1-3 僕に可愛い戦闘侍女がつきました
父に連れられ診療所から皆がいる教会に移動する。
教会には神殿があり、そこには街に魔獣が入って来ないための結界石が安置されているのだそうだ。この結界石のおかげで村や町は安全に生活する事ができるのだ。
この結界石は強い魔獣ほど嫌うそうで、逆に弱い魔獣には影響が少ないらしい。魔獣の中にある魔石が影響しており強い魔獣ほど大きな魔石を持っていて、その分結界石の反発が大きいから嫌って寄り付かないのだそうだ。
結界石の効果は、結界石を中心にサークル上に及ぶそうで、効果を最大限に生かすため大概教会は街の中心にある。
弱い魔獣は結界石の影響が少ないために、街は高い城壁で囲まれて弱い魔獣の侵入を防ぐようにしてあるようだ。街1つ囲うのだ、おそらく城壁は数キロにも及ぶだろう、後で見てみたい。
神職である神殿関係者は、聖属性の適性があり、回復魔法が使える。その為、教会には必ず診療所が併設されているのだそうだ。
それで得た利益で孤児院を賄っているのだ……教会、診療所、孤児院はセットらしい。
勿論孤児院は国や貴族たちの寄付金がないとやりくりできない。この教会にも父が毎月結構な額の寄付を施している。この街の領主なので当然なのだが、そのせいもあってか神父やシスターたちの腰がやけに低い。
さぁ、頑張って父様に恥をかかさないよう挨拶だ。
「皆様、今日は僕の葬儀に集まっていただきありがとうございます。せっかく来て下さったのに生き返ってすみません……と言うのもおかしいので、ここは素直に来てくれてありがとうと言っておきますね」
『生き返ってすみません』で少し笑いがとれて、場の雰囲気が和んだ。
だが、ここからだ。
さっき父の【クリスタルプレート】に馬の刺し傷の確認が取れたとコールがあったのだ。どうやら小さな針も刺さったままだったようだ。馬の毛並と同じ色に塗られていて、良く探さないと分からないように加工されていたそうだ。やたら確認が早いと思ったのだが、まだ現場で事後処理をしてた者が数名残っていたようだ。
【クリスタルプレート】については後で確認するが、色々疑問もあるし女神に突っ込みたいことも多い。
今は先にあいつに向けてプレッシャーを与えてやる。
これはリューク君の記憶からくる感情なのだろうが、親友だっただけに腹立たしく許せそうにない。
「僕が生き返ったのはまさに神の思し召しでした。仮死状態で僕は女神様に会えたのです」
「おおー、神のご加護の賜物か、素晴らしい!」
皆口々に生き返った奇跡を称賛してくれているが、ここで爆弾投下だ。
「そこにいた美しい女神様は女神アリアと名乗っておられました。そして今回のことは事故ではなく僕を狙った暗殺だと教えてくれたのです。先ほど馬から毒が塗られた針が発見されたと、父の配下の者から連絡があったそうです。女神様のおっしゃる通り、細い渓谷の街道で吹き矢を使い、馬を暴走させ僕を事故に装い暗殺しようとした者がいるようです」
女神アリアはこの世界の管理神。この世界に七柱いる神の中の主神なのだ。その主神の女神様が事故でなく暗殺と教えてくれたと言ったのだ。神殿内で神の名を出しての発言だ。当然嘘や謀りは神罰が下ると、皆、俺の言っている言葉に嘘がないと信じるだろう。
俺の発言を聞いたラエルの顔色がみるみる変わっていく。
父や隊長たちもその様子をラエルにばれないように窺っているようだ。
だが俺は証拠もないのにこの場でラエルの名を出すつもりはない。
女神の名で糾弾すれば可能なのかもしれないが、証拠不十分で無罪になった場合、これまで仲が良かった分とてもまずいことになってしまう。なにせ父親同士が兄弟なのだから当然だ。
「ですが、女神アリア様は犯人の名を教えてはくれませんでした」
この発言に父や隊長、フィリアもどうして? みたいな顔をしている。
逆にラエルは心底ほっとした顔をした。
「アリア様は、6日以内に犯人を自分で見つけられたら僕に褒美を下さるそうです。ですがダメだった場合でも6日後に各神殿に神託を下し、犯人を暴露してくれるそうです。但し僕が暗殺者によって6日以内に死んでしまったら、犯人暴露の神託もしてくれないそうです。なので6日間生き残るのが、今回神から与えられた僕の試練ですね」
さぁどうする? ラエルもこれで6日以内になにがなんでも俺を殺さないといけないと思っただろう。
わざわざ俺が帰るまでの期限を付けたんだ……死に物狂いで向かってこい。
返り討ちにしてやる!
