第22話 再会 ジェルとレオ

(な、なんて圧力!? 声をかけるどころか、近づくことも躊躇うような……)


 レオが発する異常なプレッシャー。


 仲間であるはずのドロシーですら、簡単には────


「ん? あぁドロシーか。どうした、そんな所で突っ立ったまで?」


「え?(怒ってないの? それどころか……なんて言うか……普通?)」

 

 ドロシーは困惑する。


 レオの振る舞いは普段通りだった。 異なるのは、久々に酒を入れていないくらい。


 それでいて、近寄り難い圧力を有しているのだ。


 そんなドロシーの困惑に気づかないのか? レオは話し出す、極めて普通に。


「聞いたよ。シオンが誰かと立ち会いで負けたってな。怪我とかしてないのか?」


「そ、そうね。怪我らしい怪我はないみたいよ。いまは────牢に入れられているわ」


「牢? 病院じゃなく牢だって、なぜシオンが?」


「彼女、暴れてるのよ。誰彼構わす、殴ったり噛みつこうとしたり……」


「それは……」とレオは言い淀んだ。


 およそ、彼が知るシオンとは遠く離れた行動だったのだ。


「まるで狂戦士みたいになってて、剣があったら振り回していたかもしれない」


「……だれだ?」


「え?」


「彼女は、シオンは誰が犯人だと言っていた?」


「それは……とても信じられないのだけど

……」

 

「構わない。今なら、シオンがどんな荒唐無稽な話をしても信じるさ。言えよ」


「……ジェルよ。彼女はジェル・クロウに負けたって言ってるわ」


 ドロシーにしてみたら、とても信じられない言葉。しかし、それを聞いたレオはすんなりと────


「そうか……だろうな」


「ずいぶんと簡単に信じるのね。本当に彼が1対1の立ち合いでシオンに勝てると思うの?」


「さぁ? それは本人に聞いた方が早いな。 ……いや、もしかして気づいてなかったのか?」


 レオは後ろのテーブルを指さす。そこにはジェルが食事をしていた


「ジェル! ジェル・クロウ!? よくも顔を出せたわね!」


 思わず、杖を構えるドロシー。だが、レオは彼女を止める。


「止めとけ。彼を見捨てたのは俺たちの方だ。生きて冒険者ギルドに戻るのを攻めるのは間違いだろ」


「でも、でも、コイツがシオンをやったのよ!」


 止めるレオを無視して、無理やりにでも魔法を放とうとするドロシー。


 だが、ジェルを庇うように何者かが間に入る。 それは、シズクだった。


「おいおい、喧嘩なら買うぜ? けど、表に出てやろうか?」


「止めなよ、シズク」と止めるジェル。


「ドロシー、今は引け」とレオもドロシーを止めた。


 それからレオはジェルの方を向く。


「ジェル、無事だったか?」 


「あぁ……いや、無事ではなかったかも。腕1本は持っていかれたよ」


「? 何を言っているのかわからないが……復讐に戻ってきたのか?」


 そのレオの言葉に、周辺だけではなくギルド内の誰もが黙り込んだ。



 

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