第23話 始まる戦い

 復讐に戻って来たのか?


 レオの問いに空気が張りつめる。しかし――――


「いや、そんなつもりはない。シオンの場合は彼女から襲って来たから仕方なく……」


「ほう? 仕方なくで気を失った彼女の縛り、剣を叩き折ったのか? それになんだったかな? 復讐は続くって残してたよな」


「……それは俺じゃない。そう言って信じてくれるかい?」


「ソイツは無理な話だな」


「だよなぁ。止めなかった俺も悪いが――――俺だってお前たちを恨む気持ちくらいある」


「そりゃわかってるよ。アレは流石に悪かった。謝罪しよう……でもな」


「あぁ、わかってる。互いに謝罪しても鎮まらない事くらいは」


 ジェルとレオ。両者は同時に立ち上がった。


 他の冒険者たちは「おいおい、ここで始めるつもりかよ!?」と離れていく。


「表に出よう」とジェル。


「あぁ、やるなら人のいない場所。裏の訓練場に行こう」とレオも応じる。


 2人は移動する。


 残されたシズクとドロシーは反応が遅れるも、慌てて追いかけて行った。  


「レオ、俺が戻ってきたのは冒険者として再開するつもりだったからだ」


「そうか。それじゃ互いにやり辛くなっちまうな。俺とお前の間に因縁が生まれちまった」


「あぁ、俺にも復讐心ってのある事に驚いてる。だから提案がある」


「なんだ? 言ってみろ」


「負けた方が、この町から出ていく。それでどうだ?」


「――――奇遇だな。俺も同じことを考えていた」


「そうか、もしも――――」


「わかってるさ。もしも――――もう少しだけ、話し合いでもしてたら俺たち、こうならなかった。けど、そうはならなかったんだ」



――――ギルド裏 訓練場―――― 



 観客はいない。


 冒険者は、自分の武器や戦法、戦術を隠したがる。


 誰かが訓練場を借り切ったなら、見学しないのが決まりだ。


 しかし、決闘となれば別だ。 隠れてでも見届けてやろうって連中が出てくる。


「外からは、誰も見えないように結界を張ったわ」とドロシー


「すまないな」とレオは礼を言う。


「でも、良いの? 誰も見えない状態で戦うって事は――――」


「あぁ、いいのさ。最悪、どっちが死ぬまで戦う事になっても――――俺には覚悟がなかった。けど、今は違う。


俺は覚悟ができた。ジェルを殺す覚悟がな」


 そのレオの様子は、獰猛な魔物。


 これから始まる戦いに猛り狂い、体を抑える事すら難しい。


「――――私も」


「あん?」


「私もやるわ! レオ、シオン、それに私で仲間でしょ!」


「――――いいぜ。けど、ここからは殺し合いだぞ?」


 レオの脅かすような口調。それをドロシーは真っすぐに受けて――――


「構わないわ」 


 彼女はハッキリと答えた。

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