第13話 名前 シズク
(好戦的になっている)
ジェルは自分の心に変化を感じる。
まるで、そういう種類の呪いを受けたかのように――――
かつての自分だったら、言葉を操り敵意を見せない相手に戦いを挑んでいただろうか?
例え相手が魔物だったとしても、自ら挑むよりも逃げを優先してた。
闘争よりも逃走を選ぶ。
自分は、そんな人間じゃなかったか? いや、魔物を斬り殺す経験は、数えきれないほどにあるのには間違いないにしても――――
それが短時間で変わったのは、強い力を得たからだろうか?
だが――――
「――――」と刀の柄を握った瞬間、ジェルは無心になった。
それは剣聖に相応しい立ち振る舞い。
対して、赤目のゴブリンは――――
「いいねぇ」と嗤った。
「酷く好意的だよ。談話をしていた相手をすぐに殺そうとする姿勢は私の好みさ」
赤目のゴブリンは――――彼女は嗤いならが武器を取り出した。
どこに持っていたのだろうか? 構える黒い大剣は彼女の体よりも大きく見える。
「――――シズク」と彼女は呟く。
これには無心になっていたジェルも反応する。
「何?」
「名前さ。これから殺し合うだろ? じゃ、互いに殺そうとする相手の名前を知らないのは、死んだ方が不憫だろ? 私の名前はシズク……お前は?」
「ジェル……ジェル・クロウって名前だ」
「良い名前――――え?」
赤の目のゴブリン、シズクは驚いた。
既にジェルは剣の間合いまで迫っていた。 初動作を消し去った動きがシズクの反応を乱れさせた。そして――――
初弾から繰り出された技は大技 『天魔六乱舞』
超高速の6剣撃。
だが――――
「――――っ!(手ごたえがない。防がれた? でも、どうやって?)」
危険を感じたジェルは後方へ下がる。
剣から伝えられた感覚通り、シズクは無傷で立っている。
彼女が持つ大剣で防御した気配もない。
「どうやった? 何をして防いだ?」
「ん? 手を内を敵に話すと思う?」
「――――」
「まぁ、話すんだけどね。 簡単な事さ……私に手には不可視の盾が握られている。軽装に見える私の体は
「まさか……そんな武装をしてるようには見えない」
ジェルが言うのは見た目の話ではない。 彼女、シズクが言う通り、盾を持ち、鎧を着こんでいるなら、体の立ち姿にも、動きにも影響が出る。
(剣聖となった俺が、それを見落とすはずがない。可能性があるとしたら……)
「ご名答ってやつさ。おそらく、君が考えている通り、『魔族ガチャ』で購入した防具――――
『不可視の鎧』
『不可視の盾』
持ち主の魔力によって具現化する2つの装備に重さは存在していない」
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