第97話 黄金のアスリンの正体
「右……もう少し照準を上に……そうだ。そこで――――撃て!」
黄金のアスリンは、通信ができる古代魔道具を使って指令を飛ばす。
そして、その指令を受ける者は――――
ケンタウロスの姫――――セツナだった。
あの時、死んだはずの彼女がなぜ?
それはレオたちを激しく動揺させる。それは当然の事だろう……
確かに、彼等は、彼女の死を見届けたのだから…… そんな彼等のアスリンは平然と指示を出す。
「どうした? このまま彼女の狙撃を使って、ジェルくんたちを孤立させるように誘導する。君たちの出番はそこだよ? 早く準備をしてくれるとありがたいのだけど?」
「……」と無言で返すレオだったが、「あぁ……わかった。待機してくる」とドロシーとシオンを連れて移動を始めた。
「やれやれ、彼等は有能だけど、無能だから困るね――――そうだ! 来なさい、セツナ」
アスリンは名案が浮かんだかのように、彼女を――――セツナを呼び寄せる。
セツナはダンジョンの高所――――崖のような場所を四足獣の下半身を利用して、素早く駆けてくる。
アスリンに近づいた事でハッキリとわかるセツナの表情。それには感情をいうものが抜け落ちているかのように無表情だった。
無表情でアスリンの指示に従っている。 彼女の肉体に魂は残っていない。
生きているだけの死体――――ただ、肉体だけがこの世に留まっているだけの存在。それが今のセツナだった。
「古代魔道具の力を限界まで使用して、上位冒険者たちを蹴散らして――――目的はかく乱よ。そのために強化の支援をしてあげる」
彼女は、手にナイフを持った。 セツナの首を切り裂いた、あのナイフだ。
そのナイフから黒い瘴気が立ち上がっている。
「古代魔道具『生死のナイフ』 これで、私の魔力を流して――――これで十分でしょ? あと、隙があれば――――ね? わかるでしょ?」
セツナは頷き、冒険者たちに向かって駆け出した。それを見送った彼女――――黄金のアスリンは
「さて、私の切り札をレオくんに少しでも見せたのはやりすぎだったかしらね? 彼等にも、セツナちゃん同様に私の手駒にしたかったのだけど……警戒されたかしら?」
それから彼女は笑う。 とても邪悪な笑みだった。
「素直に寝込みを襲ったり、毒を飲ませて『生死のナイフ』を使えばいいって同僚たちにも、よく呆れられたけど仕方ないわよね?」
「私は殺す事になっても、仲間たちの事を知りたがる性分なのだから……私、黄金のアスリンの性分は、生まれながらの純粋なる
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