3-23 フィリアを追いつめてしまったようです

 この謁見の間には魔法が発動できないように阻害魔法が掛かっている。

 阻害魔法を発生させているのは謁見の間の上と下の部屋からで、その部屋には魔道具が設置されていて上下から魔力を乱し、魔法を発動できないようにしてあるのだ。


 俺はこの部屋に入る前に【ストーンラスピア】を【ホーミング】機能で廊下の天井付近に50発待機させてある。土系の物理攻撃型の魔法だ。


 今さっきそれを上と下の階の部屋に放って扉ごと破壊しながら部屋に安置してあった魔道具を壊した。


 この部屋の中では魔法は発動できないようだが、外で既に発動してある待機魔法に命令はできるのだ。


 ナビーは茶番だからそんなもの必要ないと言っていたが、慎重派の俺は最悪何かあっても良い脅しになるだろうと設置しておいたのだ……まさか、使う羽目になるとは思っていなかった。


 関係のない一般民まで巻き込むつもりはないが、圧倒できる手段があるのとないのでは気持ちの余裕が違うだろう……超破壊魔法も創っておこうかな。




 【魔法創造】

 1、【流星雨】

 2、・隕石群を呼び寄せ、雨のように降らす

   ・術者の周囲に被害が出ないようにそこだけは隕石を落下させない

 3、イメージ

 4、【魔法創造】発動



 【魔法創造】

 1、【寒冷地獄】

 2、・絶対零度の世界

   ・目視できる範囲の空間を絶対零度にする

   ・俺を中心に半径2mの保護シールドを展開して術者とPTメンバーを守る

 3、イメージ

 4、【魔法創造】発動



 【魔法創造】

 1、【灼熱地獄】

 2、・太陽表面の世界

   ・目視できる範囲の空間を太陽フレアの状態にする

   ・俺を中心に半径2mの保護シールドを展開して術者とPTメンバーを守る

 3、イメージ

 4、【魔法創造】発動



『……マスター! そのような邪悪なスキルを増やさないでください! 太陽フレアとか核融合そのものです! 禁呪です! 断固発動阻止します!』



「サリエ! 上の4人任せていいか?」

「ん! 気配だけでも凄く強い? 殺さないと無理……」


「サリエは人を殺しても平気か?」

「ん、盗賊なら平気だけど、近衛兵は気が咎める。犯罪者じゃない……」


「そうか、ならナナの護衛と誘導を頼む。上の4人と、玉座裏の6人は俺が仕留める」




「リュークよ、悪かった。ちとやり過ぎた。謝るから許してほしい」



 国王のゼヨが今更謝ってくるが、絶対許さない!



「お断りだ、許さない。褒賞をくれると呼びだして於いて、ここまでコケにしたんだ。たかだか一国の国王ごときが、神の使徒である俺に喧嘩を売ったんだ。謝ったぐらいで許してもらえるとか思わないことだな。【多重結界】【プロテス】【シェル】【ヘイスラ】」


 俺はナナとサリエとフィリアに防御バフを入れた。フィリアは置いて行くが、今も愛している。巻き込んで怪我をしないようにフィリアにも防御バフは入れておく。でも愛しているから、その分許せそうにない。


「リューク! お前国を捨てる気か?」

「ええ父様、フィリアまで呼んで今回の呼び出しはそれを試すための茶番なのでしょう?」


「そこまで分かっていて、何故無茶をする!」

「其処の愚王がやり過ぎたのですよ。ああ、宝物庫から褒賞は勝手にもらっていきますね。その為に俺は来たのですから」


「ん! リューク様、そんな余裕ない! 皆強い!」


 俺は今朝サリエがアサシンに【魔糸】を放って躱されたのを見て【魔糸】を弄ってある。


 親衛隊の奴らはこれほど俺が怒り狂ってるのにまだ待機したまま出てこない。俺たちは帯剣しているのにだ。でも攻めてこないなら好都合、纏まって潜んでるうちに先手は俺がもらう。10本の【魔糸】を放って、天井裏の4人と、玉座裏の6人を2秒で拘束して、今朝盗賊の頭にやったように強引に引っこ抜く。縛られた10人の騎士が天井やら天幕をぶち破って俺の元にすっ飛んでくる。


