3-24 ゼヨ伯父様は不安でいっぱいのようです
アリアが来やがった!
相変わらず見た目は可愛いんだけど、俺はアリアを見ると無性にイラッとする!
「ん! リューク様!? このお方!」
「ああ、そうだサリエ。こいつが女神アリアだ」
こいつ呼ばわりしてるけど、主神の降臨で皆驚きすぎて、俺の言葉など耳に入っていないようだ。
「兄様? あ、皆様! 女神アリア様御降臨です! 頭が高いですわよ!」
そう言って、ナナは車椅子から降りようとしている。
「ナナ、そのままで良いです」
真っ先に動きそうなフィリアなのだが、虚ろな目をしてサリエに手を引かれて誘導されている状態だ。
一同がアリアの前に赴き両膝をついて、頭を垂れ、両腕の指を恋人つなぎのように組んで祈りの姿勢を行う。
【魔枷】で身動き取れない親衛隊の奴らまで必死で体を起こして、頭を垂れた。後ろで枷が嵌まっているので、土下座だね。
一人立ちつくしアリアを睨む人物がいる。まぁ、俺だけどね……。
アリアにだけ聞こえるように念話をとばす。
『アリアちゃん? 何しに来たのかな?』
『リュークさん、そう邪険にしないでください。今回はフィリアとあなたを叱りにきました』
『うっ! そうか……済まない。フィリアを追い込んでしまったようだ。まさか死のうとするとは……』
『あなたはフィリアとナナとサリエに約束したのを忘れたのですか? もう死なない、置いて行かないと』
『ああ、そうだったな。でも……フィリアは置いて行かれるだけでなぜ死のうとしたんだ?』
『本気で言っているのですか? まぁ、よいでしょう。奇しくもあなたはゼノと同じことをフィリアに言ったのです。『可愛いだけで取り得がないと』多少の言い方は違えど、6年前にゼノに言われて悔しくて必死で頑張ってきたフィリアの6年間の努力をあなたは全否定したのです。そして止めとばかりに、フィリアの目の前でプリシラと濃厚なキスですよ。本当はフィリアもあなたともっとイチャイチャしたかったのです。巫女やシスターに毒されて変にずれた貞操観念を持ってしまって、彼女も我慢しているのです。これではあなたからフィリアを奪おうとしたラエルも浮かばれませんね』
『…………』
言われて愕然とした。
俺はフィリアの6年間の努力を、俺やサリエの回復魔法の方が遥かに優れているから要らないと言ったのだ。俺なんかチートを使っただけで大した努力もしていないのにだ。
『ナビー! 今回のことはあなたが一番悪いのですよ!』
『……はい、その通りです。マスターに誤解を与え、フィリアに配慮の足らない発言でした』
『とりあえずこの場を収めます』
『クソ、お前に借りなんか作りたくない! 自分で何とかするから帰れ!』
『何ともなりそうじゃなかったから私がこうしてわざわざ来たのでしょ。今の混乱しているあなたじゃ収まりが付きません。フィリアのことが好きなのではないのですか?』
『好きだが、これ以上あいつと居ると不安でどうにかなりそうだ。他の奴を想ってオナニーなんて、とても許せそうもない』
『それがそもそも誤解なのです。まぁ、後でよいでしょう……先に場を収めます』
「みな面を上げて下さい。さて、リューク。あなたはどうしたいです? このままフォレルを滅ぼしますか?」
「ん? 滅ぼしてもいいのか?」
「ええ、あなたの好きにして良いです。ですができるだけ民は殺さないようにお願いします」
「お待ちください女神アリア様! 私はこの国を治めている国王のゼヨと申します。何故フォレルを滅ぼす必要があるのですか!?」
「それはあなたが招いたこと。我々神が関与する事案ではありません」
「ですが先ほどリュークに好きにして良いとおっしゃいましたよね?」
「ええ、リュークには将来的に私の命で世界を救ってもらう為に使徒としたのです。どこぞの愚王が使徒を怒らせて1国が滅ぼうが神の関知する事柄ではありません」
「そんな……ちょっとした詮索のつもりだったのです! 決してリュークに害を与えるような気はありませんでした!」
「ですが、現にあなたの言った言葉でナナは死を決意し、フィリアとリュークの仲は拗れてしまったではないですか。どう責任を取るつもりですか? 勇者のPTに聖女が居ないなどという事態になったらあなたの首一つで治まるような話ではないのですよ?」
『おい! 何が勇者だ! フィリアを聖女に仕立てるために降臨したのか?』
『違うのです! ゼヨに反省させるためにそう言っているだけです! そもそもフィリアは聖女なんかじゃありません!』
『また、言葉巧みに騙してるんだな……この詐欺師! もうイイからお前は帰れ!』
『あなたの為にやっているのに……』
「アリア様どうかお許しを! 私の首一つで済むなら差し上げます。国が滅ぶような事態だけはご容赦ください!」
「この世界にとって、あなたの首に何の価値もありません。分かっているのでしょ? リュークが自分や国に危害を加えるようなことはないと」
「はい、そう思っていましたが、先程アリア様が滅ぼせと……」
「そのようなことは言っていないでしょ? 好きにしなさいと言ったのです。あなたの思っている通り、リュークはあなたや国に危害を加える気などありません」
「ではなぜそのようにリュークを煽るような言を……」
「あなたを真似て煽ってみたのです」
「うっ! 申し訳ありません」
「私に謝ってどうするのですか? あなたが意図して怒らせたのはリュークの方でしょ?」
