1-8 侍女のサリエは凄くいい匂いがします(サリエちゃん大改稿)

 人型であるオークがスキルをたくさん所持しているということで、オーク中心に狩ることにした。

 現在サリエと移動中だ。


「ん、次の場所までどのくらい?」

「ここから2kmほどの所にオークが6頭いる、ゴブリンも10頭ほどいるけど問題ないだろう」


「ん、そのくらいの数なら問題ない。でも、リューク様の探索スキルは本当に凄い」

「あはは、話は変わるんだけど、オークを見ていたら個人香って言葉を思い出したんだけど、これってどんなものだっけ? ちょと記憶が曖昧でいまいち思い出せないんだよね。人それぞれ匂いが違うってのは思い出したんだけど、他にもなんかあったよね?」


「ん、心の綺麗な人ほど良い匂いがするの。その人の得意属性にも影響される。あとパッシブ特性が付与される匂いを持ってる人もいる」


「パッシブ特性ってなに?」

「ん、リラックス効果があったり、精神安定効果、睡眠導入効果、力上昇、集中力が高まったりするものもあるらしい」


「へー、それは良いね。僕はどんな匂いがするのかな」


 自分の匂いを嗅いでみるがさっぱり分からない。


「ん、普通自分の匂いは分からない」

「サリエのはパッシブ効果がある匂いとかかな?」


「ん、調べたことないから知らない」

「普通はそういうの調べたりしないの?」


「ん、調べられるスキル持ちの人が少ないから、あまり調べることはない」 


「そっか。自分の匂いって人からどう思われているか、凄く気になるよね……」

「ん! じゃあ私が匂いを嗅いでどんなのか教えてあげる!」


 頼んでないのに、サリエは俺の匂いを嗅ぎにきた。何故だか嬉しそうにしている?


「ん! 凄く良い匂いがする! エヘヘ、やっぱり思った通りリューク様は良い匂い!」


 俺の匂いが凄く良い匂いで嬉しそうにしている。何故かなと思っていたらナビーが教えてくれた。


『……個人香の特性で、「良い匂い=良い人」だからでしょう。サリエ的にマスターは昔と変わらず良い人なのがとても嬉しかったようですね』


「サリエの匂いはどんなの?」

「ん、知らない」


「確認して良いかな?」

「ん~~、じゃあお願いする……」


 年頃の女の子なら嗅いだり嗅がせたりは嫌がりそうなものなのに……良いんだ。


『……マスター! 耳長族のエルフやホビットは、その特徴的な長い耳から香り成分を放出する特性を持っています』

『耳! 了解した!』


 少し屈んで、サリエの長い耳をクンクンした。

 そういえば、以前読んだラノベに、エルフの耳はほんのり甘いと書いていた……本当だろうか?


 クンクン……アムッ!


「んみゃ~! やあん! 耳、舐めちゃダメ!」

「凄く良い匂いがする! なんだこれ⁉ それに耳、ほのかに甘い!」

「ん……もう……私、臭くなかった?」


 どうやら耳長族の耳は、お約束的に性感帯の1つで凄く敏感なようだ。

 サリエは耳を真っ赤にさせて感想を聞いてきた。


「全然臭くないよ! むしろ爽やかな香りだよ! 良い匂いだ!」

「ん、汗臭くなくて良かった」



 ものは試しと、サリエに【嗅覚鑑定】を使ってみた。

 ・樹脂系ティートリーの香り。フレッシュで清潔な感じの、やや鋭い匂い

 ・健康状態は倦怠感(小)

 ・リラックス効果

 ・疲労回復効果

 ・睡眠導入効果


「サリエの個人香には、リラックス効果・疲労回復効果・睡眠導入効果があるみたいだよ。それと、サリエ、疲れが少し溜まってない?」


「ん? リューク様は匂いの鑑定ができるの?」

「これもまだ秘密にしてほしいけど【嗅覚鑑定】ってスキルを持っている。このスキルはまだレベル3だから詳しくは分からないけど、サリエから倦怠感を感じる成分が検出されたんだ」


「ん、自分じゃいつも通りなので、分からない」


『ナビー、何か判るか?』

『……はい、どうやらサリエは自分の高い魔素を上手く体内で循環させることがまだできていないようですね。魔法科に通えばそういう訓練も行いますので解消されると思います』


「どうも、サリエは魔素の体内循環が上手くできていないようだね。そういう訓練はしなかったの?」


「ん、私を育ててくれた養父は凄い剣士なの。魔法の方は少ししか習ってないの」

「そか、魔法科に通えばそういう練習もするみたいだから、倦怠感は解消されると思うよ」


 ちなみにサリエの養父はカイン兄様や俺の剣術の師匠でもあり、フォレスト領の騎士に剣術指導している凄い人だ。どうやらこれまで師匠はサリエのことを俺たちには秘密にしていたようだ。さっきサリエに教えてもらうまで知らなかった。従者候補のことは選ばれるまで秘密なのが規則なのだそうだ。


