1-12 サリエと一緒にお風呂に入りました

 厨房に向かいシェフに兎の肉を手渡す。


「遅くなったね。今からでも夕飯に間に合うかな?」

「はい、大丈夫ですよ。兎の肉はオークと違って新鮮な方が美味しいですからね」


「オークと違ってとは?」

「オークのお肉はすぐ食べるより、3日ほど熟成させた方が美味しくなるのですよ。牛なら5日ぐらいでしょうか」


「熟成期間か……実はオークナイトとオークプリーストを今日狩って、今ギルドでお肉にしてもらっている。明日の昼には受け取れるらしいから、学園に行く前に美味しく料理してくれるかな? 余るだろうからここにいる使用人たちの夕食にも出してあげるといい」


「それは楽しみですね! はい! 腕によりをかけて調理させていただきます!」

「兎は2匹狩ってきたから、使用人の夕食にも出してあげて。足りるかな?」


「お気遣いありがとうございます。2匹なら余るぐらいありますので、後で本家にも届けておきます。使用人や騎士様たちもきっと喜ばれることでしょう」



 後はシェフに任せ、自室でくつろぐ。15kmほど移動して戦闘までしているのだ。かなり疲れている。

 特に100kgオーバーのオークを大量に木に吊るす作業は重労働だった。



「ん、リューク様、すぐお風呂の準備をするね。お風呂の後に夕飯でいい?」

「うん、それでいいよ。今日は流石に疲れたね。サリエは疲れてない?」


「ん、少し疲れた。でも大丈夫」


 サリエの身長は130cmほどしかない。歩幅でいえば俺の倍近く足を動かす必要がある。疲れていないはずがないのだ。戦闘でも敏捷性を生かすためかなり動いていた……辛いのを我慢しているはずだ。




 お風呂までの待機時間に、父様とフィリアに無事だと安否確認のメールを入れる。


 フィアンセのフィリアのコールに出ないのには訳がある。いくら記憶があるといっても、俺とリューク君では話し方が同じではないのだ。どうしても自分の癖が出る。長時間だときっとボロが出るからだ。リューク君とちゃんと入れ替わるまでは極力親しかった者とは会わない方がいい。メールも本当は控えたいのだが、まだメールの方が安全だ。



「ん、リューク様、お風呂の準備ができた」

「じゃあすぐ行こうかな」


 俺は昨日のように1人で入るからこなくていいと言って、さっさとお風呂に入っていた。

 ところが、サリエは湯着も着ないで胸を手で隠してお風呂に入ってきた。


「サリエ! 流石に裸はまずいよ! それにそんなに耳を真っ赤にさせて、恥ずかしいのだろ?」

「ん……凄く恥ずかしいけど、一緒に入れば護衛もできるし、脱衣所でリューク様を待たせることもなくなる」


 どうも昨日脱衣所で俺を待たせてしまったことが凄く嫌だったようだ……サリエなりのこだわりがあるみたいだ。


 凄く恥ずかしいのだろう。耳は真っ赤になってピンと立っている。透けるような白い肌もほんのりピンク色に色づいていて、幼児体型なのについドキッとしてしまった。


「確かに護衛もできるからゆっくり一緒に入れるけど……良いのか?」

「ん、リューク様なら見られてもいい……」


 参ったな……ハーレム万歳な俺だけど、実際こうやって入ってこられるとちょっと照れくさい。いくら童顔の幼児体型とはいえ、もう直ぐ16歳の少女なので、小さくてもちゃんと胸の膨らみはあるのだ。


 つつましい胸の先っちょには、可愛いピンクの突起もちゃんとついている。



『……マスター、サリエが可愛すぎます! どうやら、今日一日マスターと行動を共にして、完全にマスターにメロメロなようです。恥ずかしさより、マスターと少しでも一緒に居たいというのが、今の彼女の本心ですね』


『たった一日で!?』

『……元々狂犬から守ってもらった時から、王子様的な憧れを抱いていたのです。その王子様に仕えたい一心で色々辛い修行にも人の何倍も頑張ってこられたという理由になっています』


