1-10 オークのコロニーを1つ潰しました
サリエと離れたところから巣の方を窺っているのだが、どれがプリーストなのかが判らない。巣は崖の下を10mほど掘って雨風を凌げるようにした簡易なものだが、結構な大きさがある。どうも弓兵もいるようだ。飛び道具は厄介なので先に潰す必要がある。
失敗したな……先に【周辺探索】と連携できている【詳細鑑定】のレベルを上げておくんだった。そうすればどいつがプリーストかアーチャーか判別できたのに。APポイントがもうないので振ることができない。
安全を考えて出直すかな……。
『……仕方ないですね。今回は補助してあげます。MAPに★でマーキングした2頭がプリーストです。そして☆でマーキングした奴がアーチャーです』
『ありがとう! 助かる』
「サリエ、今から秘密を1つ教えるけど、これも内緒だよ」
「ん、他言無用!」
俺は【ウィンダラカッター】を【多重詠唱】で10個発動した。
レベル1の【多重詠唱】は10個までが限界のようだが、総MP量が少ないのでこのぐらいで丁度いい。レベル10にすれば最大で100個まで同時発動できることになるが、正直これはかなりやばい。MP総量が増え、高レベルの範囲魔法100個とか放てるようになれば一撃で町が亡ぶだろう。
放つ前の濃密な空気の塊が俺の周りをゆっくり10個回っている。
我ながらこの魔法は超カッコいい!
「ん! 【多重詠唱】! しかも10個も!」
「そうだよ。こいつでプリーストとアーチャーを先に倒すからその後にサリエは攻撃に参加してくれればいい。まだ種族レベルが低いのでMP量があまりないからそんなに連弾できないんだ。僕も遠距離系がいなくなったら剣で参加するので、それまでサリエはここで僕の護衛ね」
「ん、分かった。近づいてきた敵は私が倒す」
「いや、少しは僕にも残しておいてね。全部倒されたら僕の練習にならないから」
タブレット表示を網膜上表示に切り替えておく。薄っすらと半透明なMAPを右上に表示させて2頭いるプリーストに、念のため5発ずつ放つことにする。
「じゃあ始めるね」
【ウィンダラカッター】2発でプリーストの首が落ちた。余った6発は2発づつアーチャーに放ち、順次首が落ちていく。撃って減った分は順次追加発動しているので俺の周りには常に10個の魔法が俺を中心にゆっくり衛星軌道のように周回している。
アーチャーがいなくなった時点で、サリエにGOを掛ける。
上位種のオークは2発撃たないと首を落とせないが、普通のオークは1発で倒せた。上位種の方も1発放ってほっておけば出血死で倒せるのだろうが、万が一もあり得るので、確実に2発撃って屠っておく。
俺のMPが100を切った時点で魔法は控えるようにした。残りは剣で順次倒していく。
「サリエ、大丈夫か?」
「ん、問題ない。思ったより余裕! リューク様との戦闘すごく楽しい♪」
なんかサリエは楽しむ余裕がありそうだ。俺の方は雌を庇ってる奴を見てしまってからどうも気分が乗らない。
いくら魔獣といえど、こちらが悪にしか思えないのだ。
『……マスター、今、別の場所でリアルタイムに起こってる映像をお見せします』
そう言って、ナビーは俺の網膜上にオークに襲われている3名の女性の映像を映し出した。
『なっ! なんだよこれ!』
13歳ぐらいの少女と、20歳ぐらいの女性、40歳ほどの女性がオークに強姦されている映像だ。
周りには殺されて生で食われている男たちが映っている。
『……ここから830km離れた街道で起こっていることです。オークは人を襲います。マスターがオークとして転生されたのなら人が敵でしょうが、人として転生したのならオークは敵なのです。平和ボケした日本人的な感情は危険です。命を落とすことになりますよ』
『この女性たちはどうなる? 1人はまだ子供じゃないか……』
『……ここのようなコロニーに持ち帰られ、子供ができるまで犯され続けます。産床にされ、死ぬまで出産を義務付けられるのです。身籠ればお腹の子のために大事にされますが、地獄のような生活でしょう……』
「ん? リューク様大丈夫!?」
「悪い、大丈夫だ」
クソッ! ナビーの奴、胸糞の悪くなるようなもの見せやがって!