「ん、自分が怠いの今までずっと気が付かなかった」

「生まれつきずっとだったら、それが普通だと思うよね……」


 サリエは俺の匂いが気に入ったのか、何度もクンクンと匂いを嗅いでいる。


「ん! 凄く良い匂い! アクアマリンの匂い? 水系の人に多い匂い。ずっと嗅いでいたい……」



 自分の匂いは分からないが【嗅覚鑑定】はできるみたいなので調べてみた。

 ・特殊ハーブ系アクアマリンの香り

 ・スカッと爽やかな、正に海風のような透明感のある香り。健康状態は良好

 ・リラックス効果

 ・疲労回復効果

 ・睡眠導入効果

 ・HP、MP回復量上昇効果


「自分にも【嗅覚鑑定】できるみたいだ。俺にもリラックス効果・疲労回復効果・睡眠導入効果・HP、MP回復量上昇効果があるみたいだね」


「ん! 凄い! バッシブ効果持ちは20人に1人ぐらいって聞く。しかも普通は1つあればいい方」


「じゃあ、3つあるサリエも凄いんだね」

「ん、嬉しいけど、あまり他の人に匂いを嗅がれるのは嫌だから、意味ないかも」


「確かにそれはあるかも……自分の匂いを嗅がれるのって抵抗あるよね」

「ん、でもリューク様は良い匂い。ちょっとクセになりそう……クンクン」


 サリエはそう言って、また俺の匂いを嗅いできた。


「もうすぐ着くよ、あっという間に着いちゃったね」


 個人香を確認しようとじゃれあっているうちに到着したみたいだ。


「ん、作戦は?」

「基本オークはサリエに任すけど、近くにいる奴から手当たり次第に狩っていいよ」


「ん、分かった」



 目視できる距離、オークから30m程離れたところで隠れて待機している。


「またオークナイトが1頭いるようだけど、それ以外は普通のオークのようだし、魔法持ちも弓兵もいないから、サリエは向かって右側から、僕は左側から順次狩るとしようか」


「ん! オークナイトはどれ?」

「一番右側の先頭を歩いてる奴がそうだよ。鋼の剣を持ってるみたいだから気を付けてね」


「ん、問題ない!」

「じゃあ、僕が一番後ろのゴブリンに水魔法を放つからそれを開始の合図にしようか」


 ゴブリン10・オーク6頭の群れだったが1分ほどで倒し終えた。

 まぁ、16頭のうち12頭狩ったのはサリエなんだけどね……。


「ん、剥ぎ取り解体はどうするの?」

「血抜きとかの心配をしているのかな? 肉はどんなものでも血抜きしないと美味しくないからね」


「ん、血抜き作業は結構時間かかるし、オーク8頭も入れたら亜空間倉庫そろそろ一杯? 私も15頭ぐらいなら入れられるよ?」

「あ、言ってなかったね。これも秘密だけど、僕の空間倉庫は重量制限無いんだ。数量と重量無制限だし、時間経過もないから狩ってすぐ入れとけば血が凝固することもない。血抜きも後からで大丈夫だよ。今日一日狩りまくって、帰りにギルドに解体依頼しようか」


「ん……リューク様、水と風系が主系統って聞いてた。亜空間倉庫は闇系、しかも容量無制限とか聞いたことない。それに時間経過のない倉庫持ちは世界でも数えるほどしかいないって教わった」


「嘘は言ってないよ、丁度お昼が近いしゴブリンの魔石の抜き取りだけして昼食にしようか。その時、朝のお弁当が温かいままだから、時間経過については証明できるよ」


「ん、分かった。色々おかしいけど……」

「おかしいとはどういうこと?」


「ん、リューク様のことは事前に詳細な資料をもらって勉強してた。でも会ってみたら色々違ってる。それは凄くおかしいこと……」


 成程ね……公爵家の子息の侍女なのだ。侍女が粗相をしないようにあらかじめ主人になる人物の情報を開示して勉強させるのは当然だ。リューク君の癖や、好きなもの、嫌いなものなどの情報も全てサリエは覚えているのだろう。


「そうだね。特にスキルの情報が違ってるからそう思うんでしょ?」

「ん、リューク様は最初生き返った時に初期化されてスキルもレベルも1になってなくなったって言ってた。でもさっき【アクアボール】を使ってた。【マジックシールド】【プロテス】【シェル】も私のもらった資料に習得しているとは記載されてなかった」


「サリエは僕が女神様から1つ凄いスキルをもらったっていう話は聞いているよね?」

「ん、知ってる。それが関係してるの?」


「そうだね。その特別なスキルのおかげで色々とできるようになっているんだけど、今は秘密かな。サリエが信用に値するって判ったら全て教えてあげてもいいけどね。出会ったばかりの昨日の今日じゃ流石に教えられないよ」


「ん! リューク様の信用を勝ち取るように頑張る!」




 ゴブリンから魔石を取出し、血の匂いがしない所まで移動して昼食にした。


「お! このお弁当美味しい。シェフさん結構気合い入れて作ってくれたみたいだね」

「ん、そのお弁当、私が作ったの」


「エッ! これ、サリエが朝早く起きて作ったの? 凄く美味しいよ!」


 父様は、サリエのことを戦闘以外でも優秀だと言っていたが、料理もめっちゃ上手だ!


