第55話 不死鳥フェニックス攻略戦③
シズクの分銅鎖は特別性。
鎖の先端の重りには、魔石が埋め込まれている。
氷属性の魔法と同等の効果がある魔石。
敵が鉄製の鎧を着こんでいれば、一撃で凍傷から壊死まであり得る凶悪な武器。
そんな武器でありながらも、肉が焦げる音と嫌な臭い。
「シズクっ! 手を放――――」
「手を放せなんて言うなよ? この程度、回復魔法で後からでもなんとかなる。今、このチャンスを逃がすな――――私を信じて、魔法を打ち続けろ!」
「――――っ!」とジェルは、シズクの気迫に圧倒されかけるも――――
「わかった。絶対に離すなよ? すぐに終わらせるからな!」
『ホワイトエッジ』
氷属性の魔法。
白い刃が不死鳥に放出され、一発一発で炎の体を大きく揺さぶっていく。
その様子にシズクは、
(ジェルの魔法、威力が上がっている? 感情で威力が左右されているようにも見えるが……どういう理屈だ?)
そんな疑問も湧き出る。
しかし、ダメージを受けて足枷の鎖から逃れるように激しく暴れ始めたため、すぐに疑問も霧散される。
「このッ――――暴れるのもいい加減にしやがれ!」
暴れて上下する不死鳥の動き。
シズクは、そのタイミングに合わせる。
それは技だ。 抵抗しようにも力が入らない事に不死鳥は気づいたが――――
もう手遅れだ。
上空でバランスを大きく崩し、一気に高度を下げていく。
加えてシズクの剛腕。 墜落は免れぬ。
問題は――――
(馬鹿なッ! 今までの攻防は、このためなのか!? まさか、我は誘導されていた?)
問題は誘導されていた墜落場所。 もちろん、ジェルとシズクの計画通り――――
森に囲まれた池に落とされた。
勢いよく水面下に沈んでいった不死鳥。激しい水しぶきの後には、沸騰と蒸発する音がボコボコと聞こえていく。
そこにジェルは――――
「ダメ押しの氷属性魔法『ホワイトエッジ』」
高熱と化した池でも急激に凍らしていくジェルの魔法。
水量が減少した池。その水面下からは不死鳥が浮上して、そのまま飛び立とうとする影が見える。
「そうはさせねよ? 『
シズクの魔法。 地属性の魔法により、地面は揺れ動き始めた。
「そのまま池に土で蓋をしてやるぜ」
有言実行。 地属性の魔法によって池が土で囲まれた。
飛び上がろうとしていた不死鳥は、土に塞がれる。
目視はできないが土の壁を破壊しようとする打撃が重低音で地面を揺らす。
「コイツ、ここまでやっても闘争本能に衰えが見えない」
そのシズクの言葉通り――――むしろ、不死鳥の抗う力は増している感すらあった。
「このヤバさ……流石に気に入るぜ! 私の魔法をぶっ壊して――――まだ攻撃が来るぞ!」
土の壁。 それも魔法で強化され、鉄の壁に近しい強度があったはず……
しかし、不死鳥は、それすらも叩き割った。
再び姿を見せる不死鳥。
弱点である水に叩き込まれ、閉じ込められた姿――――鮮やかな炎の赤々しさは、勢いと美しさを失っていた。
燃え尽きた黒色。衰えた炎は頼りなく揺れて――――それでも―――――
それでも、神々しさは増している。
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