第76話 閑話休題 レオたちは――――④

 自ら放った魔法を跳ね返され、無防備に衝撃を受けるドロシー。


 その余波は、激しい土煙で彼女の姿を消す。


 安否不明。


 「ドロシー!」と叫ぶレオ。


 その僅かな隙を狙われたか。 


「ぐっ───がっ!」とレオは痛みに襲われた。


 彼が気づいた時には、彼の体は地面に叩きつけられていたのだ。


 未知の投げ技。受け身もとれず頭部を地面に打ち付け、意識が朦朧する。


 投げたのは、捕らえていたはずの少女。


 魔法使いの少女は隠していたはずの素顔を晒しているが、レオには彼女の特徴が見て取れなかった。


 もしかしたら、認識阻害の魔法を展開させているのかもしれない。


「そんなに女性の顔をまじまじと除き見るものじゃありませんよ、それ!」


 彼女は掛け声と共に杖の先端でレオの腹部を刺すように突いた。


 「────ツッ!? がっああああああああああああああっ!!」

 

 戦い馴れしているレオですら叫びほどの激痛。 戦意や敵意すら痛みに削がれていく。


 だから、動けるのは1人のみ――――シオンが動いていた。


 シオンは剣聖になるべき技と鍛錬を積んでいた。


 それが『剣聖ガチャ』によって開眼する。


(今の私なら――――私が理想とした剣聖の技を再現できる!)


 『名刀コテツ』と『妖刀ムラマサ』から学んだのは『土龍激突』の突進力。


 刀の力を使わず、彼女自身の力で瞬時に移動する。


 「貰った!」と剣を振る。 ――――だが、次の瞬間に彼女は信じられない現象を見る。


 剣を素手で掴まれたのだ。刃の部分だけを摘まむように――――


「馬鹿な」とシオンは驚愕。


(抜刀からの斬撃。私の技は素手で掴まれるほどにぬるくない……はず)


 加えて、彼女は剣士として持つ剣の知識。


 『名刀コテツ』の武器破壊能力。 それを分析していた。


(おそらく、この剣は刃の部分のみが高速で震動している。それが防具や武器を破壊するほどの衝撃を生み出している。それを掴めるものなのか?)


 彼女の分析は正しい。 『名刀コテツ』の武器及び防具破壊の原理は2つある。


 1つは前記した現象。 もう1つ――――『名刀コテツ』は接触した物体の周波数を読み取る。


 物体には、それぞれ異なる固有の周波数が存在している。


 『名刀コテツ』は、読み取った周波数をぶつけ、物体に共振を引き起こす。そうなれば、どうなるか?


 例えば、鉄で作られた城壁に『名刀コテツ』で触れたとしよう。


 すると、たちまち城壁は意識を持った生物のように暴れ始め、自壊を起こす。


 そんな、現代には存在しないはず超技術。 それが『剣聖ガチャ』――――つまりは古代魔道具の力だった。


 ならば、その規格外の能力を無効化している魔法使いの少女の正体は、一体――――


「私は教団第十三課、通称は『守護者の妖精スプリガン』に所属しています」


『教団第十三課』 『守護者の妖精』


 それらは、レオたちは初めて聞く名前だった。


 少女の正体は、何者か? 何が目的か?


 改めて、その疑問が浮上する。


 それを感じ取ったのだろう。 だから少女は――――   

 

「私の名前は、アスリン・ライヤ。あざなは黄金……黄金のアスリンと呼んでください」


 当たり前のように頭を下げた。


 シオンの剣先を摘まみ、地面に倒れたレオを杖で抑え込みながら……


 それから、こう続けたのだ。


「私たち教団の目的は、世界各地に残された古代魔道具を封印する事……そして、今は貴方たちに興味があります。それは――――


 私の仲間になってくれませんか?」

 

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