第45話 依頼請負

 「ふぅ……これで完成です」と資料を作成していた受付嬢は、額の汗を拭った。


 長時間の作業。ジェルとシズクの後ろには冒険者が並んでいたはずだが……


 どうやら、いろいろ察して列を移動したらしい。


「とにかく、この紙があれば依頼を受けれるんだよな」


 手を伸ばして、できたばかりの資料を受け取ろうとするシズクであったが、


「ま、まってください」と受付嬢が止めた。 少し、顔が青ざめている。


 どうやら、興奮状態から落ち着いて冷静になったらしい。


「特例とか、超法規的処置とか、普段できない事に興奮して作成してしまったのですが……これ、本当に2人だけで請け負うつもりではないですよね?」


「え?」とジェル。


「ん?」とシズク。


「本来なら、この町で2大勢力が手を組んで行う依頼です。後々、協力者を集めてから依頼を遂行してくれますよね?」


「あー、いや、それは――――」と言いかけたジェルだったが、口をシズクに押さえられた。


「もちろん、もちろん。たくさん仲間を集めるぜ? 私たちは友達がたくさんいるからな」


「本当ですか? 信じられませんが……」


「わりと酷い事をサラっと口にする娘だな。大丈夫、大量のワイバーンを相手に2人で戦うほど命知らずじゃねぇよな!?」


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


 ジェルは、たまに思う事がある。


 古代魔道具 自動販売機


 対価と代わりにシズクの知能は、大幅に向上している。


 その正体がゴブリンだとは見抜ける人はいないだろう。


「しかし、あの無秩序な行動力。知能とは、別の――――いや、馬鹿なんじゃないのか?」


「むっ! そう思うのは心の中だけにしておけ。口にすると、命を縮めるぞ」


「すまない。つい本音が漏れた」


「よし、殺そう!」


 そんな感じでじゃれ合う2人だったが、


「結局、どうして2人で依頼を遂行することにしたんだ? 俺だって仲間は当てがないわけじゃないだぞ」


「いや、本来は数百人が強力して挑む依頼なんだろ?」


「うん、そうだな」とジェルは改めて言われて、無謀な事をしようとしている……そう自覚した。


「つまり……数百人分が命を賭けて行う仕事を2人だけで成功させよってだ。報酬も普段の数百倍だぜ!」


 ジェルは天を仰いだ。 


 確かに、従来の仕事の数百倍の報酬……


「単純計算でも……俺たち2人が一生、遊んで暮らせる金額になるか」


「だろ! 私たちの目的はなんだ?」


「古代魔道具が隠されている場所に行って、規格外の力を手に入れる」


「そのために必要なのは金だ。金がないと古代魔道具は動かない」


「君は……巨大な力を得て何がしたいんだ?」  

 

    

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