3-75 マームが初級魔法を撃てるようになりました
朝食時に昨晩王城でやってしまったことを皆に報告する。
「あらまぁ~、リュークお兄様……チロルの花壇を燃しちゃったのですか?」
「そうなんだ……プリシラは花壇には行ったことないでしょ?」
「目は見えなくとも、香りは漂ってきます。チロルが手を引いて、いつも散歩がてら連れて行ってくれていました。折角見えるようになったのですから、一度この目で見てみたかったです……」
目が見えなかったので、花なんか却って気が滅入るだけだと思っての発言だったのだが、人によっては匂いで癒されることもあるのか……固定観念はやっぱいけないなと思った。
「そっか……やっぱ、できるだけ早く花壇を直してやらないといけないね。皆、珍しい花や植物がある場所を知らないかな?」
「王宮の庭には大抵揃ってますからね……珍しい花の種や球根なんかは献上されてくるのです」
成程な……商人なんかが出入りの際に、そういう珍しい物はこぞって献上してくるんだろうな。
王家ご用達の商人に食い込めれば、一度の商いで大利が得られる。
内政官にお金を握らせて落とすより、侍女や貴族の奥方を綺麗な花や美味しいお菓子で落とした方が安く済むし、口利きしてくれる可能性が高い。
王のお気に入りの姫殿下が花好きと聞いたなら、こぞって珍しい花を持ちこんだことだろう。
「珍しい花はダメか……なにか罪滅ぼしになるような良い案はないかい?」
「あっ、そういえば、少し前にダンジョンにある花が欲しいと言っていましたわ……確か『ブルーデトックスフラワー』という、青い綺麗な花だそうです」
「それって上級解毒薬の調合で使うレア草だね。それが欲しいって言ってたの?」
「はい。とても綺麗な花らしいのですが、去年解毒剤が枯渇した時に、宮廷魔術師達に懇願されて花壇から根こそぎ持っていかれたらしいのです。人命の方が大事だから仕方ないと言っていましたが、とても残念そうにしていました。それから、何度か商人が持ちこんではくれたのですが、栽培できる状態の良品はなかなか入手できないらしいです」
フィールドで探すとなったら中々見つけられるモノじゃない……かといってダンジョン内で見つけても、内部から地上に持ち帰るまでの間に時間経過や茎が折れたりして萎れてしまうそうだ。
土ごと掘り起こせばいいのだろうが、それだと嵩張って他の物があまり持てなくなってしまう。
一般の冒険者が習得している【亜空間倉庫】だと、せいぜい自分の装備品を入れられるくらいが普通だ。オーク5頭分の収納ができる者なら、戦闘が不得意でも荷物持ちとして雇ってもらえる。花を薬の素材として持ち帰るのなら土ごと持ちかえる必要はないし、多少茎が折れていても、どうせ調合時には磨り潰すのだから新鮮でさえあれば効果に大差はない。
「その花はどこのダンジョンで手に入るんだ?」
「王都の南門から少し南下した所にある、フルーツダンジョンと言われている場所です」
「ああ、少し前に雑学の授業で習った所か……一度行ってみようかな」
「ん、行くときは私も!」
「そうだね。でもサリエは試験中は勉強に専念すること。どんな感じかソロで下見だけしておくよ」
「ん、ソロはダメ!」
サリエに凄く睨まれた……でも、ダンジョンだとそれほど危険はないんだよね。階層で湧く魔獣は決まっているし、フィールドと違い攻撃パターンも固定されている。罠にさえ気を付ければ、安全マージンをちゃんと取っていれば問題ない。
「俺がダンジョンで、怪我するとでも?」
「ん、リューク様なら大丈夫だろうけど……でもダメ」
「サリエ、過保護すぎるのは迷惑だよ。護衛として責任感が強いのも分かるけど、常に一緒に行動しなくても良いんだからね」
『……何おバカな事を……責任感とかではなく、マスターと常に一緒に居たいという女心が分からないのですか? ダメダメですね……』
『グッ……ナビー、言葉の暴力はやめようね』
「今日ちょろっと浅い部分だけ覗いてくるから、中間試験が終わったら一緒に本格的に攻略に行こうか?」
「ん、それなら我慢する」
学校が終わってからなら、門限まで5時間程しか時間はない。
