3-106 フィリアの様子が少し変です
翌日、朝食を食べた後、騎士たちが周辺を調査したが、カメレオン男のような怪しい魔獣も発見できず、結局何も分からなかったようだ。
その後大勢の騎士に守られながら俺たちは学園に帰宅した。
既に他のクラスの者は帰ってきていて体育館に集まっていた。どうやら学園長の挨拶で閉会するようだ。閉会式が終わったら、クラス単位で担任のホームルームがあった。
「明日は1日休息日になっています。金曜日には通常授業に戻りますが、すぐに土日でまた休みですので、多少の筋肉痛が出ても頑張って出てきてくださいね」
ロッテ先生はニヤニヤしながらそう言った。今の言い方だと、毎年筋肉痛で数人が休むのだろうな。
明日でもいいのだが、まだ夕飯にするには時間が早い。死んでなお邪気を放っているカメレオン男を【インベントリ】に入れておきたくないんだよね。
これから神殿に行ってアリアの所に死体を転送し、フィリアとナナのジョブ獲得をして、冒険者ギルドに素材を売りに行こうかな。
「皆、疲れている? 余力があるなら、これからナナとフィリアのジョブを獲得に行こうと思うのだけど、どう? 行けそう?」
「兄様、行きたいです!」
「リューク様、わたくしも行きたいですわ」
ジョブを獲得したら、基本ステータスがかなり上がるのだから早く確認したいよね。
「じゃあ、今から神殿に行って、その後に狩りまくった魔獣をギルドに売りに行こうか?」
神殿に行き、シスターにオークのお肉を寄付だと伝え手渡した。その後、ナナとフィリアのジョブを得るために待合室で準備ができるまで待っていたら、大司教様がやってきた。
「大司教様、リューク様が神殿に沢山お肉を寄付してくださいました♡」
俺とルルの来訪で、大司教自ら出向いてくれたみたいだ。ルルが嬉しそうにお肉の寄付の報告をしている……その笑顔がとても可愛い。
「それは有り難いですな。なにせ子供たちは食べ盛りで、お肉はいくらあっても足りないくらいです。本当に感謝いたします」
「いえ、どういたしまして。未解体分はギルドで解体した後届けてもらうようにします。後20頭分ほど届くので皆さんでお食べください」
「そんなに沢山! しばらく子供たちにたっぷりお肉の入ったものを食べさせてあげられます。本当にありがたいことです」
「リューク様、そういう優しいお心遣いは、婚約者としてとても好ましいですわ♡」
フィリアが何やら自慢げだ。
「そうです兄様、優しい気配りができる兄様は素敵です♡」
「ん、カッコイイ♡」
褒められて照れくさいけど、悪い気はしないよね。
「女神アリア様から神託があり、神殿の祭壇を誰の目に触れることなく内密に使わせてほしいとのことで、既に人払いもいたしています」
「ご配慮ありがとうございます。すぐに使わせていただきます」
俺とサリエだけ祭壇のある部屋に入り、カメレオン男を祭壇に捧げる。
青い魔法陣が発生し、一瞬でカメレオン男が消えた。
これで、今回の騎士襲撃事件は終えることになる。
全く全容がつかめないままなので釈然としないが、これ以上調べようもない。
サリエだけ一緒に入った理由……魔術師のジョブを大賢者に変更したのだ。
魔力量がまた増えたと凄く喜んでくれた。
忙しい大司教様はすぐに仕事に戻り、今回もルルがジョブ獲得の儀式を行ってくれ、ナナとフィリアはジョブを得た。
まぁ予想通りだったけど、ナナは【魔術師】、フィリアは【回復師】を選択したようだ。
二人ともお目当てのジョブが獲得できてご機嫌さんだ。
「ふふふ、兄様、MPが予想以上に増えました♪」
「わたくしもですわ。3倍近く増えています」
本来ナナは王家の特徴が強く出ているため魔術師より剣士向きなんだけどね。フィリアは元から適性が強い回復職なので得られる補正はナナより多いみたいだ。
「増減の度合いは個人差が大きいんだよね。神の祝福や加護を得ている者ほどジョブを得た時の増量値が多いそうだよ。フィリアもナナも2~3倍近いって事は、何か神の祝福を得ているのだろう。良かったね。じゃあ次はギルドに行こうか」
道すがらご機嫌なナナとフィリアが俺の横に来て腕を組んできた。
「ナナ邪魔しないで! たまにはリューク様と二人で腕組みして歩かせてくれても良いでしょ! いつもいつも邪魔ばかりして! わたくしはリューク様の婚約者なのよ!」
「ナナだってせっかく一緒に歩けるようになったのだから、兄様と腕組みしたいのよ!」
そう、今日は車椅子を使わないでナナを歩かせている。
「二人とも止めないか。横に三人が並んで歩くと往来の邪魔だよ」
夕刻なので神殿からギルドに向かうメイン通りは結構人通りも多い。
ナナは軽く肩にぶつかっただけで転倒する可能性がある。パエル姉妹が前後から補助についているため、余計に道路の場所を取って邪魔だし、美少女ばかりの集団なので人目を引いてしまっている。
「私も―――」
「「ルル様はダメです!」」
「そ、そんなに睨まなくても良いじゃないですか……」
結局じゃんけんで決めることになり、今回はフィリアが俺の横を勝ち取ったみたいだ。俺と腕を組んで幸せそうな笑顔を向けてくれる……フィリア可愛い!
