第127話 ダンジョン探索
「なんだったのだ……」
ジェルたちが立ち去った後の玉座の間。
残された人々は理解ができなかった。
請求された賠償金は、確かに高額ではある。
しかし、それは個人の尺度。
敗戦国が支払う賠償金とすれば破格の安値。
提示された領土も、資源も乏しい土地。
内政も、積極的な干渉を行わず、友好国扱い。
「助かったのか、我々は?」
安堵というより、理解が追い付かない不気味さだけが残されていた。 しかし────
王城の廊下を歩くジェル一行。
「お見事でした」と執事が声をかけた。
「ん? 何が?」
「我々の目的を悟られぬよう、虚実を織り混ぜた交渉術。領土? 賠償金? 国の隷属化に王族の命? そんな安いものは不要に────」
「声が大きい。ここはまだ敵地であろう?」
「はっ、失礼いたしました」
「まぁ、知られたところで、理解はできないだろうが、念のために……な。それで首尾の方は?」
「抜かりなく。既にこの国との契約は完了しました。我々が新たな領土に兵を引き連れ、開拓を開始しても問題はないかと」
「では、行くか」とジェルは城の外に出た。
門番や城兵たちともすれ違ったが、驚愕を隠せずにいた。
まさか落とした国の城に、魔王を名乗る王が従者を1人だけ連れてくるとは思っていなかったのだろう。
そんな彼らが驚きを重ねたのは、魔王と従者が城を出ると同時に全身を覆う魔力。
それらを推進力に転換させての高速飛行魔法。
「こりゃ……負けるわけだ」
門番の呟きは、不敬そのものだが、誰も指摘しない。
それを見た全員が、心の中で同意したからだ。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
「道理で長い時間、人に見つからなかったわけだ」
目的地へ到着。深い森の中に広がる建設物。
「どうやら、異教徒の祭壇跡地のようですね。邪悪過ぎて、近隣の住民も近づかないとか……」
「ふん、かつての支配者たちは知っていたのだろうか? この地の下に、真の宝が秘められていたことを」
「ここを祭壇にするほどです。知っていて、距離を取ったのではないでしょうか? 積極的に使えるなら、後世に残る宗教団体になっていたはずでしょう」
「なるほど、懸命だな。力の怖さがわかっている。俺たちと違ってな……」
「……お戯れを。我々は、例のアレをジェルさまに相応しい力の源だと心得ています」
「そうか……そうだといい。さて、今回はどのような編成だ」
「はい」と執事が返事をする。 それだけで、彼の足元……影に変化が起きる。
「待機させていたのは、魔術師と暗殺者です」
それだけ言うと彼の影が立体に、人間の姿に変わった。
「元となった人材は、この国の英雄でした。今回の戦争で勧誘をしていたのですが、断られ続け、ついには戦死を――――」
「なるほど、お前が死して、惜しむ人材か。見せてもらおうか? その実力を」
影となった『魔術師』と『暗殺者』を「……」と無言であった。
どうやら、言葉は喋れないようだ。 しかし、ジェルと執事を守るように陣形を組んだ。
「なるほど、優秀さが良くわかる。これから楽しませてもらうぞ」とジェルは笑った
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