魔素まで取り込んで……どれだけ、強烈な魔法を使うつもりなんだ?」


「あの方向……町だ。俺たちを誘き出すために、町を――――」


「破壊するつもりか! あのクソ鳥めッ!」


 ジェルは少し驚く。いつの間にか、シズクには町への愛着が芽生えていたからだ。  


「あん? なんでこんな時に笑っているんだ、ジェル?」


「いや、これから不死鳥を討伐――――ワイバーン討伐から、難易度が跳ね上がるにもほどがあって考えてしまってね」


「はん、そりゃそうだ。でもな――――」


「?」


「それが、冒険者の醍醐味ってやつじゃねぇの?」


 ジェルは頷く。それと同時に――――


(シズクは、冒険者になる目的を金を手に入れて、強くなる事って言っていたけど……それ以外にも理由あるじゃん)


 そんな事を考えていた。



・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・・



 不死鳥フェニックスは、森を燃やす。


 自身を強化するためなのはもちろん、ジェルとシズクの2人を燻り出すため……文字通りに。


(簡単に出てこぬか? それでは、貴様らの人間の群れを破壊してくれようか? 貴様らが我にしたように……)


 だが、空中で旋回する不死鳥には見えない位置。 ジェルとシズクの2人は――――


 攻撃を開始していた。


 シズクは「いくぞ!」と手にしている武器を振り回す。


 その武器は鎖。先端には攻撃のため重りがついている。


 要するに――――分銅鎖。


「地上に落としてやるぜ。伝説の不死鳥さまをな!」


 不死鳥は上空とも言える場所を飛んでいる。 地上に立つシズクからの距離は、大きく離れているのだが――――


 シズクの剛腕。 その手から離れた鎖は一直線に不死鳥へ伸びていく。


 しかし、不死鳥は自身に向かってくる攻撃を歯牙にもかけない。


(愚かな。捕縛用の武器……鉄を使用した物は我には届かぬ。近づくだけで溶かし尽くしてくれよう)


「――――なんて不死鳥さまは考えてやがるだろうな。けれども、コイツは特別性だぜ!」


 シズクの言う通りだった。 


 鉄製の武器は近づくだけで溶け落ちる。そんな超高温に耐えて鎖は不死鳥の足に巻き付く。


「合わせろ、ジェル!」


「応ッ! 『ホワイトエッジ』」


 高熱でも耐え得る特別性の分銅鎖。それを支援するように、ジェルは氷属性の魔法を放った。


   

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