『……申し訳ありません。マスターが戦闘中に持ってはならない感情を懐いていたので、迷いましたが介入させていただきました』
『言っていることは理解できるが、俺はあと数日で元の世界に帰るんだ。こんなトラウマになるようなモノ見たくなかったよ。帰ってからもさっきの3人のことがずっと気になるだろ!』
『……そうですね。配慮が足りませんでした。申し訳ありません』
『俺の身の危険を案じてくれてたのは理解しているつもりだ。だが、さっきのはやりすぎだ……大体戦闘中に視界を塞いでまで見せるなよ……それこそ危険だろうが』
それから10分ほどして全部狩り終えた。
「ん、リューク様、戦闘中に急に動きが鈍った……どうしたの?」
俺は巣から少し離れた場所に行き、胡坐をかいて地面に座ってサリエを後ろから抱っこしてクンクンと匂いを嗅いだ。
「ん、どうしたの?」
「サリエは本当に良い匂いがして癒されるな~……実はさっき戦闘中に雌を庇った雄がいたんだ。雌に庇われた少し小さめのゴブリンもいた。たぶん子供だろう……それを見たら自分たちの方が悪者な気がしてしまったんだ」
「ん、オークは人を襲って食べるから殺さないとダメ」
「分かってる。それに女の敵だしな。ほっておくとサリエが孕まされちゃうもんな」
「ん……私は食べられるだけ……」
「サリエは可愛いから、犯されちゃうよ」
「ん、オークに美的センスはない。ただ健康で子を産めるかどうかだけ。私はまだあれがないから……子供を産めない女子は食肉になるだけ」
『あれがない』とは生理のことかな……見た目通り、まだ肉体的には幼いのか。
「サリエがちっちゃいのは種族の特性だけじゃなくて、成長が遅いことも関係あるんだね」
「ん、診療所で診てもらったけど原因不明」
「あまり気にしても仕方がないしな。サリエがちっちゃいからこうやって抱っこもできるし、僕にとっては新たな癒しを発見した気分だ」
「ん、子ども扱いなのは不満だけど、リューク様は良い匂いなので抱っこするのは別にいい。私もリューク様に抱っこされると、何故か凄く落ち着く……」
「あはは、落ち着きすぎて眠くなる前に後片付けをしようか。サリエは兎の解体とかできる?」
「ん、兎だけじゃなくてオークも解体できる。何度も練習したので、買取査定でも上質評価がもらえるほどの腕前」
「じゃあ、今晩の夕飯のために兎の解体をしてもらえるか? 時間もまだ2時過ぎだし、解体する時間はたっぷりあるからね」
「ん、血抜きに時間がかかるから、その間に死体を纏めるといい」
サリエはロープを出して兎の足を括り付け、逆さにして近くの木に吊るした。
首と足の大きな血管を切って30分ほど吊るせば血抜きができるそうだ。これを怠ると血が肉に回って臭みが残り、美味しくない。
先に狩ったオークも血抜きだけはしておきたいとサリエが言うので、一緒に周辺の木に45頭が逆さに吊るされている。とてもシュールな光景だ。
サリエはオークも解体する気のようだったが、量も多いしギルドに報告もかねて解体依頼を出すことにした。
サリエが言うにはナイトやプリーストの肉は凄く美味しいのだそうだ。
ゴブリンとコボルドは首を刎ねたら放置だ。疫病のことを考えれば、本当は焼却処分にする方がいいのだが、俺もサリエも高威力の火魔法が使えないのだ。サリエは生活魔法のファイアは使えるそうだが、着火ぐらいにしか威力はない。
40分程放置して血抜きができたようだ。
血抜きが済んだオークは全て【インベントリ】に入れた。
念のためサリエの限界容量の16頭を渡し、残りは俺が持つ。あまり容量無制限なのを今は知られたくないのだ。利用しようとよからぬ考えで近づいてくる輩もでてくるからだ。公にするには誰が言いがかりをつけてきても跳ね返せるだけの実力がいる。
保管したオークは、帰りに冒険者ギルドに行き、併設されている解体所に解体依頼をだす。
