3-10 お爺様と一緒に異世界鉄板の玩具を作る事にしました
朝食の間中女性陣の視線はサリエの髪に集まっていた。
ナナやフィリアは艶々の髪を触りたそうにしているが、顔を見せたくないサリエは断固拒否の姿勢た。
ちょっと怯えているサリエは可愛いけど、放っておくのも可哀想なので助けてやるか……。
「そこまで気になるなら、ナナたちにも今晩から使わせてあげるけど、副作用が出ても知らないよ」
「大丈夫ですリューク様! 何かあってもわたくしが神聖魔法で回復致しますわ」
「そうです兄様、フィリアがいるので大丈夫です」
それもそうか。
「じゃあ後で渡すよ、使い方の説明もしないといけないしね」
「「「今すぐ下さい!」」」
エッ~!? ちょっと君たちドン引きです! 目が怖いです!
「はぁ~、じゃあ食べ終えて片付けが終わったらね」
皆碌に咀嚼もしないで速攻で食べていましたよ……。
「サリエが皆と一緒に入って実演して教えてあげる?」
「ん、分量とかまだ詳しく分からない」
「じゃあ今更だし、ナナがお風呂に入って実演指導する? パエルとアーシャもその方が分かるだろうし」
「はい、兄様。パエル、すぐにお風呂の準備をお願い」
少し照れていたが、ナナは素っ裸で湯船に浸かっている。
マッサージで最近は毎日見ているがとても素晴らしいお体です! 何度見ても綺麗です! 実の妹だが、どうしても龍馬の部分がでて、ついついエッチな目で見てしまいます!
ナナは肩甲骨付近までの髪をお風呂用に簡単に後ろで一つに結わえている。いつもは凝った結わえ方を侍女たちが施しているが今はそれを解いている。
父様やカイン兄さんとはまた少し違う髪の色だが、王家の色合いより少し明るめの色だ。
火系統の者に多い赤と違って、光を通すと淡いピンク色に光って見えるのが特徴だ。
身長は158cm、寝たきりの日が多かったせいか体重は42kgしかない。肌の色は外に出ていないので真っ白だ。足はちょっと病的に細くなってしまっているが、今現在鍛えているので徐々に筋肉も付いて回復するだろう。胸はCカップぐらいで超美乳だ。乳輪は小さく、先っちょについてる乳首は髪色と同じくピンク色をしている。俺はこの美乳にどうしても目がいってしまうのだ。
「リューク様、目がエッチいです! ナナ、やはり狙い目は今しかないかもですね」
「ええ、チラチラみてキョドッていて可愛いです! 以前の兄様には見られなかった反応です!」
「お前たち、からかうならシャンプーあげないぞ!」
「「ごめんなさい!」」
「順番に説明していくな。掛け湯をしたらこうやって先に湯船で温まるのがコツだ。こうすることにより毛穴が開いて余分な脂分を落としやすくなる。適度に温まったら、髪をこのシャンプーで洗う。量はこのスプーンで1杯ほどでいい。多く付けても効果は一緒なので使い過ぎないように。今回だけ香油が付いていて泡立ちが悪いので2回シャンプーをする。次回からは1回でいいからね」
風呂だが、もともと侍女が介助する為に作られているので、4人程度なら難なく入れるぐらいには広い。日本のユニットバスとは比べ物にならない。
勿論ナナ以外は全員浴着を着ている。
「兄様、アワアワで気持ちいいです!」
「人にやってもらうと気持ちいいからね。このように地肌は爪を立てないように指の腹で洗うといい。髪は優しくこんな感じに手洗いする程度で綺麗になる。ゴシゴシ洗う必要はないからね。そして綺麗に洗い流す。洗い流したら、水気を切ってこのトリートメントを付ける。トリートメントは傷んだ髪を内部的に治す効果がある。これは週に一回程度で良いかな」
「ん! 昨日トリートメントってやつしてない!」
「サリエの髪は傷んでなかったから省略したのだけど、今晩に使ってみる?」
「ん! 使う!」
以外にもサリエも美には興味があるのか、昨日しなかったトリートメントが気になったようだ。
