3-65 サリエに誕生日プレゼントを創ってやりました
朝から昨日の大浴場での悪戯の件で、学園長には白い目で見られ、父様からはこっぴどく叱られた。
でも、婚約者たちは何故か大喜びしている。
フィリアとナナは、リュークらしい悪戯だと嬉しそうだし、他の者もロッテ先生にメール添付で自分の【クリスタルプレート】に送らせて、待ち受け画面にしているほどだ。
「学園長たちは、もう朝食はお済ですか?」
「お前のせいでまだじゃよ……」
「先生もまだですわ……」
「ごめんなさい。雷を落として撮影は阻止したと思っていたのに……」
「儂が今日来たのはその件で来たのじゃ。本来浴場で撮影や魔法は発動できない筈なのだ。リュークや、お前が魔法阻害のスキルに干渉したから、今回浴場で撮影出来たのじゃ……学園内では魔法は禁止だと、先日言ったばかりだろうが。バカ者が!」
「うっ……ごめんなさい」
本来お風呂場や更衣室などでは、【クリスタルプレート】は出せても、撮影自体はできないのか……。それを、俺が無理やり魔法を発動させて、魔法阻害の結界に穴をあけちゃったものだから、撮影出来たってことか。
貴族令嬢も沢山居るのだ……万が一悪意ある者に撮影されて、世間に裸体が流れでもしたら、自害ものの騒ぎになるだろう。その辺のセキュリティはしっかりしているんだな。
学園長は悪戯そのものではなく、禁止エリアでの魔法使用の方を怒りにきたのだ。
「今後、魔法は非常時以外は使うではないぞ! 良いな?」
転移魔法まで禁止されてしまった……。
仕方ないな……面倒だが一旦外に出てから使うとするか。
「了解しました。今からだと、食堂も混雑しているでしょうから、今日はここで朝食を食べて行ってください。さっき王都でも人気のパン屋で焼き立てを買ってきましたので、美味しいですよ」
「ふむ、あそこのパンは確かに旨い。余分はあるのか?」
「学園長、多めにいつも作ってますので、ロッテ先生も食べて行ってください」
朝食を調理してくれたパエルが、代表で問いに答えてくれる。
「本来特定の生徒と懇意にするのはダメなのじゃが、まぁ、今日は良かろう。ロッテ先生、今日はご相伴に預かろうではないか?」
「そうですわね。リューク君、今日はお言葉に甘えておきますね」
一旦学園を出てから、フォレスト領の別邸に転移する。
さて、どっちを先にするかな……。
『ナビー? ハウスクリエイトの方は出来てるか?』
『……はい。マスターが設計した図面通り出来上がっています。点検も終えていますので、いつでも使えますよ。お風呂にお湯も張っていますし、武器工房の炉もいつでも使えます。先にプレゼントしてあげた方が、今日一日少しでも長い時間幸せ気分が続くので、どうせあげるなら早い方が良いのではないでしょうか?』
『確かにそうだな……よし、今から作るので炉に火入れしてくれるか?』
『……了解です。この図面どおりに鍛錬を行い、素延べまで進めておきますね』
『ああ、後はこっちでやる。宜しくな』
「サリエの実家に行く前に、プレゼントを先にあげようと思う。今からサリエの体のサイズを詳細に測るね」
「ん? プレゼントなのに体のサイズ? あ! 例の指輪?」
なにか勘違いをしているようだが、中に入れば分かることなので、その時に説明した方が良い。百聞は一見に如かずだ。
身長・体重・肩幅・腕や脚の長さ・手足の大きさ……計測できる箇所は全て記録してナビーに保存させておく。
【詳細鑑定】でもサイズは分かるのだが、実際触って肉付きや筋の付き方を見極めたかったのだ。特に掌はじっくり調べた……サリエの手は、小っちゃくて可愛いお手てだった。
『……マスター、準備できました。火にくべて、真っ赤に熱しています』
『うん。分かった、ありがとうな』
「よし! 大体分かった……今からサリエに誕生日プレゼントを創ってあげよう」
「ん? 作る? 造る? 創る? リューク様、何を作ってくれるの?」
「カテゴリー的には創るだね。サリエに神級武器を今から創ってあげるね」
「ん? 神級武器? リューク様が?」
