第103話 ジェルとレオの物語
「初めてかもしれないな」とジェルは自傷気味に呟く。
初めて、真正面からレオと戦う気がしている。 初めての1対1の戦い。
(前回のは不意打ちみたいなもの……妖刀も名刀を使って――――最後は目潰しで勝った)
そこまで考えてジェルはこみ上げてくる笑いを止めれなかった。
「何を笑っていやがる?」とレオは挑発するわけでもなく自然と疑問を投げかけて来た。
「いや……お前を前にして、恐怖を感じなくなっている自分に驚いてる最中だったんだ」
「――――そうか。 でも、この戦いでは思い出してもらうぞ? 恐怖ってやつをな」
爛と音がした気がした。 一度、精神を切り替えるように瞳を閉じ、開いたレオの瞳。
その瞳にジェルは、少しだけ動揺する。
(それは――――その瞳には復讐の炎が揺らいでいる。お前が――――お前が俺と同じ感情を向けてくるな)
気がつけばジェルは駆け出していた。 心よりも体がジェルの精神に反応して、行動を起こしていたのだ。
だが、先手を取ったのレオ――――レオ・ライオンハートだった。
ジェルが接近するよりも早く、レオの剣が宙を切った。
『虚空斬撃翔』
それは剣聖セット『妖刀ムラマサ』と『名刀コテツ』を振るう事で発動する不可視の斬撃――――見えない斬撃を飛ばす技だった。
「――――ッ!」と初めてジェルは、レオが自分と同じ武器を有していると知る。
(だが――――予想はしていたさ!)
先ほどの戦いでシオンもまた、剣聖セットを有していたからだ。
飛んで来る斬撃。 見えないはずのソレをジェルは、剣を振るって――――相殺。
「なにッ!」とレオは、驚きながらも二撃目――――『虚空斬撃翔』
結果は同じだ。 見えないはずの剣撃をジェルは容易に切り払って見せた。
――――なぜか? 単純である。
『虚空斬撃翔』 ――――いや、それだけではない。
『天魔六乱舞』も―――― 『土龍激突』も――――
古代魔道具『剣聖セット』の力によって身に付けた技ではあるが、使い続けて来たジェルに取って、もはや技が体に染みついている物だからだ。
今なら、たとえ二刀の剣がなくとも、3つの奥義が再現可能になっている――――かもしれない。
ならば、できる。 自分に向けられた奥義が、たとえ肉眼で捉えられない魔技であっても、切り払う。 あるいは受ける事も――――
「もっとも、相手がレオじゃなくてシオンだったら、怪しいもんだけどな……」
自傷的に笑いながらも、ジェルとレオ。 両者の間合いは最大限――――剣の間合いまで縮まった。
「――――ッ! このジェルが! お前が俺を――――」
「黙れ! 俺は、もう――――お前を見ていない」
「~~~ッッッ!? ふざけるなよ!」
互いに同じ剣。 二刀流同士の4本の剣がぶつかり合った。
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