こういうところはサリエもお年頃の女の子なんだね。
「トリートメントは少し放置して成分を髪に浸透させる必要があるから、付けたまま放置してその間に体を洗うね。これもスプーン1杯ぐらいでよく泡立つから、使い過ぎないように」
パエルたちがナナをモコモコにして洗浄した。
「リューク様、凄い泡立ちです!」
侍女たちもノリノリだな。
「体が洗い終わったら、顔専用のものを使うのだけど、これは少しお湯を混ぜて先に手の平でよく泡立てるんだ。こんな感じに泡立ったらその泡で顔を洗う。優しく弧を描くようにね。特に鼻周りは皮脂が溜まりやすいので良く洗ってね」
その後に、トリートメントを流しコンディショナーで髪をコーティングし、サッと流してから湯船に浸からせた。
お風呂から出た後、俺のオリジナル魔法でナナの髪を乾かしていたら皆が興味を持って教えてほしいと言ってきた。
「風と火の生活魔法程度の神の祝福があればできるはずだよ。後はイメージ力次第だね。先に風魔法で送風できるようになったら、そこに熱を加えるんだよ」
サリエとフィリアは難なく説明だけでできるようになった。元々送風で乾かす行為は皆やっていたようだ。俺のオリジナルと思っていたけど。この程度の生活魔法ならあって当然か。でも、熱の併用はあまり使われていないようだ。併用魔法になると一気に難しくなるからね。
ナナの髪が渇く頃には全員が習得できていた。ただ、サリエ以外は呪文を唱えていた。
フィリアが即席で考えた呪文と俺が付けたスキル名【ドライヤー】ができた瞬間だった。フィリアのオリジナル魔法になるのかな?
呼称が違うだけで同じ魔法はあるはずだ。一般的に知られていないだけで、この程度の魔法が魔法研究者に開発されていない筈がない。
「あの兄様? 兄様とサリエのは【無詠唱】になるのでしょうか?」
「本来魔法発動に呪文は要らないんだよ。あるとイメージがしやすいのと、言霊による効果で発動しやすくなるから使うのが当たり前になったんだろうけどね」
「ナナの髪サラサラで綺麗。リューク様、ちょっと失礼して私も今から入ってきますね。パエルとアーシャも行きましょう。あれを見ちゃったら、夜まで待てないでしょ?」
「「ですが……侍女としてのお仕事が」」
「いいわよ。二人ともフィリアと行っておいで」
「「ナナ様、ありがとうございます!」」
お風呂場から3人のキャキャとはしゃぐ声が聞こえてくる。フィリアと俺もお風呂入りたいな~。
「兄様は今日はどうなされるのですか?」
俺がお風呂場に聞き耳を立てているのに気付いているのかいないのかは知らないが、ナナが今日の俺の予定を聞いてきた。
「今日はお爺様に、例のデザートを売る店にできそうな物件がないか聞きに行こうと思っている」
「ナナもご一緒して良いですか?」
「いや、悪いが移動も沢山するし、他にも何カ所か回るとこがあるので、今日は別行動だ」
「そうですか。残念です……」
自分の足を眺めてちょっと悔しそうな顔をしている。
「ナナ、足が治っても休みの度に行動を一緒にはしないぞ。来週の休みには狩りに行く予定だし、パーティーメンバーとの交流もあるからね」
「そんな事は分かっています。一緒の班になれなかったのは、やはり辛いです」
「狩りの時はレイドパーティーで連れて行ってあげるからね。頑張って足の筋力をつけるんだよ」
「はい。ちゃんと動けるようになったら置いて行かないで、ナナも連れて行ってくださいね」
「ああ、約束するよ」
現在サリエを連れてミリム母様の実家に来ている。
ここトルネオ商会の会長であるトルネオ爺さんは俺にとって血縁関係はないが、一応お爺様になる人だ。ナナはミリム母様の実子なのでお爺様からすれば血族になるので、大層可愛がっている。
ミリム母様の実家はもともとこの王都が拠点だ。
貴族とのコネがほしいお爺様は、第一王子が国王になり、ゼノ父様が叙勲され、領地を与えられてフォレスト領を授与した時に資金援助をし、見返りにミリム母様を家事見習いの家政婦としてフォレスト家に送り込んだのだ。
