第95話 ジェルたちの『北国迷宮』攻略⑥

 さて――――本来は斥候であるジェル。 剣術は、基礎的な技量しか持ち合わせていない。


 古代魔道具である『妖刀ムラマサ』と『名刀コテツ』の力により、剣聖の技を使用できるのだ。


 しかし、それは――――


『虚空斬撃翔』


『天魔六乱舞』


『土龍激突』


 これら3つが使用できるだけでなかったのか?


 なぜ、斥候という戦闘職ではないジェルが『バインド』や『合気』などの高いレベルの剣術が使用できるようになっているのか?


 それは2本の刀に仕掛けがある。


 持ち主が刀の柄を握った時、その静電気に反応。 心体から状況を読み取る。


 それから、過去に学習した剣聖や達人の技を、持ち主の脳や目にフィードバック。 


 微弱な電波により、脳と目を経由して全身に渡り、剣技の再現を可能としている。


 無論、あらゆる環境の戦闘に対応するために数多くのセフティが仕掛けられており、前記の機能が発揮できない場合でも技を使用する事が可能である。



・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


「これは凄いなぁ……」と冒険者は、ため息交じりに言う。


 それは、称賛と驚愕が混じったため息だった。 


 ジェルたちの戦闘音は、ダンジョンに響いていたらしい。


 徐々に、時間経過に合わせて人が集まってきた。


 『北国迷宮』という高難易度ダンジョンに挑戦する者たち。


 全員がジェルたちよりも格上の冒険者たち。


「まさか、隠し部屋をB級冒険者が発見するとは……」


「迷宮を故意に破壊する事は法によって禁止れてる。気づいても手を出せない奴もいただろう」


「いや、それにしても……なんなんだ? こいつは?」


 上位冒険者も討伐された霜の将軍フロスト・ジェラルに驚きを隠さない。


「魔力を使用せずに動き続ける古代ゴーレムの亜種。覆ってる金属は剣や鎧に使われる素材よりも弱そうだが……」


「装甲版に下に覆われてる黒い物体はなんだ。触れて力を入れると沈んでいく。これで衝撃を吸収しているのか?」


 そんな彼等に対して、討伐者であるジェルとシズクは――――


「分析は終わったわよ」と別パーティの魔法使いに紙を渡された。


 討伐した存在が何か? 


霜の将軍フロスト・ジェネラル


 封印された古代の魔物としか、わかっていない。


 そこで集まってきた上位冒険者の魔法使いに分析を依頼したのだ。


 依頼したのだが――――


「……書いてある言葉は読めるが意味がわからない」とジェル。


「見てるだけで頭がクラクラしてくるぜ」とシズクは「あとは任せた」と言い残して離れて行った。


「私だけでできる分析は、これが限界よ。この紙を『大学アカデミ』みたいな研究機関に渡して解析を依頼しなさい」


「もっとも……」と彼女は付け加える。


「これは、たぶん未発見の魔物。『大学アカデミ』の方から金を持って解析させてくださいってくるでしょうね」


「たぶん、相当な金額になるわよ」とウィンクをして、魔法使いの彼女は仲間たちの元に戻って行った。


 

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