3-25 フィリアのちょっと恥ずかしい裏事情?

 俺はサリエを膝に乗せフィリアと対面する形で座っている。


『念話のオープン通話で少しお邪魔しますね。リューク、【クリスタルプレート】を出してまずナビーに謝罪させなさい。事の発端はその子からです。それとフィリアにもあなたのスキル【念話】を授けなさい。下界に降臨中なので離れている場合は念話でないと私に伝わりません』


『確かにそうだな……』




「リューク様、あの……腕は大丈夫ですか?」


 こんな時でも俺の怪我の心配が先か……。

 フィリアに【念話】をコピーし、【クリスタルプレート】にナビーを顕現させる。



『フィリア、【念話】で話そう。相手をイメージして思うだけで会話できる。腕は大丈夫だ、【身体強化】Lv10なので、腕で受けてもフィリアの力じゃ骨で止まると思っていたのだけど、運悪く骨の間に滑り込んだようだ。だがもう完治しているので心配ない』



 俺のタブレットを皆の見える位置に置き、ナビーに話してもらう。


『……フィリア、今回の件はナビーが不用意に誤解させることを言ってしまって、マスターが暴走してしまいました。ごめんなさい』


『あの、あなた様は? マスターとはどういうことでしょうか?』


 確かに色々疑問に思うだろうな……何せ俺のタブレットの中に小さいのが居て、土下座してるんだもんな。


『アリア! 色々不味くないか? ナビーのこと、教えていいのか?』

『今、隠し事をするのは双方不信感を募らせるだけです。この際全て話してお互いスッキリさせなさい。ゼノやゼヨにまで教える必要はないですが、ナナにもある程度話しても良いでしょう』


『ん~でも、ナビーって俺の何になるんだ? スキル? 従魔でもないよな?』

『神界では、もうナビーは神の一柱として考えられています。今後女神ナビーとして名を使っても結構です』


『神!? でも神にしては不完全じゃないか? 今回のようにミスるし、読み違いも結構するよな』


『それはあなたのせいでしょ。創主様がお創りになった【ユグドラシルシステム】にミスなどないのですよ?』

『俺のせい? ナビーのミスが俺のせいってどういうことだ?』


『あなたが感情なんか与えるからです。しかもその基となったものがあなたでしょ? そりゃミスもするでしょう』


『うっ! 基が俺だからミスするんだ……なんか凄く納得した』

『機械はミスしません。ミスをするのは使い手の人間側です。ナビーのミスはあなたの人間的感情のせいです』




 フィリアとの誤解を解くための話し合いが始まったのだが、ナビーが秘匿回線で話し掛けてきた。


『……マスター、専用の秘匿回線で失礼します』

『ん? 秘匿回線? どうして?』


『……サリエをクンクンして、落ち着いて聞いてくださいね。あの駄女神、懲りずにまた何やら善からぬ画策をしています。どうもあのバカ兄弟を取り込む気でいますね……』


 こっちで俺たちと念話で会話してるのかと思いきや、謁見の間で何やら企んでいるらしい。


『アリアの奴! 今から行って懲らしめてやる!』

『……落ち着いてください。何を企んでるのか面白いじゃないですか? ちょっと興味があります』


『ナビーは、様子見したいのか?』

『……はい、今のマスターならどうにでも料理できるでしょ? 知らん顔してフィリアと先に和解しましょう。これ以上フィリアを不安にさせるのは良くないです』


『分かった。知らん顔してるから、随時教えてくれ』

『……了解です』



 アリアが何やらやっている。さて、どうしてくれよう……。

 でも、先にこっちか……。 


『フィリア、ゼクス王子の話の時なぜ何も言ってくれなかったんだ?』

『王子様の話は少し思うところがあったのです。断った際の両親の心配もあったのですが、それより何故このタイミングで、しかもゼノ様まで横に居るのにあのようなことを言われたのかが全く理解できずに、考えが纏まらすぐに答えることができませんでした。褒賞を与えると呼び出したのに、もう纏まっている縁談に横やりを入れるなんてまずあり得ない話です。両家の面子に係わるので普通しません……ましては甥御である方の婚姻です。可笑しいでしょ?』


『確かにおかしいけど……ナナやサリエのようにすぐ断れば良いじゃないか?』


『……マスターはフィリアに即答で拒否してもらいたかっただけなのでは? それなのにフィリアが俯いて無言だったので、不安になってあのような暴走をしたのでしょ?』


『大体お前が、フィリアの昨晩のお相手がロベルトだとか言うから俺がおかしくなったんだろ!』


『ん! 収拾付かないから順番に解決する! まず、王子様の話しから!』


 サリエ、ちょっと俺に対して怒ってるな……不甲斐ないところを見せてしまったな。今のサリエは、小さくて見た目子供でも、しっかりとした一人のレディに思える。俺の方がおこちゃまだな……。


『そうですね、サリエちゃんの言う通りだわ。王子様の件は国王様とゼノ様に違和感がどうしてもあって、きっと何らかの意図があると思ったのです。それが分からなかったので、すぐに答えられませんでした。でも、国王様たちの意図が分かった今なら即答します。結婚はリューク様以外とは考えられません! 只、国王様たちについてはリューク様を煽るのに私を利用しようとしたのはちょっと腹立たしいです……死のうとまで思い詰めました。そう簡単に許せそうにないです』


『あ! フィリアさっきはごめん! 可愛いだけとか、ホントごめん! ちょっと焼き餅でどうかしていたんだ……』


『はい……死ぬほどショックでした。本気でリューク様は私を捨てて行く気だと思った時には、勝手に手がナイフに動いていました……自分でもびっくりです』


『俺も正直よく分からないんだ……なんでこうも心が乱れるんだろ』


『私が説明しますね。今リュークと、龍馬さんが完全に融合しようとしているところなのです』


 アリアが融合とかいってきた……俺はリューク君と溶けて混じり合うのか? 俺が消えてしまうのか?