実際に打ったこともないのに、神級とか大きくでたが、熟練度MAXなうえに、ナビーが毎日人形たちに修練させてくれたおかげで、俺も同じように出来るのだ。
残念ながら、ログハウスの鍛冶場の炉では、ブラックメタルを融解させるほどの火力が得られない。【インベントリ】内のナビー工房にある武器工房の鍛冶場で基礎となる精錬を行い不純物を除去してから刀の元になる長さの素延べという棒状にしてもらっている。
後はそれを熱して叩いて、理想の形に整形していくのだ。
鍛冶場はログハウスに組み込んであるから、家を出すためにある程度広い場所がいる。別邸から出て、以前サリエと剣を稽古した場所にやってきた。
そこにログハウスを出すとサリエが超驚いていた。
「ん! 小屋!? 家? これ魔法? リューク様、これ何?」
「見た目魔法だけど、実際はただ【インベントリ】内に出し入れしているだけなんだよね。流石にこの質量を【亜空間倉庫】に入れたとか思われたらヤバいだろ? 召喚魔法だってごまかすつもりだ」
「ん~、それでも変に思われると思う」
中に入ってサリエは凄い凄いと叫びながら走り回って探索していた。
一通り見て回り、サリエは大きなお風呂に入りたそうにしていたが、どうせ鍛冶場で汗をかくのだ、後でと言って鍛冶場に連れてきた。
俺は炉の前の椅子に座り、すでに熱せられ真っ赤に焼けた小太刀の原型をペンチの化け物みたいなやつで挟んで引き抜く。金床に乗せ、ブラックメタルの槌に魔力を込め、イメージどおりに仕上がるように想いを乗せてぶっ叩く。錬成魔法にイメージを乗せる、俺オリジナルの製法だ。
形を整えながら30回ほどぶっ叩いたら再度炉に戻し熱す。
今度はメイン武器になる太刀の方だ。こちらは主成分が希少金属のブラックメタルなので流石に硬い。50回程連続で叩いて再度炉に戻す。それを交互に繰り返し、刀にイメージを叩き込んでいく。
叩いては炉に戻すを繰り返し、5回目に小太刀の方がイメージの叩き込みと整形が終える。
ある程度仕上がった刀身に焼刃土を塗り、刃紋を形成する。この刃紋を入れる作業で、刀匠のセンスが伺えるのだ。幾ら切れ味が良くても、刃紋次第で駄作になってしまう。刀の美しさはここで決まると言っても良いだろう。
最後に大事な焼き入れを行う。800~900度程に熱した刀を、水に浸け一気に冷やして硬度をだすのだ。
後はインベントリの工房に預け、ナビーに研磨を掛けてもらう。
太刀の方はまだ叩かないといけない。結構な重労働だが、後ろでサリエの熱い視線が注がれている……良いモノを創ってやらないとな。
汗だくになりながら必死で叩き続ける。
20分程叩き続けてやっとこちらも研磨に回せる。
先に研磨の終えた小太刀を取出し、錬成魔法で仕上げに入る。
その際に付与魔法でエンチャント強化も施し、最後に刀の根元に俺作と判る様に印を刻み、銘を切って完成だ。
一旦インベントリに仕舞って鞘の方にも付与を施す。
今回鞘にはブラックトレントを使用し、柄巻きにはストリングスパイダーの高級糸を寄り合わせたモノを巻いた。
柄巻の技術もこの世界にはないモノだ。蜘蛛糸をサリエの髪色に似合うように、黒に近い濃い深緑色に染色してある。漆塗りしなくても、鞘はブラックトレントの特性で黒光りして艶があるのでそのまま使用している。
藍味を帯びた黒い鞘と合って柄巻が映えて、とても美しく仕上がっている。
鍔はブラックメタルとミスリルを使って、こっちの世界のドラゴンてきな西洋竜ではなく、アジア的和龍を左右対称に2匹あしらって、カッコいいモノを取り付けてある。龍の部分がミスリルで、銀色に浮かび上がって中々お洒落なものに仕上がっている。
この刀で鍔迫り合いとかないので、本当は必要はないのだが、鍔がないと美しさが半減してしまうので取り付けたのだ。
太刀にも同様の作業を施しやっと完成だ。サイズを変えて、今回俺の分も創った。
4本同時だったので、4時間近くかかった。
うーん、ヤバい物が出来てしまった。
「サリエ、できた! 魔刀【魔食夜叉】と【魔切般若】と銘を切った。どっちもヤバい」
