3-6 休日に雑務を済ませることにしました
家族がセシル母さんの懐妊に喜んでいるのを眺めながらほっこりした気分に浸る。
龍馬としては他人なのだが、やはり記憶に影響されるのだろう。
見ているだけで幸せを感じる。この温かい喜びの感情は実の家族に向けるものと同等だと思う。
幸せそうに笑いあう家族を見ながら、もう変に頭で考えて拘るのはやめようと思った。
リューク君の記憶の影響によるものだとしても、やはり家族と思えるのだから大事にすれば良いのだ。リューク君が俺の娘や両親にしてくれたように、俺も同じ気持ちなのだから家族として接すれば良いと、この時心からそう思えた。
昔から可愛がってくれたカイン兄様には特に強い思い入れがある。
「兄様、ちょっと良いですか?」
「ん? なんだい?」
「兄様、今日はここで泊まって行くの? 僕たち、明日フォレストに行くんだけど、もし馬とか荷物を他の騎士たちがフォレストまで連れてってくれるなら、兄様も一緒に転移すればと思って」
「リュークに便乗したら2日短縮できるってことか。でも止めておくよ。一応俺も戦力として人数に入っているからね。オークの群れ程度ではうちの騎士なら余裕だけど、もし30人規模の盗賊に襲われたら流石にきついと思う。多分大丈夫だろうけど、何かあった時に後悔したくないしね」
「それもそうだね。兄様、ちょっと2人で話があるんだけど良いかな?」
「あらたまってどうした?」
「なんだ? リュークはまた私を除け者にするのか?」
「父様はダメです。兄様だけです」
部屋を移動し兄様と2人きりになり【音波遮断】の魔法を掛ける。
「兄様、僕が色々内緒のスキルを持っているのは知ってますよね?」
「ああ、女神様に口止めされて秘密なのだろ?」
「実はそれ嘘です。色々ヤバいのでそういうことにしているのです」
「アリア様の名を使って嘘を付いたのか! そっちの方がヤバいだろうが!」
「それについては大丈夫です。で、何がヤバいって僕のスキル、全部ではないのですが、いくつかコピーできるのです。今回兄様にいくつかあげようと思います」
「ん? スキルをあげる?」
「そうです。コピーできるのです。説明するより実際にやった方が解ると思います」
兄様にパーティー申請をだし。【コネクト】で繋ぎ【スキルコピー】と【カスタマイズ】で兄さんのステータスを弄る。
今回兄様に譲渡したのは、【無詠唱】【インベントリ】【ホーミング】【プロテス】【シェル】【マジックシールド】【サンダラボール】【アクアラヒール】【アクアラキュアー】【魔法消費量軽減】【オートリバフ】だ。
「リューク! どういうことだ! これ本当にヤバいぞ!」
「はい。ヤバいです。他の人に知れたら大騒ぎですね。だからこのことは秘密にしてください。兄様に渡したスキルは5人までしか譲渡できない物もあります。なので、場合によっては返還を求めることもあるのですがそれは理解してくださいね? それと僕が死ねば、多分渡したレアスキルは失われてしまいます」
「失われるとはどういうことだ?」
「本来使徒のパーティーメンバーにあげるためのものだと思われます。だから譲渡できるのは5人までとかの制限があるのでしょう。だから将来兄様が僕のパーティーに入れるかどうか分からないので最悪返してもらう場合もあるってことです。特に【無詠唱】と【インベントリ】【マジックシールド】は人に知られるとヤバいですからね。兄様のはこれでも僕の劣化版で、シールドは3000までダメージ吸収するようです。中級回復と中級の解毒も与えておきますので即死しない限りはこれで大丈夫でしょう。でも、あまりおおっぴらに使うのは控えてくださいね。急に使えるようになったとか不自然ですからね。それと【インベントリ】は【亜空間倉庫】のことで、これも僕の劣化版で容量は5tまで収納可能で、時間停止機能付きなので入れた時のまま保存可能ですので、これも重宝されると思います。これは隠すより使った方が良いでしょうから、急に使えるようになった言い訳は自分で考えてくださいね。くれぐれも僕にもらったとバラすのはなしですからね」
サリエより劣化版なのは、神の加護や祝福の違いかな?
