第37話 VSラカン 決着
シズクは冷や汗を流した。
ラカンの構え。その危険性をすぐに察したからだ。
(コイツ、体当たりを狙っている。あの巨体で……それも体に、なんか未知の力をを宿してる!?)
ラカンが身に纏ってるのは『聖気功』
今までのラカンは、肉体を鉄のように固くする使っていた。
しかし、今は違う。 過剰なほどに分泌させ、さらに攻撃に転じる。
(どういう理屈だ? 突進力に力を回しているようだがいや……何を私は冷静に分析している? 逃げ――――いや、ここで向かい打てなくて――――)
「ここで向かい打たなくて何が冒険者か! こいよ、ラカン!」
「いくぞシズクっ! 今だ」
ラカンは突進する。
巨大な肉体は『聖気功』により、さらに巨大に――――
素早い肉体は『聖気功』により、さらに素早く――――
ラカンという1つの物体が生命活動よりも攻撃を優先して動き始めた。
『聖気功』はラカンの体を黄金の色に包む。
それに対してシズクは――――
『幻体術』
前方に、自分の分身を作り出すとラカンに向けて走り出す。
少し遅れて、本体である自分も駆け出す。
分身をラカンにぶつけて、減速させるつもりだろうか?
――――否。
分身と本体は、ある技を発動させる。その技は――――
『縮地』
前戦のアレクが使用していた技だ。
1戦で真似ができるほど技を理解したのか? それとも、元々身に付けていたのか?
2人のシズクは超加速。
黄金に輝くラカンに対して衝突を――――
「この程度で俺は止められぬ!」
ラカンは剛腕を持って、シズクの分身を薙ぎ払う。
その様子に僅か減速も望めず、本体であるシズクへ一撃を――――
だが、そこで気づくべきだった。
なぜ、同時には走り込んでいたはずなのに分身の方が先にラカンに衝突したのか?
先行して走っていた分身は露払いだったのだ。
高速移動の天敵は空気抵抗。
シズクは、分身を先に走らす事で、前方にある空気を切り裂いたのだ。
ならば、次弾は―――― 超高速のシズクがラカンに向けて――――
2つ弾丸が宙で衝突した。
その余波は、弾き飛ばした空気を補うように周辺の物、人間を引き寄せていくほど……
果して、その決着は? やがて、人々は重なり合い1つの影となった2人を見る。
肘――――人体において強度が高いと言われる箇所はいくつもあるが、その1つ。
体全体を武器として使用したラカンに対して、シズクは尖った肘を先端にしての体当たり。
ラカンの巨体にシズクの肘は深く突き刺さっている。 そのダメージは語るまでもなく――――吐血。 ラカンの口から鮮血が吹き出され、目からは赤い落涙。
重力に逆らう力すら残っておらず、ラカンは地面に倒れた。
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