第14話 決着

 シズクは言う。 自分は不可視の防具に包まれていると


 シズクは言う。 ここではないどこかの地で『魔族ガチャ』で手に入れたと


 だが、シズクは――――


(まぁ、嘘なんだけどね)


 不可視の防具は存在している。 しかし、それは『魔族ガチャ』によるものではない。


(きっと彼……ジェルくんは誤解している。私が『魔族ガチャ』の当たりしか有していないと思い込んでいる)


 シズクは嗤う。 ジェルを心理的に揺さぶり、コントロールするためのブラフだ。 


(不可視の防具は『聖騎士ガチャ』で手に入れた物。実際は大当たりではない。けど切り札を他に持っていたとしても……それを教える親切心を私は持っていないのだよ)


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・・


 ジェルは下がり、距離を取る。


「どうした? 私の防具が見えなくとも、攻撃しないと勝てないぞ」


 だが、ジェルはシズクの誘いに乗らない。 


(彼女の言葉は、おそらく挑発目的。 ならば、狙いはカウンターなのだろうが……)


 チラっと視線をシズクが持つ武器に向ける。 巨大で武骨な大剣。


 黒い鉄の塊に見えるソレは、カウンターに向いているとは思えない。


(わからない。彼女の口調には防具への自信がある。武器も破壊力が高い大剣ならば、攻めに徹するのが得なはず……いや!)


「わからないなら攻める!」


 ジェルは吹っ切れた。 自信と言うならば自分にだってある。


 新たに手にした武器であれ、それは自分の力であり――――自信だ。


 だから――――


『虚空斬撃翔』


 斬撃がシズクに向かって飛ぶ。 まずは牽制の一撃。


 彼女が不可視の盾で弾く。 


 それは隙になる。  ジェルは体勢を低く、地面スレスレを飛ぶ鳥のように――――


 『土龍激突』


「突進技かい? 面白い。私の防具と君の技とどっちが上か。 競い合おうじゃないか、ジェルくん!」


 シズクは完全に防御体勢。


 衝撃に備えるために盾を前に、大剣と持ちながらも両手で支える。


(どんな大技でも耐えきって見せるさ!)


 その直後に衝突音が迷宮になり響く。


 余波によって、大地が揺さぶられる。


「耐えた! 意識を刈り取られるような衝撃であったが――――私の勝ちだ」


 彼女の大剣。 カウンターに特化した魔剣。


 距離も、時間も、因果すら超越して、攻撃した者へ反撃を必ず入れる。


 これぞ『魔族ガチャ』の当たり。

    


「けど――――『天魔六乱舞』」


 高速の6連撃に技を繋げるジェル。彼の猛攻は終わりが見えない。


「それ以上は引いた方がいいよ、シズク」


 連続技の最中にジェルは声をかける。


「なにっ?」と彼女は盾を振るいながら聞き返す。


「俺の刀――――1本は『名刀コテツ』 お前が攻撃を受けると、自慢の防具が砕けるぞ」


 ジェルの言葉に嘘はない。


『名刀コテツ』 


 対人に特化した、その武器の効果は


『武器破壊及び防具破壊』にある。



 

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