魔法適正より騎士向きな兄様だし、魔力量などの関係もあるのかもしれない。
「凄いな! リューク、本当にこれもらっていいのか? 【身体強化】や【隠密】【忍足】【気配察知】【魔力感知】のレベルまで10に上がってるぞ!」
「兄様なら悪用しないでしょうし、信用していますからね」
「ありがとう、リューク。兄弟でも、ここまで信用してくれていると思うと嬉しいよ。でも父様にはあげないのか?」
「父様は信用はしていますが国の人です。国の為なら僕でも殺せる人です。使徒のパーティーには成れない方ですからね……使徒とは国益より世界の為に動かないとダメなのです。兄様なら国益より家族を選ぶでしょう?」
「父さんだって、国より家族を選ぶと思うぞ?」
「そうかもしれないですが、コピー数に制限がありますからね。領主の父様ではパーティーメンバーには成れないです。兄様にスキルをあげた理由は、有事の際にそれを使って家族を守ってほしいからです」
「なるほど……有難く使わせてもらうよ。基本使わないようにして秘密にしておけばいいのかな?」
「いえいえ、使ってください! 使わないとか意味がありません! 要は使った上で、どうやってとぼけてごまかすかです。中級回復でも使える人が1人増えるだけでパーティーが凄く安定しますからね。使わないのは勿体ないです。回復剤の消費量を抑えられますのでお金も節約できます。【インベントリ】が経年劣化を防いでくれるので、うまく使いこなせば、特に食事面で快適に野営やダンジョン攻略もできると思いますよ。なのでどんどん使ってください。但し僕の名は絶対出さないように。特に国王に知れたら、戦争とかに利用される可能性がありますからね。教会関係も注意が要りますかね」
「そうだな。この【亜空間倉庫】だけで、食料調達の人員も要らなくなる。しかも腐らないので相手が籠城してもこっちは余裕で補給しなくても相手ができる。流石に甥っ子に無理難題は言わないだろうが、国王様は国益重視に考えるお方だからな、隠しておく方が無難だ」
その後、兄様にスキルの使い方と有効な活用法を教えてあげた。
兄様は明日の朝、俺たちがフォレストに行く時に一緒にザイルの村に転移することになった。
俺たちはミリム母さんの実家で夕飯をごちそうになり学園に馬車で送ってもらう。勿論ロッテ先生も一緒にだ。
フィリアだけ留守番になっていたため、夕飯が別になってしまったが今日はしょうがない。コールを入れフィリア1人で食べてもらった。
先生に何度もお礼を言われ、学園の門で解散になった。
現在寮の自室でサリエと紅茶を飲んでまったりしている。
「ん、急展開にビックリ」
「俺もびっくりだよ。まさか先生の棘のある発言は、父様が原因とは思わなかったよね」
「ん、でも先生嬉しそうだった」
「そうだね、20年も想い続けてたとか、凄いよね。俺が母様に似てるから、視界に入る度にイラッとしてたんだろうね」
「ん、リューク様、お風呂入る?」
「勿論入るよ? お風呂は好きだからね。サリエも一緒に入ろうね?」
「ん、恥ずかしいけど。婚約してくれたから一緒に入る」
ふふふ、以前と違ってすんなり了承を得ることができた。これで裏切ったらマジで殺されそうだが、可愛いサリエとのお風呂は欠かせない。
俺は容姿も重要視するが、サリエに関しては内面の可愛さが好きなのだ。
翌朝兄さんの送迎もあるので、結構早めに皆と出立した。
先に兄さんをザイルの村に送ってから、俺たちはフォレストで買い物をする。
「じゃあここで一旦別れよう。僕は1人で椅子とテーブルを買ってくる。フィリアたちは食器や雑貨品を頼むね。食料品も良いのがあったら買っておいてほしい。サリエの【亜空間倉庫】に入れておけば傷まないからね。サリエは皆の護衛を頼むね」
「ん、本当はリューク様の護衛をしたいけど、今回は頼まれた」
「夕刻5時に教会集合にしようか? マーレル姉妹は早く用が終われば実家に行ってきてもいいからね」
