第30話 勧誘合戦

 冒険者ギルド


「きたぞ、奴だ」


 ジェルたちが入るとどうなる? 同時に冒険者たちの注目が集まる。


「なんか注目浴びてない?」とシズクは面白げに言う。


「ん~ 心当たりは......あるか」


「おっ! 何だ、何だ。聞かせろ」


「今の今までB級冒険者ってのはレオたちが独占してる状態だったんだ」


「ほう、それでそれで」


「今はレオたちがいない。残ってるB級冒険者......俺だけだ」


「ん? 今、何て言った?」


「この町のB級冒険者......俺だけ」


「お前っ!自分で自分の事を底辺とか言ってたくせにッ!?」


「い、いや、レオたちの仲間として一緒に依頼を達成してたから、俺の階級も自動的に上がっていったんだよ」


 階級ランク 


 冒険者ギルドが配布する身分証明書に記載される冒険者の階級。


 その階級に応じて、請け負える依頼の難易度が高くなり、依頼の成功報酬も高くなる。


 B級冒険者になれば、最高難易度の依頼と報酬となる。


「お前......凄い奴だったんだなぁ」


「凄いと言うか......ちょっとまずい事になるかもしれないなぁ」


「?」


「俺を仲間に入れて、現状よりも高い階級の依頼を受けたい奴がたくさんいるって事さ」


「つまり、勧誘合戦が始まるって事なのか?」


「うん、そうなるね」


「......ヤバいかもしれないなぁ」とシズクは周囲を見渡した。


 よく見れば冒険者たちは牽制し合っているのがわかる。


 誰かが、勧誘の声をかけ始めたら一斉に周囲に冒険者たちが......


「なぁ、ジェルさん。レオたちから離れてフリーになったなら......」 


「あっ! てめぇ抜け駆けするんじゃねぇ!」


「おい、俺たちもいくぞ! いざって時は拐ってでも」


 ジェルとシズクを囲うように動き始める。


「おい、逃げるぞシズク!」


「私としたら、すぐに冒険者登録を......」


「言ってる場合か!」


 ジェルとシズクは同時に飛んだ。 2人は一気に天井付近まで飛び上がると吊るしてある照明を掴む。


 そのまま反動を利用して、冒険者たちの頭の上を飛ぶ。


 冒険者ギルドから脱出を可能とした。


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


「騒動が収まるまで様子見だなぁ」


「うっ.....うっ......私の冒険者登録が......」


「どうしようかなぁ?」


「とりあえず、冒険者の登録は明日、私一人でやるよ。でもなぁ......」


「うん、どうにかする方法を考えておくよ」


 ジェルはそう言ったが、冴えた方法を思い付く気がしなかった。


 そして......

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