第93話ジェルたちの『北国迷宮』攻略④

 封印されていた怪物。


 『特別怪物』とは違う。上手く説明する言葉が見つからないが……何か、根本的に違う古代の魔物。


 まだ動かない。 本当に生きているのか?


 だが、それでも感じられるものがある。それは圧力だ。


 ただ立っているだけ――――それだけでも尋常ではない圧力が感じられる。


「これは……完全に封印は解かれてない」


「助かったのか?」と言葉を続けるジェル。 思考は、この封印を解こうとした襲撃者に向かう。


(明らかったに狙いは部屋の奥……隠し部屋の存在をしていて公開しなかった人物? ……レオではないのか。だとしたら、俺やシズクに悪意を向ける人物は――――いるのか?)


 ジェルには、心当たりがなかった。そんなジェルにシズクは――――


「おい、それでどうする? 今は、コイツが動き出す前に再封印するチャンスだろ?」


「あぁ、そうだ。氷魔法で封印を強化させて――――それから、冒険者ギルドに報告だ」


 ジェルとシズクは同時に手を向けて魔法を唱えた。


『ホワイトエッジ』


 放たれた氷系の魔法。 氷柱に封印された怪物に放たれる。


 しかし、その直後だ。 怪物から、勢いよく吹き出された白い煙が2人の視界を覆った。


「なんだこれは! これは――――熱気? 水蒸気だと!」


 つまり、急激に氷が溶かされているという事実。 


「コイツはヤバイぜ! 圧力が増してきてやがる。魔法を放ち続ければいいのか、ジェル!?」


「――――いや、もう手遅れみたいだ」



 彼の言う通りだ。 白で視界が殺された中、黄色い光が見える。


 怪物の目が黄色く光っている。 それに奇妙な音が続く。


 まるで、機械系魔物が鳴らすの起動音。 


(あぁ、カメカメしいと言うよりも、メカメカしい存在だったのか)


 そんな馬鹿馬鹿しい感想を抱くほど、ジェルは正常な判断力を奪われていた。


 そんな怪物―――― フロスト・ジェネラルは動き始めた。


「来るぞ、ジェル! 備えよ!」


 シズクの声に反射的に前に出るジェル。 両手には古代魔道具『妖刀 ムラサメ』と『名刀コテツ』


 ジェルとシズクの2人共、前衛として適正は強い。


 しかし、1人――――あるいは1匹の強者相手に前衛2人が同時に攻め込むのは有効とは言えない。


 だから、事前にジェルが前衛。


シズクは、準前衛から中衛と後衛と全領域オールレンジの戦闘ができるように2人で訓練してきた。


 正常さが失われている事を自覚しているジェルだったが、その厳しい訓練が彼を戦場で動かした。


「――――ッ! この」とジェルは斬りつける。


 自身よりも一回り大きい怪物――――霜の将軍フロスト・ジェネラル


 両手の長い長い爪は黒い剣に見える。 あるいは、本当に爪ではなく戦闘用の金属なのかもしれない。


 ジェルと将軍。 剣と剣がぶつかり合う。


 『名刀コテツ』の武器破壊は発動しない。 接触した瞬間に読み取った金属情報は――――『 errorエラー

  

 その情報は『名刀コテツ』の持ち主であるジェルにも伝わる(どういう理屈で情報が伝達させているのかは不明だが)。


 ジェルは―――――


(つまり将軍の武器は未知の物質か――――本当に厄介な、怪物だな!)


 混乱していた頭が正常に回復した。  戦うしかない……そう覚悟を決めたからだ。


 どうするべきか? ジェルは作戦を組み立て始める。 


 体格の差は、力の差である。 打ち合うのは不利。  


「――――だったら!」

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