『成程ね~。う~ん、どうしたらいいと思う?』

『……マスターの素直な気持ちで良いのではないでしょうか。サリエは今日一日で再燃した自分の感情に従い、恥ずかしさより一緒に居たいという自分を素直に受け入れ、今、目の前で裸になって向き合っているのです』


『再燃した感情?』

『……一日中、「凄い! 凄い!」と言っていましたよね? 「リューク様はやっぱり凄くて私の王子様だった!」というのがサリエの今の想いです』


 それ、子供時分の淡い恋心だよな。そういうのを聞くと、サリエって乙女チックで可愛いな。


「ん! リューク様、髪を洗ってあげる!」


 さっきまで両手で胸を隠していたのだが、今は俺の髪を洗っているので目の前でサリエの可愛いチッパイが髪をワシャワシャする度に僅かに揺れている。至近距離なのでどうしても視界に入り、目のやり場に困ってしまう。小さくてもサリエの胸は魅力的だ……魅惑のチッパイだ!


「ん! リューク様、あまり見ないで……やっぱり凄く恥ずかしい……」

「ごめん……でも、ここまで甲斐甲斐しくしてくれるサリエには、お風呂を出た後に僕のスキルのことを話すね」


「ん、いいの? 女神様の秘密で言えないのでしょ?」

「恥ずかしいのを我慢してここまでしてくれたんだ。サリエが絶対誰にも言わないと約束してくれるなら、サリエにだけ教えてあげるよ」


「ん! 絶対言わない!」

「それと、お風呂を出た後で僕の魔法をサリエに試させてもらっていいか?」


「ん、リューク様のオリジナル魔法? 凄く興味がある。うん、いいよ」


 泡を流してもらい、さっぱりする。


「ん、気持ち良かった?」

「ああ、とっても気持ち良かったよ。人に髪を洗ってもらうのは凄く気持ちいいからね」


「ん? そうなの? 私もリューク様に洗ってもらいたいかも……でも侍女が主人に洗ってもらうことはないし……」


 なにやら小声でブツブツ言っているが、【身体強化】で聴覚が引き上げられている俺には丸聞こえだ。内心俺に洗ってほしいようだが、自分からは言い出せないようだ。


「さぁ、今度はサリエの番だよ」

「ん、でも……」


 躊躇うサリエの髪を優しく洗ってあげ、今度はお互いの背中を洗いっこする。見た目は幼いが色白でスベスベの女の子の肌は、やっぱ触れると柔らかくて気持ち良い。




 今日はサリエとゆっくり湯船に一緒に浸かってからお風呂を出た。

 使用人の為に、出る時に少し熱めになるよう備え付けの魔道具ではなく、覚えたての火魔法で湯船を温めておいてあげる。



 自室で今日もサリエの髪を乾かしている。サリエの顔を拝める唯一の時間だ。

 最初は『侍女が主人にこんなこと!』とか言っていたが、優しく櫛が通る度に目を細めて気持ちよさそうにするサリエは、やはり妖精のように可愛い顔をしている。


 フム、これは俺の日課にしたいな。


 髪を乾かし終え、いよいよここからが今回の目的だ。


「サリエ、お昼にサリエの匂いに倦怠感を及ぼす匂いを検出したって言ったの覚えてる?」

「ん、覚えてる」


「実はそのことで試したいスキルがあるんだ。そのスキルで、ナナの足とセシア母様の体調の原因とかも調べられるかもしれない。でも、この2人のことは実績がないうちは言うのもね。期待させといて結局分かりませんでしたじゃ気の毒過ぎる。だからまずサリエに使ってスキルの有効性を調べてみたいんだ……」


「ん、体を調べるスキルの被験体? ナナ様とセシア様の為にもなるの?」


『……マスター、【ボディースキャン】という魔法ですが、スキャンを掛ける時には裸じゃないと上手くスキャニングができないようですよ?』


『マジか……じゃあナナとセシア母様にも裸になってもらう必要があるのか……』


「女神様からのスキルだから多分上手くいくと思うのだけど、一度も使ったことがないから、僕も正直ちゃんとできるか判らないんだ。サリエには申し訳ないけど協力してくれないかな? 勿論危険なスキルじゃないよ。ただ、魔法を使うために申し訳ないのだけど裸になってもらわないといけないんだ……まあ、裸については今更だけどね」


