3-20 サリエが激オコです
階段を急いで下って外に出ると、剣を抜いたサリエがいた。
サリエの側で喚き散らしている盗賊のリーダーがいるのだが、どうもチョッキン刑がサリエの手で成された後のようだ。ショートソードを地面に突き立て、その脇にフル勃起の状態だったモノが根元から切断されて転がっている。
「サリエ! お前何やってるんだ!?」
サリエは切断したモノをグサッグサッと剣で何度か突き刺している。これじゃあもう俺の【細胞治療】でも治せないだろう。まぁ、元より理由云々は関係なく治す気は一切ないけどね……。
「落ち着けサリエ! 何があったんだ?」
「ん! 近付いた私におしっこ掛けた!」
「エッ!? おしっこって……」
『……マスター、サリエは盗賊たちの【亜空間倉庫】の中身を回収していたのです。時間が経っても勃起が収まらないそいつを見たくなかったサリエは、治まってからと最後に回したのですが、結局最後まであのままで……仕方なしに痛みを与えて治まらせようと近付いたのですが、両手両足動かせないので油断して……無警戒だったサリエはおしっこを掛けられてしまったのです』
『で、ブチ切れてチョッキンしちゃったのね……』
怒り心頭のサリエに【クリーン】を掛けてやり、出血死しないように頭目に初級回復魔法の【アクアヒール】を掛ける。裸の女に毛布を被せてやりサリエの側に行く。
「ん! ヒールなんか要らないのに!」
初級魔法に留めたのにそれすら要らないと……優しいサリエにしては激オコですね。ついさっき女騎士に対して向けた優しいサリエはどこ行った?
よく見るとサリエの手にしている剣はいつもの自分の剣じゃない。
「サリエ、その剣は?」
「ん、コレは盗賊が持ってたやつ……リューク様がくれた剣は穢したくなかったの……」
なんとサリエは怒り狂っているかと思いや、かなり冷静に激オコしてるようです。
自分の剣はおちんちんに触れさせたくなくて、盗賊から回収した剣でチョッキンしちゃってるとことか何か冷静過ぎて怖いです。
まぁ、サリエの暴挙も今回は仕方ないな。むしろよく殺さなかったと感心する。
【強制睡眠】を発動して、こいつらからもAPを根こそぎ奪う。
ん? 女盗賊が変わった特殊スキル持ちだ。
・【性技】Lv3 :相手をこの上なく快楽に誘う
う~ん、でもこれ女盗賊が持ってるってことは、女が男を喜ばせるためのスキルだよな?
『……マスター、男女関係ないようです。人それぞれ違う性感帯を察知し、それに対応できるようになるようです。でもそんな如何わしいスキル、マスターには要らないですよね』
まぁ、持っていても損はないかな。むしろ皆を満足させてあげられるならあった方が良いか。【性技】をコピーして確保する。
ナビーから不穏な気配がするが、ナビーには実体がないのだから俺の気のせいだろと無理やり納得する。
この場所を特定できず、スラムの入り口付近の路地をあちこち走り回っていた衛兵が人だかりを見つけてやっと到着した。
「フォレスト公爵閣下のご子息であらせられるリューク様ですね?」
「ええ、ご苦労様です」
「私はこの近辺担当の6番隊の衛士長をしているデンベルトと申します。以後お見知りおきを……」
『ナビー、こいつは大丈夫か?』
『……大丈夫とは?』
『この辺担当と言ってただろ? この規模のでかい盗賊団が堂々と街中に拠点を構えているんだぞ?』
『……つまりマスターは盗賊団と衛兵が密通しているとお考えなのですね?』
『ああ、そうだ。違うか?』
『……正解ですが、この者は白ですね。衛兵の中にスパイが紛れ込んでいて、情報を盗賊たちにリークしていた奴がいるようです』
『こいつは白か……』
「あなたたちがくるまでの間に、アジト内のお宝と盗賊たちの【亜空間倉庫】内の所持品はこちらで回収しました。軽い尋問ですが残党は他にもういないようですので、盗賊に関してはこれで終結です。暗殺依頼した奴の背後関係は正騎士の方が受け持ってくれるとのことですので、そちらに引き継いでください。後はお任せして僕たちは学園に行きますので、聞きたいこととかあるようでしたら連絡は、フォレスト家党主のゼノ経由でお願いします」
根掘り葉掘り聞かれても面倒だから、父様の名を借りた。流石に衛兵如きがそうそう父様経由で話を持ってきたりしないだろう。
「あの、事後処理の為にここに残って下さらないのですか?」
「ええ、面倒な残務処理は全て正騎士がしてくれることになっています」
普通なら、捕まえた方にも任意だがほぼ強制で軽い質疑応答があってから解放されるのが当たり前だ。俺はそれが面倒なので、公爵家の人間という最大の利点を有効活用しているのだ。残務処理なんかで時間を割きたくない。だって俺もサリエも朝食まだなんだもん!