ラエルは立っているのもやっとのようだ……ざまーみろ!
父様の弟のゼファー叔父様と違って、ラエル自体は権力も武力も持っていない。
おそらく自分の金でこっそり暗殺者を雇っただけだろう。
俺のオリジナル魔法を駆使すれば今すぐにでも暴けるのだが、そう簡単に開放してやらない。せいぜい6日間悩み苦しむといい。
リューク君はラエルを幼馴染の親友と思っていたくらいだったのに、リューク君を裏切って暗殺者を雇って殺した罰だ! 絶対許さん!
場は騒然となったが、俺は診療所の方に引っ込んだ……母や兄妹に会うためだ。
記憶を読み取ると、俺には3人の母親がいるみたいだ。
正室である第一夫人のマリアさん。マリアさんは兄カイン君とリューク君の実母である。
そして側室の第二夫人のセシアさん。本来マリアさんに子ができなかった時の保険なのだが、セシアさんにはまだ子供ができない。自分の存在意義を果たせずそれを凄く思い悩んでいるようだ。最近体調が凄く悪いようで、今回の葬儀にも出ていないみたいだ。
そして第三夫人のミリムさん。ミリムさんは妹のナナのお母さんだ。
だが、ミリムさんも少し訳有りで、第三夫人だが妾扱いだ。
実は、父が公爵家に家事見習いとして箔を付けにきていた商家の娘であるミリムさんに手を出してしまったのだ。侍女が相手なら全員貴族なのだが、ミリムさんは大手商会の娘さんだ。つまり平民なのだ。
残念だが平民は王族の側室に入れない。妾として扱うしかないのだ。
父に無理やりという訳ではなかったようで、ミリムさんも以前からかっこいい父に気があったようだが相手は公爵様、身分が違いすぎる。その意中の相手の方から酔った勢いとはいえ手を出してきたのだ。玉の輿も狙えるそんな大チャンスを逃さず上手く立ち回ったミリムさんの勝利である。
マリアさんもセシアさんも凄く優しい人で、ミリムさんを追い出すこともせず、第三夫人として扱い可愛がっている。勿論妹のナナのことも俺たち同様、いや、それ以上に実の子のように可愛がってくれている。
父様もちゃんとナナのことを自分の娘として認知して、公爵家の娘として貴族登録している。
「リューク、体調はどうだ? おかしなところはないか?」
「はい兄様、ご心配おかけしました」
「本当に心配したぞ。心配というより死んだと思っていたから凄く悲しかった」
「ごめんなさい」
兄であるカイン君は現在18歳、フォレスト家の嫡子である。次期当主だね。
勤勉で努力家、リューク君よりかなり優秀で、フォレスト家も安泰だと言われるほどの優等生だ。
見た目も超イケメンで父親に似ている。性格も温厚で俺やナナのことを随分可愛がってくれていたようだ。
「兄様(あにさま)、ナナは凄く悲しかったです。もう死んじゃダメですよ!」
ナナは15歳、リューク君にべったりのブラコンのようだ。
ナナは生まれつき足が悪いようで、車輪の付いた車椅子のような物に乗っている。母親に似たのかとても可愛い顔をしており、まるで空想上の天使のようだ。リューク君とカイン君が可愛がるのも仕方ないだろう。
見た目はフィリアに負けないほどの可愛さだ。髪は王家の者に多い赤系だが、ライトピンクの色をしていて、肩甲骨あたりの長さで今日は後ろで1つに纏めている。
足が悪いせいもあってあまり外に出ないので、シミやソバカス1つない、色白で綺麗な肌をしている。
母様たちとナナに大泣きされた後、父とこの後どうするのか話し合う。
母様たちにはラエルのことは内緒だ……無駄に心配させる必要はない。
「リューク、先ほどの教会での話は本当なのか?」