 【魔糸】にした改善点は、【隠密】【ジャミング】の併用だ。分かりやすくいうと、俺の魔力でできている【魔糸】を触れるまで相手に認識できないようにしたのだ。巻き付かれるまで認識できないのだ。これほどチートな捕縛魔法はないだろう。俺に【魔糸】で触れられた時点で魔力を乱され相手はスキルが発動できなくなるし、攻撃力も1/10まで落とせる、更にドレイン効果で魔力切れにすらできる。


「なっ! 近衛兵を一瞬で!」


 父様が一瞬の出来事に驚いている。


「ん! リューク様凄い! カッコいい!」

「ナナ、サリエ行くぞ!」


「リューク様待ってください! 行くなら私も連れて行ってください!」


「ごめんフィリア、サリエは俺にとって今、心のオアシスだ。皆には黙ってたが少し前に俺はサリエにプロポーズした。サリエは俺の心をいつも癒してくれる。とても必要な存在になっている。ナナはブレないで俺に愛情を向けてくれ安心感をもたらしてくれる。裏切りや浮気とは無縁の存在だ……ナナもささくれだった今の俺には必要だ。でもただ可愛いだけのフィリアは要らない。俺の心を不穏にさせているだけで、今現在俺に何一つメリットがない。俺がフィリアを愛している分、見ているだけとか余計に苦しいだけだ。悪いがここでお別れしよう。3年経ってフィリアが学園を卒業する頃に一度だけ迎えに来るよ。その時、まだフィリアが独身で俺のことを想ってくれていたのなら、あらためて3度目のプロポーズをするね」


「嫌です! こんなに好きなのに、どうして別れなきゃならないのですか! 置いて行かないで!」


 俺はいつの間にか泣いていた……フィリアが好きだ。リュークとか龍馬とかどうでもいい。フィリアが好きだ。でも好きな分一緒にいるのが辛い。フィリアが何を考えているのか分からない。卒業するまで俺との関係が進展しないというのなら、3年後に会いにこよう。フィリアが今何も言ってくれなくても、3年あれば答えも出ているだろう。その時に、俺を待たずゼクスかロベルトとの子がいても仕方がない。



 部屋を出ようとした時にそれまで黙っていたプリシラが声を掛けてきた。


「リュークお兄様、お待ちください! 私を連れて行ってくださいませんか?」

「プリシラ? 何故? お前も国を捨てたいのか?」


「捨てたいわけではないのですが、私は7歳の頃よりリュークお兄様のことをお慕いしておりました」

「ん? これまでそんな素振りもなかっただろ? 何でまた急に……」


「リュークお兄様は、私の目を治せますでしょうか?」

「なんだ、治療目当てか……」


「違います! 治るのであれば私もお供させてください。きっとお役にたちます! 治らないのであればお兄様の邪魔や足手纏いになりたくないので着いて行くのは諦めます」


「7歳から想い続けていたのに、これまで何も言ってこなかったのは目のせいか? 俺の迷惑になるとか、足手纏いになるとか考えての遠慮? それが最近になって俺が治療できるかもと知って、治るのなら俺の負担にならないで済むので、幼かった頃の恋心が再燃したってとこか?」


 あまり見えない目を大きく見開いて驚いた顔をしている。


「その通りです! リュークお兄様は凄いですね! 皆まで言わずとも分かってくれました!」


「目は治してやっても良いけど、一緒に連れては行けないかな」

「どうしてですか!? 私がお嫌ですか?」


「嫌も何もプリシラとの思い出なんか殆どないから、好きも嫌いもないんだよね」

「……では、私の容姿はどうでしょう? お好みではないでしょうか? 周りの侍女たちは私を凄く可愛いと言ってくれますが、王女なので多少気を使っているようです。自分では鏡を見てもぼんやりしか見えず良く分かりません」


 目が悪いのだから自分の顔は見えないよな、でも俺に自分の容姿を聞いてどうする気だ?


「可愛いとは思うが、フィリアやナナが超可愛いからね……ちなみにサリエは妖精さんだ」

「そうですか……私の特殊な能力のことを知っておいでなのですね? 皆と同様にリュークお兄様もそれがお嫌なのですか?」


 キタ! この質問だけは避けたかったんだけどな……素直に言うか。

 ゆっくりしている場合じゃないのにな。


 でもゼヨの奴、特に動く素振りも見せず俺のことを観察してやがる。ひょっとしてプリシラも茶番のうちの仕込みの一つか?