早く欲しそうにしているが、渡す前に言っておくことがある。
「サリエ、この剣は俺の国固有のモノで、刀(カタナ)という。この世界の剣に多い両刃と違い、片刃なので慣れるまで時間は要るだろうけど、片刃にしたのには理由がある。この刀は普通の剣と違って、刃で触れるモノ全て切断してしまう魔刀だ。だから、殺さなくて良い者を切る時は、刃の逆側の峰で打ち据えて倒してほしい。無慈悲に全部切り捨てることは許さない、良いね」
「ん、分かった! 約束する。無慈悲に殺したりしない!」
約束をしたので、サリエに刀を手渡す。
「【魔食夜叉】は魔法を喰らう。火・水・風・雷の4属性だけだけど刀で受けることによって魔法攻撃を吸収して無効化できる。そして喰った魔法を任意のタイミングで吐かせることができるのが最大の特徴かな。石や氷のような物理魔法は吸収できないので注意がいる」
俺の説明に頷いてはいるが実際使ってみないと分からないだろうな……。
「【魔切般若】は魔法を含めた全てを切る。全属性の魔法を切り裂くから上手く扱えば無敵だぞ。最大の特徴は結界まで切れるという事だ。シールドを張られてもこれで切り裂ける。こちらは物理魔法でもなんでも切り裂けるから、使い勝手がいいはずだ」
「ん、どっちも凄い! これ2本とも貰っていいの?」
「勿論だ。サリエは二刀流だしね。握りもサリエに合わせて以前のモノより少しだけ細くしてある。それと、どちらも少しだけ刀身を前回より更に長くしてあるので、慣れるまでは間合いに注意するんだよ。詳細はこんな感じだ」
【魔食夜叉】(ミスリル70%・ブラックメタル25%・鋼5%)
武器特性
・火・水・風・雷の魔法を剣で受けることにより吸収できる
・吸収した魔法は任意のタイミングで吐き出させることができる
付加エンチャント
・魔法吸収
・吸収反射
・刀身強化
・重量半減
・個人認証
【魔切般若】(ブラックメタル90%・ミスリル鋼5%・鋼5%)
武器特性
・魔法を含めた全てを切断できる
・結界を切る事が出来る
付加エンチャント
・魔法切断
・結界切断
・接触切断
・重量半減
・個人認証
サリエが使用できるように、血を紋章に垂らして個人認証を行う。こんなヤバいモノが、悪人の手に渡ったら大惨事になってしまう。個人認証機能を付与して、サリエしか使えないようにしたのだ。
サリエは刀を抜いて一言つぶやいた。
「ん、凄く綺麗……」
「サリエ、普通の刃物は押すか引くかしなきゃ切れないけど、この【魔切般若】は魔刀なので刃先に触れたモノを全て除去してしまう仕様になっている。切るというより除去なんだ。刃先がとても薄いので結果だけ見れば切断と同じように見えるけどね」
俺はインベントリから、オーク退治の時に得た鉄の剣を取り出す。
「よく見ていてね、切るんじゃないからこんなこともできる」
剣を地面に刺し、力を全く入れず刀を横薙ぎにして、上から剣を薄くスライスしていく。普通なら、刺した剣が弾かれて倒れるだろうが、倒れる事もなく、金属がキュウリのように簡単にスライスされていくのだ。
「ん、凄い! リューク様、私も切りたい!」
サリエは凄いと騒ぎながら、剣をスライスして喜んでいる。
「どう? 俺の誕生プレゼント、気に入ってくれた? ミスリルの皮膚の銀竜もこれで輪切りにできるよ」
「ん、銀竜は私がこのカタナで倒す! リューク様、凄く嬉しい! 素敵なプレゼントありがとう♡」
サリエは疲れて座っていた俺に抱き着いて来て、ほっぺにキスしてお礼を言ってきた。
なんんて可愛い奴なんだ!
さて、お風呂で汗を流しますかね……。
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はい、ごめんなさいw加筆修正していますが武器はある程度コピペです。
私の他作も読んでくださってる方はまたかよ!と思わないでお許しくださいw
だってあの武器良い武器なんだもん!
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