第27話 レオ&ドロシーとの戦闘 その④

(レオの構えは攻撃的。引いた腕は刺突以外の選択肢を放棄。それでいて、刺突だけを警戒すると盾を武器として打撃に使用してくる)


 ジェルにはレオの戦術に付き合わないと選択肢がある。


 魔法もある。 遠距離からの斬撃技もある。


 一方的に攻め続ければ、苦戦すらしないだろう……けれども!


「俺にも欲ができた。カッコよく勝ちたいという欲が!」


 ジェルは前に出る。 だが――――


「やはり速い! カウンター狙いの構えじゃないのかよ!」


 レオの刺突。  


 ジェルが間合いに踏み込んだ瞬間、高速の突きが連続で放たれた。


(――――っ! 全てを捌ききれない!?)


 逆にカウンターを狙いに行く。 そう考えたジェルだったが、レオの盾に阻まれる。


(下手に手を出せば、盾で弾かれる。そこでバランスでも崩したら刺突を食らうのは必至か!)


 どうする? どうする? 何度でも自身に問いかけていく。


 その疑問に体が答える。 体の内部に生まれた剣聖の技。


(……へぇ。こんな時は、こう動けばいいんだ。 凄い! どうやっても避けれないタイミングだったのに……あっ! ここで反撃しても良いんだ)


 それが、ジェル本人ですら想像できない動きを、ジェルの体で再現していく。 

 

 自然と彼の動きは、1つの型となる。 


 技の型。


 この状況に適切な動きに調整チューンナップされたソレは、驚くほど自然に発動された。


 『天魔六乱舞』


 「なっ! ジェルっ! 俺の刺突に合わせて剣を――――」


 躱せない。


 受けれない。


 その魔技がレオの体に叩き込まれ、決着を強く予感された――――しかし、そうはならない。  


「ファイアボール!」


 死角から飛び込んできたのは攻撃魔法。 もちろん、ドロシーの魔法だ。


「――――っ!」とジェルは必殺の斬撃をキャンセル。 それと同時に回避運動に集中した。


「ここにきてドロシー! フォーメンションの練度が高すぎる!?」


 完全に死角ブラインドからの攻撃。 いや、今もドロシーはジェルの視線に入らない位置にいる。


 ドロシーが死角に移動しているわけではない。 


 レオだ。 レオがその体を壁にしてドロシーの姿を消しているのだ。


 逆に言えば、ドロシーはジェルの位置がわかっている。


 常にレオを迂回するように魔法を放てば、そこにジェルがいるからだ。


「――――ッッッ!(レオと打ち合えば、死角からドロシーの魔法による狙撃が行われる。どうする!?)」


 ジェルに対抗する手段は――――ある。


 しかし、それを出し渋る理由は、少し卑怯な気がするからだ。


 だが――――


「勝つためか。仕方ない……」


 ジェルは短詠唱を口にした。 それは――――


『シャイニング』


 迷宮脱出のために習得した松明代わりの魔法。


 戦闘用に極限までに光度を高めて放った閃光魔法は、文字通り周辺を白い光で染め抜き――――要するに目潰しだ。   


   

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