「いえ、半分嘘です。女神様に会ったのは本当ですが。神託はしてくれません。自分で解決しなさいと言われました」
「どうするのだ? 何か案はあるのか? 期日まで付けてあそこまで煽ったのだ。日がなくなるにつれ死に物狂いで襲ってくるやもしれぬぞ?」
「本来なら僕もラエルも、フィリアもナナも、そろそろ王都に向かわないといけません。ですが少し待ってもらっていいでしょうか? 期日の6日で結構ですので」
リューク君が馬車で王都に向かっていた理由なのだが、王都にある騎士学園の魔法科に入学するためだ。婚約者のフィリアもナナも同じく魔法科に通うことになっている。ラエルは騎士科に通う予定だ。
5月7日が入学式の為に、フォレスト領から馬車で3日の王都に余裕を見て向かう所だったのだ。そこを襲われ今に至る。ナナは足が不自由なため、介護用の専属侍女が2人付くので別行動で今回難を逃れた。
日本の入学は4月が基本だが、こちらの世界では5月だそうだ。
理由は除雪機がないからだ。移動は馬か馬車、金銭的余裕のない者は徒歩なのだ。だが徒歩の移動をする者はあまりいない。街道には魔獣が出るので余程の理由がない限り一般人が徒歩で城壁の外を出歩くことはない。護衛付きの定期で出ている乗合馬車での移動が一般人の移動手段だ。
つまり、北の地方の者が雪解けから移動しても王都に来れるように配慮したら5月になるのだ。
日本人の俺からすれば4月じゃないの? と思ったが、理由を知れば納得である。
ちなみに兄カインは今年卒業で俺と入れ違いだ。兄は魔法特化の俺と違い、騎士科を首席で卒業した。
俺は父に似ず母に似たためか、魔法適性の方が高かったので魔法科なのだ。
父であるゼノは、王家の者によく現れる火属性と土属性の適性が高く、身体強化や物理防御のスキルが得意なのだ。兄カインも同様である。剣を扱う騎士になる為の最強の組み合わせだ。
俺の母は、水と風の属性適正がとても高く水系の回復魔法が得意のようだ。
俺は母に似て水系の回復魔法が使える。回復魔法はこの世界ではかなり貴重で両親ともに大変喜んでくれている。
貴族が血縁を大事にする理由に、魔法属性は遺伝で受け継がれるという理由がある。
平民に魔法使いが少ない理由の一つだ。貴族が優秀な遺伝子を囲ってしまっている為である。
妹のナナは父の属性が付いたため、火と土属性の適性があり魔法科に入れた。が、特別魔法が優秀というわけではない。足も不自由だし本来なら入学できなかった可能性もあったのだが、なにせ足が悪いため家から出ることがない、半引き籠りだ……その分勉強に時間をあてたのか、今期の主席合格らしい。
その為、今年の新入生代表挨拶はナナがやることになっている。
「命の危険があるのだ。学園に遅れてでも、しばらく部屋から出ぬ方がいいのは当然だな」
「父様違いますよ。それじゃあラエルが僕を襲えないじゃないですか」
「わざと襲わせるのか!? カインならともかく、お前じゃ暗殺者にやられるだけだ!」
「ここだけの話ですよ。実は女神様にもう有用なスキルを先に頂いているのです」
「なんと! それはどのようなものなのだ?」
「スキルの内容は家族であっても女神様との約束で教えることはできません。ですが、そう簡単に殺されるようなものではないので、ご安心ください」
滞在期間7日しかないのに、王都までの馬車の移動で3日も潰されるのはご勘弁だ。なんとか王都への移動を待ってもらい、父の治める商都フォレストで残り6日間を堪能するつもりなのだ。だって、ずっと移動で何もない街道じゃ、モフモフちゃんに会えないじゃないですか。