「ん……恥ずかしいけどナナ様やセシア様の為になるなら協力する」


 サリエは恥ずかしそうにメイド服を脱いで、椅子に腰かけてくれた。


「ありがとうサリエ。【ボディースキャン】この魔法は、俺の魔力を流して体の異常個所を調べる魔法なんだ。だから服を脱がないと上手く調べられないという欠点がある」


 詠唱とともに、目の前に魔方陣が現れ、そこに人型模型が映し出される。


「ん! 何それ! 見たことも聞いたこともないスキル!」

「僕のオリジナル魔法だよ。どれどれ……サリエ、やっぱ大分疲れているじゃないか」


 サリエはオリジナル魔法と聞いて、裸なのも忘れて興味津々だ。


「ん、実はかなり疲れてる。それよりオリジナル魔法とか凄い!」

「サリエ、成長のことと倦怠感の原因が判ったよ」


・エルフとピグミー族の混血の弊害

・エルフの血で魔力が高いのに魔素を上手く体内循環できてない

・サリエの心的不穏


「一番の要因は成長が20歳前後で止まるエルフと子供のような容姿をしたままのピグミー族の種族特性が重複し合って、成長そのものが遅くなっているためだね。それとサリエはエルフの血を引いて魔力が高いのに魔力循環ができていないのも大きな原因みたいだ。成長に関しては、種族的なものだから心配ないね」


「ん、私はもう成長できないの?」

「いや、今からそれを改善する。でも、ピグミー族の血の影響がどこまで出るか分からないので、見た目が何歳程度まで成長するのかは正直に言うと不明だね。でも、サリエは凄く可愛いから僕はそのままでも良いと思うけどね」


「ん、こんな幼い容姿でもリューク様は嫌がらない?」

「嫌がるどころか大歓迎だよ。今のサリエ、凄く可愛いよ」


「ん、ならこのままでも別に良い」


 なんだかちょっと嬉しそうだな。


「そうだ……サリエも治療のやり方を覚えてほしい」

「ん? 私はそんなスキル持ってない」


「そのことは後でまた詳しく説明する。今は僕のやっていることを見て、なんとなくで良いからやり方を覚えてくれればいい」


 ベッドに移動し、俺は目の前に浮かび上がっている魔方陣の人体模型に出ている異常個所の説明をしながら、サリエに処置を施していく。


「この黒くなっている部分は、魔素が上手く流れていないところだ。ピンクな場所は軽度の筋肉痛だね。こうやって色のついた場所をクリックすれば異常原因を表記してくれるから、それを解消するイメージを流し込みながらマッサージするんだ。【アクアフロー】フローは手当って意味がある。まず魔素が流れ易くするために心臓に魔力を通す。そして頭、丹田、足の裏の順が理想だ。心臓に魔力を通す時に少し左胸を触るが気にするな。治療の為だ」