その時間ならせいぜい地下1階を覗く程度しかできないだろうとサリエの許可が下りた。
他の皆もダンジョンには行きたいようだ……マームとかは生活費の心配もあるだろうし、連れて行ってやらなきゃね。
もう一つナビー情報として気になっている件があるので、こっちの案件も潰しておくか。
「それと、先日話に出た夜のお相手の話なんだけど……」
夜伽と聞き、フィリアを中心に婚約者たちの緊張が一気に高まった。
ナナは殺気を出しまくっている……マジ怖いから止めて。
ナビーから、フィリアがいつ俺から声が掛かるかと気になって勉強が手につかない……と忠告があったのだ。ローレル姉妹に急かされているかたちなので、余計にプレッシャーがあるのだろう。
「試験が明けるまでは、勉強に集中しよう。頭の中がピンク色だと、俺も集中できないしね。ローレル姉妹には悪いけど、試験が明けるまでは保留という事で良いかな?」
「わたくしは勉強に集中できるのでその方が有難いのですが、リューク様はそれで宜しいのですか?」
フィリアがそれで良いのかと聞いてくる……俺そんなにがっついてないよね?
『…………性欲を我慢できず、未成年のくせに娼館に行って3人も買って遊んだあげくに囲った人が……』
『ウッ……今日はいつもに増して辛辣ですね。フィリアはやっぱそのことをまだ怒っているのか』
「10日ほど伸びたからといって騒ぐほどがっついてないから大丈夫だよ。チェシルとマシェリもそれで良いかい?」
「「はい。大丈夫です。先日は急かすような真似をしてしまい、申し訳ありませんでした」」
「気にすることはないよ。君たちの心情も理解できたし、むしろフィリアにはこれぐらいの方が良いんだよ。でないとまた教義がとか言って上手く躱して逃げられちゃうしね」
「もう! あれは間違った教義をシスターたちが私に教えたからなのです! ナナもですよ!」
口をプク~と膨らませて拗ねている……超可愛い。やっぱナナもフィリアに嘘を吐いて、俺といちゃつかせないように謀っていたんだな。当のナナは知りませんってな顔してすっとぼけている。
今日の放課後にダンジョンを覗きに行く事にしたので、サリエの勉強を見てあげられない。なので午前の授業中に残りの3教科のピックアップの線引きをしておいた。線引きが終えたノートと教科書をサリエに手渡し、見たい人には見せるように昼食時に言付ける。
残りの問題は、マームの実技だ。
俺が教えてやると班員に引き込んだのだから、ちゃんと見てあげないとね。
サリエのようにコピーするわけにもいかないので、分かりやすく一から教える必要がある。
昼食を食べながら、マームに魔力操作に関して分からないことを聞きだす。
「何が解らないかも分からないのです……」
「「「………………」」」
俺も皆もマームが何を言ってるのか解らない……。
『……マームは、どうして魔法が発動しないのか、何が原因なのかさっぱり分からないので、今の発言に至ったのです』
『つまり、なにもかも全く分からないってことか?』
『……ですね。今回の課題は魔力操作ですので、自分の体内の魔力の流れが分かるようになれば簡単に理解できるのではないでしょうか?』
『体内の魔力の流れ? あ! そうか! 【アクアフロー】を使えば、強制的に魔力の流れを感じることができるな』
これのおかげで毎日施術を行ってるナナも格段に魔力操作が上手くなっている。
「マーム、食後にちょっと強制的に魔力の流れを体感してみようか? それで自分の魔力の流れがどうなっているか分かるはずだ」
「あっ! 兄様もしかして【アクアフロー】を使うのですか?」
「うん、よく分かったね。サリエ、マームにやってあげてもらえるか?」
「ん、分かった。あれなら一発で理解できるはず」
食後……侍女部屋から艶めかしいマームの声があがった。
『ん、リューク様……魔力の流れを教えるの難しい』
すぐにサリエから念話でヘルプ要請がきた。
サリエは言葉足らずだからね……自分は理解していても、マームに言葉として上手く説明ができないのだろう。
『俺が教えるのは良いんだけど……裸じゃなきゃできないし……』