「お気遣いありがとうございます。ですがまだそれほどの期間開いていないので平気です」
「はい、むしろこんな短期間に帰ったら怒られちゃいますし、どうやって帰ってきたとか聞かれてもいい訳が面倒ですので……」
「ああ、そうか。僕の【テレポ】でって言えないしね。皆にお小遣いをあげよう、好きなものを買うといい」
「「「リューク様、ありがとうございます!」」」
「ん、ありがとう。串焼き食べる」
金貨1枚づつ握らせてあげた。価値でいえば1万円相当の額になる。皆貴族なのでお金には困っていないだろうが、買い食いしたり服を買ったりするといいだろう。
俺は家具屋を回り3件目で良い物を見つけ金貨40枚で購入した。
イスとテーブルを2セットで40万円ほどだ。
ゆったり大きめの10人掛けの物を2セット購入したのだ、通常時は1セット分出しておけばいい。
人を招待した場合に同じものだからくっつければ18人が座れるので良いと思う。
同じ巨木から作った一枚板の重量感のあるテーブルだ。
椅子もテーブルに合わせて結構しっかりとした重量感のあるものに仕上がっていて気に入った。
そうそうにテーブルが見つかったため、俺は王都で開く店舗用の材料を買い集める。この分の購入額はしっかりメモしておいて、後でサーシャに請求する。商売に関してはしっかり公私のけじめがいると思っているからだ。
バニラエッセンスを自作するのは簡単だ。バニラビーンズを酒に漬け込むだけでできあがるのだ。実に簡単なのに、この世界にはない。酒はすぐ見つかったのだが、なかなかバニラビーンズが発見できなかった。どこにあったかというと、薬師ギルドに置いてあった。甘い香りがするので、リラックス効果のある香として売っていたのだ。
酒は2種類使ってみる。ウォッカのようなやつとラム酒っぽいものがあったので、それに漬け込んだ。1カ月ほど漬け込めば完成だ。ちょっと時間がかかるので後で熟成用のスキルを考えることにする。
卵や牛乳も鑑定魔法で鮮度の良いものがあれば即時購入する。意外にもバターは結構良い品があった。チーズも数種類美味しい物を買えた。とろけるチーズもあり、匂いや香りも良いのでピザとか作ってもいいかもしれない。
各種季節の果物も大量買いだ。
これには嗅覚鑑定が役立った。匂いを嗅いだだけで糖度が判るのだ。ちょっとずるいが甘いものだけ選んで買えた。
みかんがないのが残念だったがあれは冬かな? 代わりにグレープフルーツやオレンジのような物が手に入った。イチゴにメロンにさくらんぼ、バナナも手に入ったので、デザートは完璧だ。できるだけこの時期に買えるものは買っておく。ハウス栽培とかないから、旬の季節が過ぎれば買えないからだ。ソシリアにもあのマンゴーに似たフルーツを買いに行った。季節外に出回るフルーツはダンジョン産の物なので少し高い。
ついでにソシリアの宿屋に居るサーシャたちにも会ってきた。サーシャの母親のファリエルさんもすっかり元気になっていてめちゃくちゃ可愛くなっていた。今回は、顔見せ程度で直ぐに帰ってきたが、ちゃんと話し合って構想はしているようだ。紙に何枚か各自で店のイメージを絵に描いて俺に見せてきた。
年の功と言うのか、ファリエルさんの書いたものが一番可愛くて、配置なども使い勝手がよさそうなものを描いていた。ミーニャのはさっぱり分からないものだったが、コロンのは喫茶店風の感じで割とちゃんと描けていた。まぁ実際店舗を見てからじゃないと詳しくはできないのだけどね。
イメージさせて期待感を持たせるのは、ちょっと心に傷を持つ彼女たちにはよいケアになると思ってやらせているのだ。
ソシリアの村で彼女たちと話していたら、サリエからコールがかかった。
「サリエどうした? 何かあったか?」
「ん! リューク様の反応が地図から消えた……私のいない間に今どこにいるのかな?」
あちゃー、サリエの奴、変に誤解しているな。
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