「お前はフィリアに悪いからとこれまで侍女を付けずにきたが、やはりこの際専属侍女を付けることにする。命には代えられぬからな、拒否は許さぬ。フィリアにも私から説明しよう」
「でしたら従者は侍女ではなく、兄様のように執事をお付け下さい」
学園に通う祭に、伯爵以上の貴族は従者を1人連れていっていいことになっている。身の回りの世話をさせる為だ。自分では何もできない貴族の子が多い為である。
兄カインは、学園生活を送る間、優秀な従者を一人連れていた。
この従者はカインが16歳になって学園に通う際にあてがうために、幼少のころから教育されたエリートなのだ。候補者数人の中から勝ち抜いたこともあって、従者自身専属になれたことを誇りに思っている。
卒業後も、在学中の3年間に兄様から絶大な信頼を勝ち得た彼は、そのまま兄様の直臣として働くことになっている。次期公爵家当主の兄の直臣なのだ……出世は確実だ。
俺にも16歳の入学に合わせて、嫡子である兄ほどではないが、俺用に3人教育されていたようだ。しかし1名が途中で脱落してしまい、残ってるのは戦闘系の侍女が1人、執事系に教育された者が1人だ。
ただ学園に通わせるだけなら執事系の従者で良かったのだが、今回の件で戦闘ができる侍女の方が選ばれることになったようだ。
足の悪いナナには特別に介助のできる侍女が2人付くことを学園が許可している。
ナナ専用に世話をするのに特化した介護用侍女だ。主席合格と公爵家という点が考慮されたのだろう。
「執事候補は1人いるが、優秀だが戦闘に少し不安があるのだ。今回の件もある。戦闘系侍女を付けることにする」
「6日以内に解決するつもりですので、従者は要らないのですが……」
「やはり学園に公爵家が侍女や執事を連れずに行くのは体裁が悪い。それにせっかくお前の為に日々努力してきた者に申し訳なく思わないのか?」
そうなのだ。この者たちは俺の学園生活の間の為だけに10歳の頃より必死で努力してきたのだ。屋敷の中では侍女に年齢制限はないが、学園入学には16歳以上という縛りがある。年齢の上に制限はないが流石に20歳過ぎの者が16歳の者に混ざって授業を受けるのは貴族間で噂されてしまう。
『〇〇家はまともな従者一人用意できないのかしら』という噂が流されるのだ。
「分かりました。兄の従者のように優秀なのでしょ?」
「ああ、優秀なのだがちょっと変わった子でな。あはは、まぁ大丈夫だろう……」
何だ今のリアクションは? 珍しく父様が言葉を濁したぞ? リューク君の記憶ではあまり見たことのない反応だ。嫌な予感がする……。
父様がどこかに連絡して、5分ほどで騎士に連れられて一人の少女がやってくる。
いや言い直そう、一人の幼女がやってきた。どうみても10歳くらいにしか見えない。
髪色はダークグリーンで黒髪にも見えるが太陽光を通すとライトグリーンに輝いている。全体的にショートヘアーだが、前髪だけが長すぎて顔が殆ど見えない。口元が少し見える程度で、俯いているせいもあって顔を確認できない。
身長は130cmほど、体重も30kgないぐらいだろう。
耳が長くて尖がってる……エルフの子供だろうか?
「父様、どうみても子供じゃないですか! こんな子供じゃ戦闘はできないでしょ? 侍女としての仕事も、これじゃあ逆に僕が子供の世話係じゃないですか」
「違うのだ! これでも彼女は15歳なのだ! ちょっと訳有りなんだ」
「ん! レディーに向かって失礼!」
「ええ~! 15歳なの? これで15歳?……」
幼女は自分でレディーとか言ってるけど、どうみても幼女ジャン! お子ちゃまジャン!