暫くしてまた念話が来た。
『ん、どうしても教えてほしいので背中側からならいいって』
仰向けは胸も晒すので耐えられないけど、俯けなら我慢するってことか? 試験までもう時間もあまりないし、相当焦っているのだろう。貴族組は全員初級魔法が放てるから、尚更遅れを感じているのだろうな。
中間試験で魔力操作が上手くいかなくても、なんのペナルティもないんだけどね。
俺はマームの体に興味はないので、肌を見せるのが嫌ならどっちでも良いのだけど……嫁たちが複雑な顔をしている。俺は聖女よりも医療技術は上なので、こういう場合には班員は俺を男というより医者的に見てくれている。でもマームの肌を一切俺には見せたくはないという軽い嫉妬はあるが、マームのスキル習得事情を考えればやぶさかではないといった感じかな。
「マーム、何が何でも習得したいという君の心意気を買って俺が直接指導してあげるね」
「はい。宜しくお願いします」
俺の診察が数千万レベルだというのを皆知っているので、マームもこういう態度になっている。
「少し魔素と疲労が溜まっているけど、問題ないレベルだね。それを今から散らしてあげるから、俺の魔力の流れを集中して感じ取るんだ」
可愛いお尻は丸見えだが、周りに婚約者たちが勢揃いしているので、変な気は起こせない。
マームって意外に色白なんだ……と思ってはいけない。農家の娘なので、普段は畑仕事を手伝っていたのだろう……服で隠れていない部位はこんがり小麦色に日焼けしていて、日焼跡との色の差がちょっと艶めかしい。
おっと、いかんいかん……思ってはいけないのだ!
「兄様! あまりジロジロ見てはダメです!」
すぐに感づいたナナから注意が入る……。
ナナはちょっとお怒りだが、マームはもう蕩けるような顔をして自分から仰向けになってきた。
「マーム! あなた何自分から寝返りしているのですか!? 胸が見えちゃってますわよ!」
「ふぇっ? え~~まぁ、もう良いです……ちゃんと魔力の流れが分かるようになれれば問題ないれす」
「マーム? そんなに気持ち良いの? ちょっと呂律が回ってないわよ?」
「フィリア様?……はい、これまでの人生で、こんなに気持ちの良いことなんかなかったです……今とても幸せです。ナナ様が毎日これをしてもらっているのがとても羨ましいです……」
「ナナ、サリエちゃん? それほどなの?」
「ん……それほど」
「ごめんね……フィリアにこれを教えちゃったら、ハマって兄様の時間を盗られちゃわないかと思って言えなかったの……」
他の者もそれほどなの? とか言って騒いでいるが、俺はマームのおっぱいに目が釘付けだ。大きくもなく小さくもなく……B~Cカップぐらいのお手頃サイズだ。
「マーム、ちゃんと集中して俺の魔力の流れを感じるんだ。周りもちょっと静かに! これ以上騒ぐなら追い出すよ」
おっぱいは気にしてないフリをして、皆に注意する。ここでエッチ感情を前面に出すと、婚約者たちはともかく、班員に何かあった時に対処できなくなる。万が一の時にすっぱりと脱いでもらう為には、今ここでのエロ感情は禁止だ。今後の為にもあくまでも医療行為的なものだと認識してほしいのだ。
「「「ごめんなさい!」」」
マームは30分ほどで俺の魔力の流れを認識し、自分の魔力の流れもある程度感じられるようになっていた。
その証拠に、マームのステータスに【魔力感知】と【魔力操作】Lv1が習得されている。
「マーム、おめでとう。ステータスを見て御覧」
「あっ! 【魔力感知】と【魔力操作】を習得しています! こんな短時間で……リューク様、ありがとうございます!」
泣いて喜んでいるが……全裸なのでおっぱいが揺れて目が離せないんですけど。見た目普通の女の子でも、俺はおっぱいには抗えないようだ。
午後の実技授業で、マームは初めて初級の【アクアボール】の発動に成功した。
これで心置きなく放課後、ダンジョンに行ける。
ついでに美味しいフルーツも採取できると良いな。
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