第65話 幽霊屋敷を調査しよう③
聖戦士の力。 それは、神官にも並ぶ破邪の力。
シズクが放った聖なる光は、2階を浄化していった。
「どんなもんだ、ジェル? これで厄介な敵も、もう出てこないはずだぜ?」
「たった一撃で館に憑りついていた怨念を祓ったのか……いや、そんな力があるなら、館に入ったと同時に使えよ」
「あはっはっ……そう言うなよ。いきなり使うと本命が怖がって逃げちまうぜ。 わかるだろ? 廊下の一番奥の部屋だ」
「あぁ……」とジェルは頷いた。
浄化され、館そのものが聖なる力に包まれている。
それにも関わらず、シズクが指摘した部屋。 そこには、重々しい空気――――激しい圧力が伝わってくる。
(この感覚は……強いな。さっきの怨霊よりも脅威を感じている。それでも――――行く!)
ジェルは、覚悟を決めドアを開いた。すると――――そこには少女が椅子に座っていた。
「君は、一体?」と話しかけるジェル。しかし、それをシズクが制した。
彼女は小声で、
「不用意に近づくな。普通の人間に見えるほど、力が強いだけだ。幽霊の擬態だ」
「――――っ!?」と一瞬、緩んだ警戒心を入れ直すジェル。
すぐさま戦闘に移行できるように、少女に近づく――――いや、正確には少女の姿をした幽霊に……だ。
すると彼女は――――
「お待ちしていました冒険者さま。 私たちをお助けください」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
彼女の説明。
少女の幽霊の正体は、かつて屋敷に住んでいた貴族の娘。
彼女の生前、ここは普通の屋敷だったそうだ。
しかし、徐々に奇妙な出来事が増え――――まずは飼っていた犬から始まり、次々に起こる使用人たちの怪死。
彼女の父親や母親を含めて、そのような事件が起きる心当たりはなかった。
もっとも、貴族の家系だ。
貴族とは最初から貴族ではない。戦争に参加して、立てた武勲から特権階級を得て来た戦士の末裔だ。
恨まれる筋合いはない――――とは、とても言い切れないだろう。
――――とにかく、彼女の家族が気づいた時には手遅れだったらしい。
屋敷に、この世の者ではない怪物が住み着いていた。
彼女も、彼女の家族たちも、屋敷に関わる全ての人間は、その怪物に殺された。
そして、彼女の死後、彼女は天に戻る事も許されず、屋敷に閉じ困られている。
「――――だから、冒険者さま。今もこの屋敷に住む怪物を倒して、呪われた私たちをお助けください」
彼女は泣きながら、そう訴えた。
「どう思う?」とシズクの問いにジェルは――――
「完全に嘘。すぐに浄化してくれ」
「え?」とジェルの言葉に驚く少女の幽霊。
何か弁明しようとする彼女に対してシズクは――――
『
この世の怨みを表現するような雄たけびと共に少女の幽霊は、浄化の炎に包まれ――――消滅した。
「それで、コイツはなんだったんだ?」と幽霊を瞬殺したシズクはジェルに聞くも――――
「いや、知らないよ」とジェルは肩を竦める。 それから、こう続ける。
「流石に屋敷に来る前に、過去の出来事は調べているよ。彼女の話は、完全にデタラメだった。おそらく……この屋敷に仕掛けられた罠そのもの。俺はそう思うけどね」
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