サリエが兎を解体してくれている間に、俺は少しスキルの整理をすることにした。
【クリスタルプレート】を見て驚いた。種族レベルが8も上がっていたのもそうだが、AP量が凄いことになっている。
『どういうことだ?』
『……まずマスターの種族レベル8レベル分が792ポイント。オークが平均1頭当たり48ポイントで、30頭で1440ポイント。ゴブリンとコボルドが1頭当たり18ポイントで66頭いたので1188ポイント、合計3420ポイントです』
『本来なら396ポイントしか入らなかったはずだよな? いいのかこれ……このポイント使ったら確実にヤバいことになるぞ……』
『……ナビー的にはダメだと思うのですが。ユグドラシルの使用禁止がでていないので良いのではないですか?』
『いいなら好きにやらせてもらおうかな……3420ポイントもあれば【剣神】カンストも可能だよね』
『……種族レベルを50以上にすれば可能ですね』
今回新たに奪ったスキルも結構あった。特に生活魔法の【ライト】と【クリーン】はありがたい。
・【ファイアボール】レベル3
・【ファイアスピア】レベル2
・【ファイアウォール】レベル2
・【サンダーボール】レベル5
・【サンダースピア】レベル4
・【ライト】 :聖属性の光魔法、周囲を明るくできる生活魔法
・【クリーン】 :聖属性の浄化魔法
・【弓術】レベル5
APも余ってるので新たに魔法を創っておく。
サリエに関して気になることがあるので、ちょっと体を調べる魔法を考えてみた。
【魔法創造】
1、【魔力操作】
2、・体の魔力の流れを操作できるようになる
・魔力の流を良くし疲労回復や傷の直りを早くすることができる
・魔力の流を良くしHP・MP回復を早くすることができる
3、イメージ
4、【魔法創造】発動
【魔法創造】
1、【ボディースキャン】
2、・体をスキャニングし異常個所を詳細に分析する事ができる
・魔力の流れをより詳細に見れるようになる【魔力感知】のレベルが反映される
・スキャニングした詳細はタブレットや網膜上に表示できる
・表示はスキャン対象の人型模型に色別で表示され横に異常状態や病名が注釈される
・赤色:生命に危険水準、すぐに対処が必要なレベル
・黄色:何らかの状態異常中、対処が必要なレベル
・桃色:何らかの状態異常中、危険はないが注意は必要なレベル
・黒色:魔力の流れが滞亭っている箇所
3、イメージ
4、【魔法創造】発動
【魔法創造】
1、【アクアフロー】
2、・体の魔力の流れを操作し、滞りのある場所の流れを良くする
・魔力の流を良くし疲労回復や傷の直りを早くすることができる
・魔力の流を良くしHP・MP回復を早くすることができる
・ヒール魔法を魔力の流れに練り込み体に浸透させることができる
・痛みを軽減しリラックス効果を与える
3、イメージ
4、【魔法創造】発動
【魔法創造】
1、【細胞治療】
2、・【アクアフロー】使用時に併用する事によって細胞レベルでの治癒ができる
・欠損した遺伝子の再構築、新たな神経細胞の再構築が可能
・不足分の医学知識はユグドラシル経由から自動補完する
3、イメージ
4、【魔法創造】発動
生まれつき足の悪い妹のナナや、子供ができないことを気に病んでいる第二夫人のセシア母さんに使ってみるのも有りかもしれない。
セシア母様は最近体調もかなり悪そうだし、早めに一度診てあげよう。
ラエルや暗殺者を捕らえた時用に拘束魔法も考えた。
【魔法創造】
1、【魔糸】
2、・魔力で創りだした魔法糸、魔力で操作できる
・この糸に捕まると本来の力の1/10になる
・MPドレイン効果があり、拘束された者はスキルが発動できなくなる
・効果は俺が糸を持っている時のみ発揮される
・糸の発動時間は込めた魔力量に比例する
3、イメージ