「あの、この者の怪我は?」
全裸で丸出しのモノが根元から断ち切られて地面に転がっている。
隊長は敢えて怪我と表現してくれているようだ。生殺与奪の権利のある俺がどうしようが別に良いのだが、公爵家のご子息が嗜虐性の為や面白半分に切り落としたとかの噂が立たないようにした配慮かな。
俺は転がってるモノに生活魔法の【ファイア】を発動する。但し、超高温で発動した青白く輝く炎だ……一瞬で消し炭になってしまう。それどころか、地面が融解してマグマ溜まりのようにグツグツと沸騰してしまった。
慌てて【アクアボール】を液体窒素のイメージで放ち一瞬で凍らせる。
「な、何のことだ?」
「い、いえ……何でもありません。私の見間違いのようです……」
隊長さんは俺の一連の動作に引き攣った顔をしながらそう答えた。
解っているではないか! 俺の意図を瞬時に読み取ってくれた……なかなか優秀な隊長さんだ。
事後処理を隊長に任せ、人気のない路地裏からサリエと転移魔法で学園の自室に帰還する。
「サリエ、ご苦労様。学園はお昼から出席しようか? お腹空いたから、先にご飯食べよう」
「ん、約束のプリン!」
【飛翔】でビビらせてしまった時にした約束をしっかりと覚えている……。
朝食兼早めの昼食を食べた後、サリエに紅茶を入れてもらい寛いでいる。
サリエには、プリンと別にアイスを出してあげている。
美味しそうにアイスをチビチビ食べてるサリエを眺めながら、プリシラと俺の温度差の違いを考えていた。
記憶を探るが『リュークお兄様』と呼んではいたが、あそこまで慕われていた記憶がないのだ。
温度差で思い出したが、フィリアとの溝も一向に改善されない。
逆にナナとは毎日のようにリハビリをして、裸でマッサージ治療をしている為に以前よりも更に懐かれてしまった感があるように思う。
フィリアにはここ4日ほど俺の方から一生懸命アピールして距離を縮めようとしているのだが、上手くいかない。むしろどんどん溝が深まっている気さえするが、フィリアが何を考えているのかさっぱり分からず距離感が掴めない。ナビーが俺の家出以来、人の心内をあまり教えてくれなくなったので、フィリアが何を思ってるのかさっぱり分からない。
ハァ……キスどころか最近は手すら握っていない。
これで恋人か? 許嫁? その辺の只の友人の方がもっと仲が良いように思える。
元々フィリアは結婚するまではダメだと過度のスキンシップは避けて拒絶していた。幼少の頃より神殿に足しげく通った為に、巫女やシスターから強く影響を受けたのだと考えられる。
彼女たちは神に仕える間は処女性を求められるのだ。清らかな、穢れのない体で神に仕えるという教義がある為だ。だがフィリアは巫女でもシスターでもない。ただの巫女被れだ。俺からすればいい迷惑だ。
まぁ、今はプリシラのことが違和感があって気になる。
『ナビー、俺とプリシラとの距離感の違いって何だ? 原因があるんだろ?』
困った時のナビー先生だ。
『……はい。結論から言いますと、マスターにはどうということのない記憶でも、プリシラにとっては宝物のように大事な記憶、思い出なのでしょうね』
ん~抽象的すぎて良く分からん。
『もっと分かりやすく、どのことを言ってるのか教えてくれないかな?』
『……プリシラには1人も友達がいません』
『ああ、目のせいだろ? ナナも足のせいで社交場に出る機会もなく、友人はフィリアしかいなかったからね』
『……それもあるのですが、プリシラのユニークスキルの影響が大きいのです。今回の暗殺にも係わってくるので説明しますね』
『ああ、頼む』
『……プリシラが生まれ付き目が殆ど見えない弱視なのはご存知ですね。それとは別に生まれ付きなモノがもう1つあるのです。【審理眼】というプリシラのユニークスキルで、相手と会話をすることで嘘や虚言が全て分ってしまうという常時発動型の怖いスキルを持ってしまったために、母親や兄妹ですらプリシラに近付こうとしなくなってしまいました』
『あ~それでか。正騎士の皆がプリシラの『ウソね』の一言で警戒するはずだな』
『……はい。プリシラは国の定める審問官の1級ライセンスを持っています』
審問官は国家資格なのだが、その発行は神の1柱の雷神セトが行っている。つまり知と正義・審判を司る雷神様公認なのだ。神の祝福を得ているためにその真偽のほどは完璧で、審問官が有罪判決をしたのなら、どう反論しても判決が覆ることはない。
審問官を疑うということは、雷神セトに対する冒涜行為に当たるのだ。
『その審問官の関係で命を狙われたと?』
『……そうです。王都から3日の距離にあるギャレルの街の領主が犯人ですね。税の徴収をごまかし不正に搾取した疑いがあった為、審問官として今回プリシラが派遣されたのですが、帳簿をごまかす時間稼ぎの為に命を狙ったみたいです。ギャレルの領主は1週間あれば帳簿の金額を全て調整して不正をなかったことにできるみたいです』
『つまり、今出発され、3日で到着されるとまずいから殺すってか?』
『……ですね。審問官は数が少ないので、プリシラを暗殺できれば次に審問官が送られるまでに時間が少し開き、帳簿の修正が可能と踏んだのでしょう』
『暗殺理由は分かったのだが、俺との距離感の話にどう繋がるんだ?』
『……マスターが8歳の時にゼノに連れられて城に行った時です。その時ゼノの公務が終えるまでの3時間ほど遊んだ少女がプリシラです』
『ああ、それは覚えてる。最初は他の従姉にあたる姫たちが2人居たんだけど、プリシラが侍女に手を引かれやってきたら、皆スッとどこかに行ってしまったんだよ。当時はあまり気にしてなかったけど、そういうことだったのか……結局プリシラと俺の2人でお茶したりして時間を過ごしたんだよな……』
『……その時にプリシラに気に入られて懐かれたのです。会話の最中一度も虚言を全く言わないマスターに興味を持ち、根掘り葉掘り質問を繰り返していたようですが、別れ際になっても一向に嘘を言わないマスターに恋したようです。当時のリューク君は今の嘘だらけのマスターと大違いですね』
『幼少時の恋心か……今の嘘だらけの俺は余りプリシラと会わない方が良いな』
1級審門官とは厄介な存在だな。
でも、俺までプリシラの姉妹たちのように邪険にすると彼女を凄く傷付けるよな。
そう言えば近日中に会いに行くと言ってしまった、悩みの種がまた1つ増えたな……。
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