第99話 二度目のジェル対シオン
迫り来るシオンの刺突――――『土龍激突』
それを目前にジェルは――――
(――――ッ! 身を隠すための遮蔽物は、鉱物や氷塊が混ざった物。容易には破壊される。回避する隙もなし、防御は論外。ならば――――狙うは相殺だ!)
『土龍激突』
ジェルの腕にはシオンと同じ妖刀と名刀が握られ、同質の技を振るう。
同質――――そのはずだった。 しかし、結果として破壊された遮蔽物の欠片と共にジェルは、宙へと打ち上げられた。
(ち、力負けをした!? 同じ技のはずなのに! どうしてここまで差が――――)
ジェルは、動揺をすぐさま排除する。なぜなら、宙までシオンが追ってきたからだ。
そして、その剣からは高速の六連撃――――『天魔六乱舞』
ここは空中。回避も、防御も不可能な状態での魔技。
それを前にジェルは――――
(やはり、相殺以外の選択肢は――――ない)
『天魔六乱舞』×『天魔六乱舞』
高速の攻防。 『名刀コテツ』の武器破壊の効果は同じ『名刀コテツ』には無効化される。
『名刀コテツ』の武器破壊効果は、2本で1つである『妖刀ムラマサ』にも乗る。
しかし、物体を破壊するのに必要な固有周波数を読み取り、叩きつける『名刀コテツ』――――ならば、『名刀コテツ』は『名刀コテツ』では破壊できない。
なぜなら、『名刀コテツ』を破壊するための固有周波数を『名刀コテツ』そのものに再現させると自壊を始めるからだ。
『Error… Error… Error…』と武器破壊失敗を知らせる音が、持ち主の耳だけに異音が届く。
この時、ジェルは―――――
「うおぉぉぉぉ!」と叫んでいた。 それは恐怖を背中を押されての叫び。
僅かな乱れで首が飛ぶ恐怖感。背筋が凍り付くような寒気さを感じながらも――――それと同時に、小さな歓喜。
シオンの剣戟を相殺し終えた。
己の生命を実感する。 湧き出した熱い汗が恐怖を流す。
だが、この時もジェルはシオンの技が自分を上回っているに気づく。
それは、手数。 既にシオンは次の技――――いや、それは技とすら言えない。
ただ、腕力に頼っての一撃。 狂戦士と化したシオンの剛腕が宙に浮かぶジェルに――――
「――――この、このジェルがっ! 天井まで飛んで行け!」
辛うじて防御が間に合うジェル。 しかし、その衝撃は吸収しきれずに―――――彼女の言う通り、ジェルの肉体はダンジョンの天井まで跳ね上げられ、叩きつけられたかのように見えた。
「がっ!」と内臓を痛めたのか? ジェルは口から赤い液体を吐く。
追打ちとばかり、シオンは宙に漂う岩の欠片を足場をして――――
本日二度目の――――『土龍激突』
天井にめり込んで、動けなくなっているジェルに向けて、破壊の刺突を――――
放たない。
寸止め? 僅かに腕を伸ばせば、ジェルの命を刈り取れた状態で剣を下げる。
「……罠であろう?」
重力に沿って、地上へ降りていくシオンはジェルに言い放った。 すると、ジェルは――――
「ちぇ……もう少しだったのになぁ」と笑って見せた。
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