商家の娘に貴族のような礼節と箔を付けるのが主な目的だが、ミリム母様のように当主のお手付きになり貴族とのコネができることもある。公爵家は平民を本妻にできないので妾としてだが、これは仕方がない。
公爵家との大きなコネのおかげで、下位貴族から変な因縁や言いがかりを受ける事もなく、今では一代で5本の指に入るほどの商会になっている。
最初お爺様は素人がメイン通りで商いなんか無理だと、碌に話も聞いてくれなかった。ナビーが夜なべして開発した特製とろふわプリンを食べたトルネオ爺様は、目を真ん丸にして180度態度を変えて食いついてきた。
「リュークや、これは売れるぞ! どれ、儂が全て仕切ってやろう」
「お爺様、この件にトルネオ商会は関与させませんよ。あくまで僕の資金源にするためです。お爺様にお願いするのは、これを売る場所と、仕入れ材料の確保です。ちゃんと正規にお金も払います」
「冷たいのぅ。儂もリュークと商売したいのにのぅ」
う~ん、孫と商売がしたいのか?
『……マスター、商売がしたいというより、トルネオはマスターやナナにもっと構ってほしいのです。最近この家に何度か通っているにも拘らず、あまりお相手してあげていないのではないですか?』
『確かに……この家には何度か訪れてるけど、忙しくてあまりお爺様の相手はしてあげていなかった。先日は先生の件で訪れたけど、お爺様たちは抜きな話だったから、会いもしないで帰ってしまっている』
『……少し構ってあげたらどうですか? ナナ同様にマスターのことが可愛くてしょうがないみたいですよ?』
『分かった。そうするよ』
「そうだ。お爺様には玩具を販売してもらいたいです。紙とハサミ、定規とペンを持ってきてください」
俺が教えたのは勿論、リバーシだ。異世界へ伝授する場合の鉄板ゲームだね。道具作製もマジ容易に作れるし、ルールも一度やれば覚えられるほど超簡単だ。その割には奥が深く、娯楽が少ないこの世界では流行るだろう。
紙に8×8マスの網目に線を引き、石に見立てて64枚紙を丸く切り抜いて片面を黒く塗る、20分程で完成だ。
3度ほど説明しながら、お爺様と対戦する。全て俺の圧勝だったが……。
「面白いぞ! 久しぶりに金儲けの匂いがプンプンするぞい!」
「お爺様、今回仮制作なので紙で簡単に作りましたが、貴族用には重い木の盤面に布を張ってマス目を付けたり、大理石の盤面にしたりして高級感を付け高く売るのです。この白黒のものを石といいますが、これも紙ではなく木で作ったり、大理石や鋼材なんかで高級感を出すのもよいですね」
「客層で価格に差を付けるのじゃな。なるほど良い案じゃ。木材でざっとしたものじゃと、庶民でも買える値で販売できそうじゃな。もう1回詳しいルールを教えてくれぬか、メモしておく」
1、8×8のマス目のリバーシ盤に、中央の黒点を基準に右上を黒として、石を黒白2個ずつ対角線上に置き、ゲームを開始する。
2、プレイヤーは先手と後手交互に黒石、白石を打つ。石は両面が白と黒になっており、石を打つとき、縦・横・斜め方向に相手色の石を自色で挟み、挟まれた石を自色に返す。相手の石を返すことができないマスに石を打つことはできない。
3、打てるマスが全くない場合はパスとなり、相手が続けて打つことになる。パスの回数に制限はないが、返せる相手の石が1つでもある場合、パスをすることは認められない。
4、最後まで打って、石が多い方が勝ちである。なお最後とは「マスが全て埋まった場合」、「両者とも打てるマスがなくなった場合」のいずれかである。
「初心者とやると、さっきのように差が出るので、ハンデ戦とかもできるから、それも教えておきますね」
ハンデをつける方法としては、対局前に隅に次の通り黒石を置く方法で行われる。ハンデ戦の場合は下手が黒を、上手が白を持つが、上手先手で対局を開始する。