間もなくギルドに到着し、大量の魔獣を買い取ってもらった。
売ると査定に時間のかかる食用肉は後日神殿に届けるように依頼したので、査定はすぐに終わった。
魔獣を売ったお金は結構な額になり、皆も喜んだ。うちは戦闘に参加していなくても均等割りだからね。マームは勿論のことながら、チェシルとマシェリがマームに負けないほどいい笑顔をしている。
ローレル家にはフォレスト家からの援助金が入る予定だが、手元に届くには日数がかかる。今回のウハウハタイムで、当座のチェシルたちの生活費もできたようだ。
これから夕飯の準備も疲れているし面倒だろうと、今日は外で食べることにした。
王都でも少しお高目なレストランだ。
「ルーク様、このような高級店初めてです!」
マームがめっちゃ喜んでいる。
「今日は俺のおごりだから、皆も遠慮しないで注文してね」
「「「はい。ご馳走になります」」」
皆遠慮気味なので、適当に俺の方でどんどん注文する。
「ん、リューク様多すぎ……そんなに食べられない」
「まぁ、残れば折り詰めにしてもらって、マームの明日の朝ごはんにすればいいよ」
「えっ! 良いのですか⁉ やったー、ありがとうございます!」
マジで嬉しそうだ。
食べ残しと言うと聞こえは悪いが、高級店の美味しい料理なので、マームからすれば捨てるなんてありえないことみたいだ。
班員の中ではマームとキリクは学園内の食堂で食べているからね。二人の朝ごはんになるよう、手を付けていないものを先に取り分けておいてあげよう。
二人を毎食俺たちの食事に呼ぶことも考えたのだが、あまりべったりでなあなあな関係になってもよろしくないと思い、現状こうやって何かあった時のみにしている。1年・2年と関係がもっと深まれば結局なぁなぁな関係になる気もしているけどね。
皆が笑顔の中、食事に来てから急にフィリアは無口になって元気がなくなったのが気になっている。歩き疲れたのかな?
時々こっちを見て、俺と目が合うと顔を少し赤らめ俯いてしまう。
う~~む、なんだろう?
『……マスター、今日で中間試験終了です。なにかお忘れではないですか?』
『あっ! そうだった……それで元気がないのか』
フィリアとは中間試験が終わってから夜伽がどうのとかいう約束をしていたんだった。
『……元気がないのではありません。自分の方からは言い出せず、ただ緊張しているのです。勇気を出して誘った時はマスターに断られていますからね』
『あの時はサリエの誕生日だったから仕方がないじゃん』
フィリアは今日お誘いがあるかもと思って緊張しているようだ。
そこまで無理しなくてもいいとは思うのだけどなぁ。
『……王城であれほど催促するような発言と行動をとっておいて、今更何言ってるのやら』
そ、そうでした……フィリアを自殺未遂に追い込んでしまうほど俺はやらかしてしまっている。
でも今回のこれはチェシルとマシェリに催促され追い詰められたような感じになっているんだよね。できることなら、良い雰囲気になって自然にそういう行為に至りたい。
どうしたものやら――
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