「ん、喜んでもらえて嬉しい♪ あ、お口の横に何か付いてる……」


 そういって俺の口元から何か摘まんで自分の口にパクッと入れて食べてしまった。

 何この萌え萌えなサリエちゃん! 可愛過ぎるのですが!


 これぞ異世界ライフ! 魔獣狩りでレベルを上げたり、可愛いメイドさんの手作り弁当!


 アリア様、ありがとう! 異世界体験最高です!



 甘々なお昼ご飯を終えて、次の戦闘前にステータスの確認を行っておく。

 ポイントを寝かしておくのは勿体ないからね。


「サリエ、御馳走様でした。凄く美味しかったよ」

「ん、お粗末様でした」


「またちょっと考え事するけど、気にしないでね」

「ん、分かった」



 今回レベルが3つ上がっている。新たに奪ったスキルも4つある。


 ・【魔力感知】レベル2 :周辺の魔力の気配を察知できる探索系のスキル

 ・【聴覚強化】レベル3 :耳が良くなる

 ・【俊足】レベル2   :足が速くなる

 ・【槍術】レベル4   :槍の扱いが上手くなる


 レベルアップ時の獲得とダブりスキルのAPの還元が8割増しで凄いことになっている。


 【獲得AP増量】Lv8→Lv10

 【獲得HP増量】Lv1→Lv10

 【獲得MP増量】Lv1→Lv10

 【身体強化】Lv1→Lv3



 これでAPは残り5ポイント。ここで少しチートスキルを追加する。



 【魔法創造】

 1、【並列思考】

 2、・思考を並列的に同時に行えるようになる

   ・熟練レベルにより同時思考できる数が増える

 3、イメージ

 4、【魔法創造】発動



 【魔法創造】

 1、【多重詠唱】

 2、・【並列思考】と【無詠唱】を使用する事により多重詠唱が行える

   ・熟練レベルにより多重詠唱できる数が増える

 3、イメージ

 4、【魔法創造】発動



 【魔法創造】

 1、【高速思考】

 2、・思考の高速化により魔法発動や考えが早くなる

   ・熟練レベルにより思考速度が上がる

 3、イメージ

 4、【魔法創造】発動



 【魔法創造】

 1、【ホーミング】

 2、・魔法にホーミング機能を付与する

   ・イメージした部位にピンポイントで当てられるようになる

   ・相手が避けても自動追尾で狙った箇所を当たるまで追いかける

 3、イメージ

 4、【魔法創造】発動



  【魔法創造】

 1、【自動拾得】

 2、・死亡させた魔獣や獣のインベントリ自動格納

   ・ドロップした武器やアイテムのインベントリ自動拾得

   ・魚やエビなどの小さな生物だった場合は食材や素材品のみ自動拾得可能とする

   ・人体は殺しても勝手に拾わない事

   ・歩いてて知らない間に殺した昆虫類も勝手に拾わない事

   ・ON・OFFできる

 3、イメージ

 4、【魔法創造】発動



 これだけあれば最強魔術師になれるだろう。MPが少ない今は、まだこれの熟練度を上げるのは意味がない。

 この後は【獲得経験値増量】のレベルを上げればすぐに種族レベルも18まで回復できるはずだ。



 【気配察知】のおかげか、サリエの視線をよく感じるようになった。前髪で目は隠れているのにちゃんと視線を感じられるのだ。嫌な感じの視線ではないのだが、俺が何しているのかそれとなくチラ見しているのだ。だが、スキルのおかげで俺には全部バレている。


「お待たせサリエ、お昼からもオーク中心に狩ることにしようか」

「ん、了解。上位種のオークナイトは普通のお肉より美味しいから楽しみ」


「そうだっけ?」

「ん、魔石の大きい上位種ほど美味しい。オーク→オークソルジャー→オークナイト→オークジェネラル→オークキングの順番。間にオークプリーストとかオークアーチャー、オーククイーンなんかも入る」


「ソルジャーとばして、ナイトが手に入ったんだね。美味しいといいね。昨日の夕飯で出たのはどれなんだろう?」


「ん、部位は柔らかくて美味しいところだけど多分普通のオークのお肉。でも、ナイトが2匹もいるのはちょっと変」


「確かにナイト2匹は出遭う確率が高すぎるね」


「ん、近くにコロニーができているのかもしれないから、すぐギルドに報告した方がいい。大きなコロニーだったら、領主様の騎士隊も参加して討伐に向かう」


「僕の探索スキルで警戒しながらオーク狩り続行だね。コロニーを見つけられなくても、一応帰りにギルドに報告しておこうか」


「ん、それがいい。用心にこしたことはない」


「次はここから800mほどの距離にいるオーク7、ゴブリン6、コボルド3の混成部隊の所に行こうか」


「ん、コボルドは動きが素早いから注意がいる。オークとゴブリンは足が短いから凄く動きが鈍いので簡単に倒せるけど、コボルドは下半身が犬型だから素早く動ける」


「うん、分かった。シールドが壊されるほどの脅威はないから大丈夫だよ」

「ん、じゃあ次はそこでいい」



 サリエと次の狩場に向かうのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る