『俺はどうなるんだ?』

『どうもなりません。でも完全に融和されるまでは不穏状態が続くかもですね。龍馬さんでしたらフィリアが他の人を想像してオナニーしていたとしてもあそこまで取り乱さなかったでしょ?』


 アリアにそう言われて違和感に気付く。うん、あれほど取り乱さない。


『……確かに以前の俺なら、あんな暴走したりしない。焼き餅はやくけど、実際にこっそり会って浮気とかじゃないのなら、ジェラシーは感じても空想の世界まで俺のみ愛せとかは言わないよ。俺だって彼女や嫁がいてもアダルトビデオとか観てオナニーもしてたしな……なるほど……この感情はリューク君の感情が強く出たんだな?』


『そうです。しかも、リュークの積もり積もったここ暫くのストレスが一気に爆発したのです。口には出さずとも、少なからず聖騎士のロベルトに嫉妬していたのですね。思春期の男の子舐めちゃいけません』


 15歳の思春期の少年の暴走が原因か……45歳のおっさんの俺なら、想像したからといって別れようとかまで思わないもんな。それでも嫉妬はするだろうとは思うけどね……自分だけを想っていてほしいというのは誰しもが思っているはずだ。


『リューク様、ごめんなさい! でもロベルト様の事は只の友人としか思っていません! ロベルト様が多少の好意を私に抱いているのは知っていますが、私から恋に進展することは絶対にないです!』


『でも、ロベルト君とSEXしているところを想像してオナニーしたって言った時も否定しないで黙っていたよね?』


『あぅ……そのことは詮索しないで許してください!』

『フィリア、もう観念しなさい……気持ちは分かりますが、こうなってしまってはちゃんと言うしかないです。言ってリュークを楽にしてあげなさい……』


『アリア様はご存じなのですね! 嫌です! 恥ずかしすぎて死んだ方がマシです!』


 えー!? 死んだ方がマシとか……フィリアどういうことなんだよ?


『誤解は更なる誤解を生みます。恨むのならついうっかり言っちゃったナビーを恨みなさい。責任を取ってナビーが説明しなさい』


『……了解しました。フィリアは確かにロベルトとSEXしている所を想像してオナニーをしましたが、フィリアにとってそれは大事な部分ではないのです。そもそもフィリアは殿方のそれがどういうものか見たこともないので想像もできません。では何がフィリアにとって大事なのか……フィリアのその空想の中でのSEXシーンにもう1人登場人物がいます。そう……マスターですね。フィリアは、マスターの前でロベルト君に強引に犯されるという設定でオナニーをしていたのです。ロベルト君に対しての想いはそこに一切ございません。フィリアにとって大事なのは、それを見せられて泣いているマスターです。寝取られて可愛い顔でシクシクしている女顔のマスターのお姿が今回のシチュエーションの肝ですね……思考は腐女子系です。BL系ではないですが等しく腐ってます』


『イヤァ~!! ヤメテ~! グスン……もう死にたい!』


『……え~と……つまりロベルト君に向ける想いは一切なく……情けなくその側で泣いている俺の姿に興奮して欲情していたと?』


『わざわざ確認しないでください!』

『…………』


『なぜ黙るんですか……』

『情けない俺とかの何がイイの?』


『……何時間語り合っても、おそらくマスターにフィリアの少しばかり変な性癖は理解できないでしょう。逆にフィリアには、猫ちゃんとわんちゃんを後背位から攻めてる時に、尻尾がフリフリお腹を撫でるのに無性に興奮するマスターの気持ちなど分からないでしょうね』


『ナビー! お前のそのうっかり発言のせいで今回これほど騒ぎになったのに懲りてないのか!? 今の発言でサリエとフィリアから凄まじい殺気を感じるぞ……』



 サリエは不意に俺の膝から降りてフィリアの方に行き膝の上に座った。フィリアは恥ずかしさのあまり、小さなサリエの胸に顔を埋めシクシク泣き出した。その頭をサリエは優しく撫でている。


 サリエは良い娘だな……自分の個人香で消沈したフィリアを宥めに行ったのだ。


 確かにフィリアの性癖はちょっと俺には理解できない。寝取られの逆パターン? 寝取らせ? かといって俺にそういう行為を本当に見せつけたいわけでもないようだ。


『……いつもそういう変な妄想をおかずにしているのでもないですからね。あくまで昨晩の設定がちょっとおかしかっただけです』


『うん。俺の方は理解して誤解は解けた。もうなんか可哀想だから止めてあげて……』



 フィリアはサリエの胸でシクシクしていたが急に凄い殺気を放って顔を上げた。

 あのサリエがビクッとなるほどの殺気だ……フィリア怖いです。


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 お読みくださりありがとうございます。


 フィリアの妄想オナニーという、扱いの難しいネタで自滅寸前の作者でしたが、腐女子系扱いで強引に収めて見ましたがどうでしょうか?


 納得できない人も多いかもですが、リューク君的には浮気でなくてほっとした様子ですので、この辺で収めてください。


 作者被害にあったフィリアには申し訳ないですが……一度破局寸前まで乱して元の鞘に戻し急接近させるための良い案を他に思いつかなかったのです。


 不甲斐ない作者でごめんよフィリア~!

 君は今日から婦女子系ということでよろしくですw


フィリア:「絶対嫌です! 私は清純派が良いです! 聖女と謳われるほどの清純派です! 妄想オナニーとか作者様はアホですか! アホですよね!」


(* ̄○ ̄)ア(* ̄о ̄)ホ・・・・・・((((_ _|||))))ドヨーン

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