ハンデ1:左上の隅に黒石を置いて対局を開始する
ハンデ2:左上と右下の隅に黒石を置いて対局を開始する
ハンデ3:左上と右下、右上の隅に黒石を置いて対局を開始する
ハンデ4:4か所全ての隅に黒石を置いて対局を開始する
「隅の角が大事という事かの?」
「そうです。『覚えるのに一分、極めるのは一生』と言うキャッチフレーズで売り出してください。それと、この盤面でハサミトリという違う遊び方もできます。これも簡単なルールですね」
相手の石を自軍の石ではさむことができれば相手の石を取ることができる。はさまれる石は、つながっていれば何枚でも良く、つまりこの方法ではタテヨコ合わせて最大6枚まで一度に取れる。なお、自分からはさまりに行っても反則にはならず、取られることもない。
また、盤面の端や四隅を利用して、相手の石の三方または二方の隣マスを、自分の石で塞ぐ(囲む)ことにより、囲まれた相手の石が全く身動きができない状態にしても取ることができる。(例えば、四隅に相手の石が1枚ある場合、動くことができる横隣と縦隣の2マスともを自分の石で塞げば取ることができる。複数枚をまとめて囲むことも可能である)
ゲームが進み盤面にある石が減ってくると相手の石を取りにくくなるので、一定以上の差がつくか、一方の残りが一定枚数以下になるとそこで終了とするのが一般的である。8マスしかないので先に4枚石を取った方が勝ちにするのが無難だろう。
「はさみとりと言うたかの? これも面白いのぅ。1つの盤面で2種類の遊びができるのは凄いの」
「ゲーム名の呼称は何でも良いと思います。お爺様の方で命名してもらっていいですよ」
「リュークや、この玩具儲かるぞ。儂の商会で売り出して良いのか?」
「ええ、全てお爺様にお任せします。只、発祥の地は王都ではなく、フォレスト領にしてほしいです」
「うん? どうしてじゃ? 何か理由があるのか?」
「リバーシは奥が深いので、流行ると思うんですよ。何年後かに発祥の地として、リバーシの大会とか開けれれば良いかなと思っています。でも、これだけだとちょっと寂しい大会になるので、同時期開催で料理大会と武術大会とかも一緒にやって優勝者に領主から報奨金を出すのです。そうなると参加者や、その様子を見に集まる者たちが年々増え10年後くらいには大きなお祭りになると思うんですよ。そうなったら相乗効果で宿屋や周辺の料理屋、お土産屋、雑貨屋などが儲かります。領内が儲かると、税収入が入って、多少の賞金を出すだけで父様もウハウハになれますからね」
「ヒャハハ、リュークよ、お前恐ろしいほどの商才じゃな。有り得ないと言いきれない話じゃ。分かった。最初に売り出すのはフォレスト領の支店から始めるとするかのぅ。フォレスト領は商都じゃ、商人たちに最初に見本品を配って置けば、勝手に貴族たちにも売り込んでくれるだろう」
「お爺様、僕的にはこのプリンを売り出す店を紹介してほしいのですが……」
「ヒャハハ、そうであったのぅ! この玩具があまりにも面白いので、忘れておったわ! よし、2店舗良い場所がある、今から見に行くとするか」
お爺様に連れられて、メイン通りにある店舗候補を見に行くことになった。
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お読みくださりありがとうございます。
まぁ、現代人が教える異世界の玩具と言えば鉄板のリバーシですね。
ルールも簡単ですし、作製も容易です。そして奥が深く面白い。子供の頃にやった事のない人は少ないでしょうね。最近はネットで対戦もできて今では盤がなくてもできる時代ですからね。
ネット対戦では作者は全く勝てないですけど……。
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