4、【魔法創造】発動
【魔法創造】
1、【魔枷】
2、・魔力で創った枷で拘束できる
・枷に拘束された者は魔力を散らされ、スキルが発動できなくなる
・枷で捕まると本来の力の1/10になる
・枷の発動時間は込めた魔力量に比例する
3、イメージ
4、【魔法創造】発動
【魔法創造】
1、【テレポ】
2、・マーキングしたポイントに空間移動で一瞬で行ける
・移動する距離に応じて消費MPが増える
3、イメージ
4、【魔法創造】発動
APも大量消費して現在の俺のステータスはこんな感じになっている。
レベルが20を超えたので、1st職業を選べるようになったのだが、神殿に行く必要があるそうだ。
【リューク・B・フォレスト】
HP:2286
MP:2678
レベル:21
種族:人族
性別:男
年齢:15
職業:・・・・
攻撃力:2331
防御力:1987
敏捷力:1822
知力:2396
精神力:1320
運:1476
魅力:1021
SP:0
AP:1013
《スキル》
中級魔法
火属性:【ファイアラボール】Lv10【ファイアラスピア】Lv10
【ファイアラウォール】Lv10
水属性:【アクアラボール】Lv10【アクアラウォール】Lv10
【アクアラスピア】Lv10【アクアラカッター】Lv10
【アクアラヒール】Lv10【アクアラキュアー】Lv10
風属性:【ウィンダラボール】Lv10【ウィンダラウォール】Lv10
【ウィンダラスピア】Lv10【ウィンダラカッター】Lv10
雷属性:【サンダラボール】Lv10【サンダラスピア】Lv10
初級魔法
火属性:【ファイアボール】Lv10【ファイアスピア】Lv10
【ファイアウォール】Lv10
水属性:【アクアボール】Lv10【アクアウォール】Lv10
【アクアスピア】Lv10【アクアカッター】Lv10
【アクアヒール】Lv10【アクアキュアー】Lv10
【アクアシールド】Lv10
風属性:【ウィンドボール】Lv10【ウィンドウォール】Lv10
【ウィンドスピア】Lv10【ウィンドカッター】Lv10
【ウィンドシールド】Lv10
雷属性:【サンダーボール】Lv10【サンダースピア】Lv10
生活魔法:【ファイア】【アクア】【ウィンド】【サンダー】
【ライト】【クリーン】
《オリジナル魔法》
特殊支援系
【インベントリ】【ナビシステム】【カスタマイズ】【殺生強奪】
【無詠唱】【自動拾得】【ホーミング】【オートリバフ】
【ボディースキャン】【アクアフロー】【細胞治療】【テレポ】
【並列思考】Lv5【多重詠唱】Lv5【高速思考】Lv5
【獲得経験値増量】Lv10【獲得AP増量】Lv10
【獲得HP増量】Lv10【獲得MP増量】Lv10
【周辺探索】Lv10【詳細鑑定】Lv10【嗅覚鑑定】Lv10
【マジックシールド】Lv10【プロテス】Lv10【シェル】Lv10
【魔法消費量軽減】Lv10
戦闘支援系
【隠密】Lv10
【気配察知】Lv10
【魔力感知】Lv10
【嗅覚強化】Lv5
【聴覚強化】Lv5
【忍足】Lv10
【身体強化】Lv10
【俊足】Lv10
【魔力操作】Lv10
戦技系
【剣聖】Lv10
【槍聖】Lv10
【棒聖】Lv10
【弓士】Lv10
火魔法の範囲魔法が手に入ったので、念のために死体は焼いておくか。
一旦死体を【インベントリ】に全部放り込み、火災が起きないような場所で放出して中級範囲魔法の【ファイアラウォール】で焼き尽くした。スキル発動4回ほどで骨だけ残して全部焼けた。これで疫病などの心配もなくなる。
現在15:40分、ギルドに寄って解体依頼を出してから帰宅すればシェフにも肉を約束時間までに渡せるはずだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます