第140話 ジェル対ドロシーの決着?
ドロシーは自身の杖に魔力を集中させていく。
(広範囲、高威力の魔法攻撃? ならば、発動前に止めるのが定石だが――――いやな予感がする)
ドロシーを止めるために接近戦に持ち込むことを止める。攻撃前に観察に集中する。
(やはり、攻撃魔法ではない。むしろ、あの杖が膨大な魔力を吸収している)
ジェルの考察は正しかった。
魔力をつぎ込まれた杖に変化が起きる。
「――――仕込み刀。それも魔剣の部類か?」
斬撃を魔法で付加する魔法をドロシーが使用した時に魔剣に例えたが……
(あれは違う。 あれは同格――――俺が持つ魔王の魔剣と同じ危うさがある!)
ドロシーの杖が、完全に剣に変わる。 そして、ジェルに狙いを定めて――――振り抜いた。
互角―――― ドロシーの魔剣から放たれた巨大な魔力の斬撃。
しかし、ジェルは『魔王の魔剣』を持って、ドロシーの魔剣を受け止めた。
「――――受け止めたなら隙ができますよね?」
その声――――ドロシーの声はジェルの背後から聞こえて来た。
(移動系の魔法――――いや、魔道具を使用したのか?)
彼女の言う通り、今も魔剣の衝撃を抑え込むジェルは、背中が無防備になっていた。
しかし、ジェルは――――「素人だな」とだけ呟いた。
ジェルは自身の背後に対して、既に魔法を仕込んでいた。その魔法は――――
『シャイニング』
周囲を照らす魔法。 しかし、使い方によっては強烈な閃光は、目潰しとして使われる。
背後に向けて発動させたジェルに目潰しの効果はない。
しかし、直撃を受けたドロシーは目を抑えるだけでは済まず、地面を転がりまわった。
「背後を取れば、安易に勝機だと思い込む。普通なら罠を警戒するところだ」
ジェルは剣を走らせる。 先ほどの攻撃で、ドロシーが無傷だった理由を探るためだ。
(血は出ない。 それどころか、体を斬った手ごたえがない。まるで空洞の体……本体は別の場所にあるのか?)
「なら……」とジェルはドロシーを拘束することを決めた。
(目潰しは有効……それは五感が本体と繋がっている証。戦闘不能にするなら、動きを封じることが有効)
背中に隠していた武器を取り出す。手にしたのは新たな魔道具だ。
名前は『巨人の魔手』 見た目は、ただの縄だが、捕縛に特化した魔道具である。
持ち主の意思を汲み取り、敵対象を自動で縛り上げる。
「さて、トムとレオの戦いは?」
捕縛したドロシーから目を離して、2人の戦いに注目する。
勇者であるレオ・ライオンハートに対して、トムは善戦していた。
その巨大で頑丈な肉体。勇者の聖剣を浴び、傷だらけだが、戦意が衰えている様子はない。
対して、攻め続けているはずのレオの方に焦りが見え隠れしていた。
トムの武器である巨大過ぎるハンマーは、一撃でも当たればレオを戦闘不能にまで追い込む威力がある。
どれだけ、優勢に戦いを続けれても、一撃……
たった一撃の攻撃で、レオが負けまで追い込まれることは十分にあり得る。
「さて――――もう勝敗は動かない。俺も助太刀に行くか」
そう言うとジェルは魔剣を煌めかして、レオたちの方向に向かおうとする。
しかし――――
「そうはさせない」とドロシーの声。 奇妙な事に、その声はドロシーの体からしたものではなかった。
彼女の肉体から離れた位置。 彼女の手から離れた魔剣からドロシーの声が聞こえて来た。
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