第7話 ジェルに芽生えた新たなる夢

「うそだろ? 失った腕が元に戻っている。それに傷はもちろん、疲労まで……いや、待て。さすがに折れた剣まで元通りなのはおかしいだろ」


 試すように剣を振るう。 


 違和感もない。文字通りの完全回復。


「信じられない。専門の回復術士だって、ここまで回復魔法は使えない。古代魔道具だからって、ここまで凄い回復専門の魔道具が存在するなんて……」


『こちらは回復専門ではございません。画面を確認ください』


「え?」とジェルは驚く。


 奇跡に等しい回復能力を有しているコレが、回復専門の魔道具じゃない?


「あり得るのか? そんな事が」


 しかし、当の古代魔道具は


『画面を確認してください』と繰り返すだけだった。


「……どれどれ?」


『おすすめはこちらになります』


「魔力増加? それに低級魔法や中級魔法が購入できる?」


 ジェルは意味が分からなかった。


 魔法が使用できるのは生まれながら魔力を有する者だけだ。それが常識のはず。


 生まれながら魔力を有する者が『学園』や『大学』で知識を学び、長い年月をかけて魔法を使いこなせるようになる。


「それが金で買えるって……いや、でも……」


 とても、信じられない。だが、先ほどの超回復と言って良い魔法を古代魔道具は見せたのだ。


「質問だ。元々、魔力を持ってない人間が魔力増加を選択した場合どうなる?」  


 返ってきた答えはシンプルだった。


『魔力を有する事ができます』


「――――っ! そ、それじゃ、魔力増加を購入して、画面に表示されている魔法を購入したら、誰でも魔法が使えるようになるのか?」


『はい、その通りです』


「とんでもない品物だ。これを公表したら世界が変わるぞ――――いや」


 ジェルは首を振るう。


(公表しなければ? これを独り占めできたら、俺は誰よりも、どこまでも強くなれるのではないか?)


 そんな欲望が現れた。 


(まさか自分に、こんなにも醜い欲望があったなんて……)


 しかし――――


『それはできません。こちらの稼働は期間限定となっています』


「え? 期間限定だって?」


『はい、引き続きご利用されたい場合は、本機械から地図を購入していただき、他の自動販売機からご利用ください』


「地図? これか」とジェルは画面から地図を選択した。


 金額は1G程度だったので、なんら抵抗もなく購入したのだ。


「世界中に、これと同様の古代魔道具が存在しているのか……誰にも知られずに」


 だが、自分だけは違う。


 この地図があれば、古代魔道具が出現して使用可能な時期がわかるのだ。 


 うまくいけば……


「俺は、最強の冒険者になれるかもしれない」


 ジェルに夢が芽生えた。 今まで想像にすらしてこなかった夢。


 最強の冒険者。それを目指す事を決めたのだ。

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