「プリシラの能力のことは知っているけど、それがあるから嫌ってことはない。でも知られたくない秘密は一杯持っているので、今のプリシラがやっているように根掘り葉掘り聞いて秘密を暴こうとする行為は正直言って不快だ。それに今、1人の大好きな女を置いて行こうと決断して国を出ようとしている。時間が惜しいし、場の空気を読めない奴は正直要らない」


「ごめんなさい! でも今置いて行かれたら二度と会えないような気がするのです! 私にとっては今が人生の一番の正念場なのです! リュークお兄様! お願いします! きっとお役にたちます! 私も連れて行ってください!」


 プリシラちゃんか……15歳に成ったばかりなのに、人生の正念場とか言うほど彼女は真剣なんだな。


「正直今俺は人に対して凄く疑心暗鬼になっている。ナナとサリエ以外は信じられない状態だ。悪いな……」

「フィリアさんが煮え切らないからですね。審問官の私なら嘘や虚言は一切付けません。性的にストレスをお抱えなのでしたら、リュークお兄様のお体のお世話は私が致します! 何でも致しますのでどうかお連れ下さい!」


 そうなのだ、審問官の資格を有するということは、プリシラは雷神セトと契約しているのだ。神の名に於いて審議の確たる信憑性を得る代わりに、審問官は全く嘘や虚偽がつけない。もし嘘を言った場合、審問官としての神発行の資格が立ちどころに失われてしまうのだ。


 だから日頃より会話の中で『答えられない』とか『言いたくない』などの言葉をよく使う。嘘を言わない代わりに言葉をはぐらかす為の言い回しだ。



「プリシラは中々大胆だな……ゼヨ伯父様の娘だな~って思うよ。プリシラの本気をなにか見せてくれるか?」


 プリシラはトコトコと俺に近付いてきて、躊躇なくというより、むしろ嬉しそうにディープな大人のキスをしてきた。


「ああっー! この泥棒猫! よくも兄様に!」

「ん! リューク様のアホ! 絶対許さない!」

「リューク様……」 


 とても長く感じたキスを終え、プリシラが頬を染め聞いてくる。


「あの? 初めてなのでさっきので良いのか分からないですが、むしろご褒美でした! ご馳走様ですお兄様!」


 本気を見せろと言ったが、まさかキスしてくるとは思いもよらず、あっと思った時には既に舌まで入れられてしまっていた。


『マスター! フィリアを止めて!』


 ナビーの叫びでフィリアの方を見たら手にナイフを持って心臓に突き立てようとしている処だった。咄嗟に自分の腕をナイフとフィリアの間に差し入れる。腕をナイフが貫通して更にフィリアに少し刺さっている。


 危なかった! 思った通り【多重結界】は術者本人とパーティーメンバーを攻撃対象として認識していないようだ。魔法は自分の発動したものでも防いで吸収してくれている。だが自己の発生する物理的損傷はダメージがはいるみたいだ。


「フィリア! お前何やってるんだ!」

「ああっ! リューク様の腕が……【治癒回復】」


「いい……初級の神聖魔法より俺の中級ヒールの方が上だ【アクアラヒール】」


 フィリアにもヒールを入れるが、虚ろな目をして泣いている。フィリアからナイフや剣などを全て取り上げ武装解除する。



 その時バリバリバリっとスパーク音が鳴り、真っ白な光と共に空間が歪んだ。

 この感覚は……神の誰かが降臨しようとしてる?


 光が収まるとそこにはアリアがいた。



 この世界の主神、水を司る女神アリア様の御降臨だ。


**************************************************************

 お読みくださりありがとうございます。


 リューク君も荒れてますが、コメも荒れていますねw

 特にリューク君とナビーの評判ダダ下がりですw


 次話はちょっと説明回になっていますので、グダグダ感満載なのですが、急に自殺を図ったフィリアの心情や、自分でもどうしてこうなっているのか違和感を覚えている龍馬に、場を収めに女神降臨です。


 ぶっちゃけここまで荒れると作者じゃ収拾付かないもん!

 アリアちゃんヘルプミー!

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