「彼女はエルフと人間の間に生まれたハーフエルフの母と、ドワーフとピグミー族のハーフの父親の間で生まれた子なのだ。小さいのはピグミーという小人族の血の影響だろう。ドワーフも力は強いが小さい小柄な種族だしな」
なんと4種の混血クオーターだった。
「エルフもドワーフも混血のハーフを毛嫌いする種族だ。エルフからもドワーフからも村での生活を許されず、育児に疲れた母親は種族間の偏見のないと噂のこの街を目指し、その旅の間に病にかかり、やっと辿り着いた時にはもう手遅れだったようだ。この教会の孤児院に彼女を託した後、数日で息を引き取った。彼女が8歳の時だが、俺が丁度その場に居合わせてな……ナナかお前の侍女にするために引き取ったのだ。エルフは魔法に長けてるし、ドワーフは力が優れ鍛冶や戦闘でも優れている。ピグミー族も狩猟民族で弓や諜報に特化しているからな」
「でも、平民は王族である公爵家の侍女にはなれないのではないですか?」
「その点は心配ない。彼女は我が配下の子爵家の養女にしてあるのでちゃんと貴族として王都に登録されている。お前たちの入学に合わせて準備は万全にしてある。唯一の誤算は、私が初めて会った時からちっともこの子は成長していないのだ。この小ささじゃ流石にナナの世話はできない。ナナを抱えて移動することも多いし、トイレや風呂の介助ができないからな」
「……本当に戦闘なんかできるのですか?」
「これも私の予想外なのだが、彼女は余程頑張ったとみえて、三番隊隊長のカリナに10試合して7勝で勝ち越しているほどの猛者だ。お前なんかよりずっと強いぞ。それに侍女としても優秀だそうだ。口調だけは矯正できなかったそうだがな……」
リューク君とは違う理由で俺は侍女は要らない。すぐ横で他人に控えられるのは一般家庭の日本人として育った俺には苦痛でしかない。常に監視されてるようで絶対落着けないと思う。
俺はアパレル店員の視線すらウザいと思う人間なのだ。視線でも嫌なのに、近寄ってきて『どういったものをお探しですか?』とか声を掛けてきたら、すぐ店を出てしまうほどだ。
「ん~、でもな~。侍女とか本当に要らないんだよね……」
「ん! 公爵様に拾ってもらい、貴族の養女にまでしてもらった! 恩を少しでも返したくて頑張った! 毎日リューク様の役に立てれるように凄く頑張った!」
彼女の必死さが伝わってくる。
8歳からだと約8年間この時の為に日々努力してきたのだろう。断れないよなー。
「目を見せてもらえるかな?」
「リュークよ、彼女は俺にも恥ずかしがって顔は見せてくれないのだ、許してやれ」
「『目は口ほどにものを言う』とも言います。主になる者に目を見せられないような子を信じられないので、どうしても嫌だというのならもう一人の従者候補の執事にしたいと思います。彼女と同じように彼も一生懸命頑張ってきたのでしょう?」
「ん、分かった。恥ずかしいから少しだけ」
「な! ずるいぞ! 俺も見たい!」
さっきまで部下の目を気にして、自分のことを『私』と言っていたのに、『俺』と言っている。
このおっさん、この子の顔をどんだけ見たいんだよ!
「ん! 公爵様でもダメ! リューク様だけ!」
彼女は部屋の隅に俺を連れて行き、他の者に見えないように前髪を掻き揚げて俺だけに目を見せてくれた。
「なっ!」
妖精さんがいました!
「どうしたリューク!」
「父様! 可愛い妖精さんがいました! ナナやフィリアに劣らない美少女です! とても澄んだ濁りのない奇麗な目をしています!」
「どれ! 俺にも見せておくれ!」
「ん! ダメ! 母様との約束! 顔は絶対見せちゃダメなの!」
「あー、そういうことね」
「うん? どういうことだ? リュークには見せてはいけないという理由が分かるのか?」
「母親は彼女を心配して見せちゃダメと言ったのでしょう。エルフやピグミー族は可愛い美形が多いのでよく攫われて奴隷として売られると聞きます。彼女もとても整った妖精と思えるほどの美少女です。攫われたりしないように母親は常日頃よりこの娘に注意していたのでしょう」
「成程……それほどの美少女なら俺も見てみたいのだが」
「ん! 公爵様でも絶対ダメ!」
「うっ、仕方がない。あきらめるか……で、リュークよどうするのだ?」
「はい、従者は彼女にお願いします。ラエルもちみっこの彼女なら油断するでしょうし、そう考えれば彼女はうってつけかも知れないですね」
「ん! リューク様ありがとう!」
「じゃあ、名前を教えてもらえるかな?」
「ん、サリエ・E・ウォーレルです。よろしくお願いします」
「サリエ、これから学園に通う3年間よろしくね」
身を守るために、可愛い戦闘侍女が付きました。
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