「リューク、すまなかった。ここまでお前が怒ると思っていなかったんだ。だから敢えて帯剣もさせたし、近衛にも何があっても動くなと厳命し、最後まで動かさなかっただろ? 俺もゼノもお前をある程度信用していたのだ。ただこれまでの使徒様の行ってきたことを思うと、その強大な力が他国に流れるかもと考えたら試さずにはいられなかったのだ。反省している、許してほしい」
「いいえ、許してあげません。伯父様、国を滅ぼしたりはしませんが、宝物庫を荒らして国を出ます」
「リュークよ! そもそもお前が家出などするから、俺もゼヨ兄さんも不安になって試そうと思ったのだ。そこのところ理解しているのか? 使徒であるお前が国外で毒されて自国を攻めにきたとか笑えないのだぞ!」
「父様は僕をそこまでダメな奴だと思っているのですか! 確かに兄様と比べると数段劣りますが、自国に攻めるとか幾ら何でもないでしょ! そもそも使徒の話は秘密だといいましたよね? なんで一番言っちゃいけない人に教えてるんですか!」
「皆、少し落ち着きなさい。先にフィリアの誤解を解いておきましょうか。皆の前でフィリアに恥をかかせて、あなたと言う人は……フィリアの名誉の為に神の名で宣誓します。あれはあなたの誤解です。そういう事実はないです。皆の前でこれ以上プライベートなことを話すのもフィリアも嫌でしょうから、これ以上の話は別室で話してきなさい。サリエ、あなたも一緒に行ってリュークの膝に乗って、個人香で彼を落ち着かせてあげてください。今の彼では、話になりません。あなたの個人香はかなりの効果がありますので、今後もリュークの役に立つでしょう」
「ん、女神様の御意思に従います!」
『どういうつもりだ!?』
『フィリアをちゃんと見てあげなさい……』
アリアに言われてフィリアを見ると、泣き崩れて今にも消えてなくなりそうだ。
「フィリア、少し良いですか? あなたが頑なに処女性に拘っているのは教会の教義のせいですか?」
「はい。巫女様や神父様やシスターの方たちが、聖属性を極めるには聖神べネレス様の御加護が要るのだと。結婚前に処女を散らすと、それ以降べネレス様の加護を得にくくなると教えて頂きました」
「それは全くの誤解ですね。べネレスはそのような矮小な神ではありません。処女性を求められるのはべネレスによって選ばれた巫女と神父の話です。シスター以下の神殿関係者には処女性など求めていません。穢れなき処女が大事なのは神事を行う巫女です。だから巫女は聖女と呼ばれるのです。あなたは巫女でもシスターでもないのですよ? 処女性なんて一切求めていませんよ」
「そんな……リューク様が触れたそうにしているのを泣く泣く遠ざけ続けたのが全く無駄な事でしたの?」
「無駄というより、そのことで随分リュークを傷つけていますよ。別に彼もエッチがしたいとかではなく、もっと恋人らしい親密な関係になりたくてアピールし続けたのに、全く相手にしてもらえない。その辺の友人関係の男女の方が仲が良さそうに見えて、本当に自分のことを好いてくれているのかと不安で胸中一杯でした。特に1年ほど前からあなたの口からはロベルトの話ばかり。とても楽しそうにお買い物に行ったとか、王都までの旅路でお泊りしたとか聞かされれば、不安にもなるでしょう」
「そんな……リューク様ごめんなさい、私は……」
「フィリア、あなたはフォレストの聖女とか言われているようですが、この国の聖女は王都の神殿に居るルル嬢だけです。あなたは処女性を気にする必要はないのです。だからといってリュークと関係を持てということではありません。その辺はあなたたちの恋愛観の問題です。色々誤解が重なって関係に溝ができているようですね。なのでこの場で大事なことだけはっきりさせておきましょう。フィリア、あなたはリュークが好きですか?」
「はい! 心の底より愛しております!」
「ええ、そうですね。嘘偽りはないです。神の名に懸けて認めましょう。リュークあなたはどうなのです? 捨てて行くほどもうどうでもよくなったのですか?」
「お前に答えるのはなんか癪だが、フィリアは愛している。でも何を考えてるのか教えてくれないので不安でしょうがないんだ。結婚するまで触れるのもダメというのなら、フィリアが卒業して結婚してくれる状態になるまで、こんなどうでもいい国は出て一旦距離を取ろうと思ったんだよ。それとお前が神の名を懸けて宣誓したとしても俺は一切信じられないからな!」
「酷いです……。あなたのフィリアを愛しているという気持ちも本物ですね。お互い本気で愛し合ってるのに別れる必要はないでしょう。隣の待機室で今からサリエを伴なって、腹を割って心ゆくまで話してらっしゃい。色々誤解を解いてくるとよいです。自分が不安だから距離を取るとか、自分からプロポーズした癖に身勝手な自己中な考えです。フィリアや周りの気持ちをもっと考えなさい」
「ん! リューク様行こう。フィリアも……このままじゃダメ!」
俺とフィリアはサリエに手を引かれ、すぐ隣にある謁見までの待機に使われる貴賓室に入った。ナナも着いて来ようとしたが、アリアが止めていた。
「ナナはこちらに残ってね。あなたはリュークが絡むとおかしくなるので、話の邪魔になります」
隣室でサリエを膝に乗せて、フィリアと向かい合っている。
フィリアはちゃんと語ってくれるのだろうか?
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