 サリエは胸を触られ、耳が真っ赤になっているが我慢してくれている。


「ある程度こうやって魔力の流れを作ったらうつ伏せになってもらって、魔素を散らすイメージで揉み解すようにヒールを体に練り込むんだ。筋肉痛や魔素の停滞を解消できる」


「ん! リューク様、これちょっと痛いけど、凄く気持ちいい! 何これ! あんっ!」


 サリエちゃん……色っぽい声は止めてほしい……。

 余程疲れが溜まっていたのだろう。凄く幸せそうな蕩けきった顔をしている。


「魔方陣の人型の表示に、色のついた部分がなくなれば処置完了だ。どうだ、サリエ?」

「ん! 凄い! 体が軽くなった! リューク様が倦怠感って言っていたのが今なら分かる! リューク様、神様みたい!」


「神様はオーバーだろ? でも、そんなに違っているのか?」

「ん! 全然違う! 凄く体が楽なの!」


「それは良かった。少なくても後5日はこの処置を続けるからね。ちゃんと効果があるならナナにも試せるかな」

「ん、凄い効果」


「あはは、それは良かった。でも、もう処置は終えたから服は着ようか」


 サリエは思い出したように耳を真っ赤にして、いそいそと恥ずかしそうに服を着た。




 さて、ここからがサリエが一番気になっているだろう本題だ。


「で、僕が女神様からもらったスキルは実は1つだけなんだ」

「ん? でもリューク様、私の知らないスキルを沢山使ってた……」


「生き返る時に、女神様は何でも1つあげるって言ってくれたので、色々考えて僕がもらったものは【魔法創造】。つまりオリジナル魔法を創れるものなんだ」


 サリエは、オリジナル魔法を俺のイメージで意図も簡単に創れることが理解できなかった。

 丁寧に最初から説明してあげたら凄く驚いていた。


「僕のレベルが上がるのが異常に早くてサリエ怪しんでいただろ? 実は【獲得経験値増量】とか創っちゃったんだよ。これだけで、人の2倍も経験値がもらえるようになった」

「ん! 2倍! 凄い! リューク様いいな~」


「僕がパーティーリーダーの時はサリエも2倍になるよ」

「ん! ホント!? 凄い!」



 サリエにマッサージ治療の流れを覚えるようにと言ったのには訳がある。凄い凄いとはしゃぐ可愛いサリエを見ていたら、あるヤバい発想が生まれたのだ。ダメもとで早速イメージしてみた。


「ちょっと待っててね、創ってみたいスキルがあるから」


 【魔法創造】

 1、【コネクション】

 2、・パーティー加入中の者に魔力的ラインを繋ぐことができる

   ・コネクションしてる間は【カスタマイズ】が適用される

   ・ストック中のHP・MP・SP・APを贈与できる

   ・【スキルコピー】で複製したスキルを分与できる

 3、イメージ

 4、【魔法創造】発動



 【魔法創造】

 1、【スキルコピー】

 2、・【コネクション】で繋がっている者にスキルのコピーができる

   ・【コネクション】で繋がっている者の所持しているスキルをコピーして貰える

 3、イメージ

 4、【魔法創造】発動



『……マスター、【スキルコピー】ですが、少し制限があるようです』

『制限とは?』


『……上級スキルやレアスキルはコピー回数に制限数が設けてあるようです。あと、Lv3のスキルをコピーしてもLv1から開始ですね。コピーするのにもAPを初級相当の魔法では1、中級で5、上級では10消費するようです。段階的に初級→中級→上級と上がるようなスキルは初級のものしかコピーできません』


『回数制限があるのか……』


『……レアスキルとして【多重詠唱】【並列思考】【リストア】は5回までしか複製できません。相手は慎重に選ぶ必要がありますね。回収もできますが、相手が返還に同意を示すか、死亡しない事には回収できません。それと【魔法創造】【ナビシステム】【殺害強奪】【コネクション】【スキルコピー】【カスタマイズ】等他にもいくつかコピーできないようです』


『たった5人しか増やせないのか、慎重に選ばないといけないな』


『……ナビーからすれば5人もですけどね。創主様は何を考えているのやら。それらは世界を滅ぼせるほどのスキルだと思います』


『確かにね……【メテオ】とか創って高威力の広範囲魔法100連とか撃ったら街なんてあっという間だよね』

『……うわー、なんて恐ろしいことを。お止め下さいね! 本当に世界の終わりですからね!』



 もう1つ創っておくか。


 【魔法創造】

 1、【エアーコンディショナー】

 2、・火属性・水属性・風属性・聖属性の応用スキル

   ・体に薄い空気の膜を結界で被い、その結界内の温度・湿度調整ができる

   ・結界の膜の範囲は体表5mm~1mまでとする

   ・温度は18度から30度までとする

   ・結界内への物の出入りは干渉されない

   ・結界内への害虫指定された昆虫などの侵入を阻害できる

   ・結界内の紫外線もカットできる

   ・結界内の空気は浄化魔法で常に正常な空気が保たれる

   ・温度調整はナビーの管理の下、自動・手動調整が可能

   ・発動時間は初期で12時間、以降は熟練度のレベルに比例する

   ・タイマー機能有り±12時間のON・OFF可能

   ・自分以外の相手にも発動可能、ただしナビーの自動温度管理不可

   ・スキル発動した相手も【エアコン】と唱えれば自己で温度調整が可能

 3、思ったより応用力がいるので強くイメージ………………!

 4、【魔法創造】発動



 問題はサリエにどこまで与えるかだな。

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