1-36 ブチ切れてたら創造神とやらが来ちゃいました
29年というふざけた年数を聞いてしまった瞬間、俺はこの45年の人生の中で一度もないくらいの激怒で我を忘れてしまった。俗にいうブチ切れたのだ。
女神に掴みかかったのだがそのまま素通りして、バランスを崩して転倒してしまう。
それがまた無性に腹立たしく感じ、完全に理性をなくして実体のない思念体の女神に殴ったり蹴ったりと虚空を虚しく空ぶっている。
女神はそのまま土下座をして俺に語りかけてくる。
「リュークさん、本当にごめんなさい。どうか冷静になって少し話を聞いてくださいませんか?」
この言にさらに俺はブチ切れる!
「俺はリュークじゃない! 小鳥遊龍馬だ!」
思念体ならもしやと思い魔法を放つ。初級の軽度のものだ。いくらキレていても殺すほどの威力はセーブしている。魔力を感知したのか一瞬だけ頭を上げてこっちを見たが、直ぐに額を擦り付けるほどの土下座の姿勢に戻る。放った魔法は全く効果なしだ。いや、効果はあるのだろう。シールドで完全に防がれているのだ。こっちを見るまでもなく無防備な土下座の体制で余裕で凌いでいるのだ。
無詠唱の【多重詠唱】を使い連弾で撃ちこんでいるのだが一向にシールドが解ける気配がない。リバフしている魔力の気配すらないのだ。ダメージ吸収いくつあるのか底が知れない。
連弾の轟音で肉声が聞こえないと判断した女神は念話で話し掛けてくる。
『龍馬さんごめんなさい。どうか冷静になってください』
冷静になれる訳ないだろうが! 向こうに帰っても俺はジジーなのだ!
何やら理由がありそうだが、こいつは俺を詐欺に嵌め、人生の大半を奪ったのだ!
悪魔が願いを聞く替わりに、よく寿命を頂くと言うが、それより性質が悪い。
悪魔の方が可愛げがある。
悪魔は寿命を取るが、それは本人の願いと引き換えだから納得済みだ。
悪魔契約と言うが、あくまでも契約なのだ。
この女神のは納得した契約ではなく契約詐欺だ。
たった7日の異世界行きなんかに29年も支払って行きたくもない!
詐欺師の話なんか聞きたくもない!
訪問販売員の話は聞いちゃダメなのだ。訪問販売員が全て詐欺とは言わないが、9割以上がぼったくり商法なのは今のご時世知らない人はいないだろう。屋根・壁・車庫・ソーラー給湯器・シロアリ消毒等、訪販での販売で30万と言われた商品は正規の普通の受注会社で依頼すれば15万でできるものばかりなのだ。
詐欺師の話は聞かない。
少しでも怪しいと思ったのならこれが一番確実な防衛方法だ。
駅前でナップサックのカバンを肩に背負ったやつらの話を聞いちゃダメだ……宗教勧誘やら壺やお札や絵画を買わされるぞ!
路上で歩いてて「可愛いね、モデルやってみない?」とか言われて付いてっちゃダメだ……言葉巧みに、気付けばAVに出る羽目になるぞ!
全部が詐欺だとは言わない。だが怪しい奴に関わらないのが一番の自己防衛になるのだ!
怪しいと思ったら話を聞いちゃダメなんだ!
怪しいと思いつつ聞いてしまった俺は今こうなってしまっている……後悔先に立たずだ!
魔法の連弾を繰り出しているが、どの系統の魔法を放っても怪我どころか頭さえあげさすことができずにいる。
もうすぐMPが尽きてしまう。何も仕返しできないまま終わるのか……。
ここで俺はあることを考え付いた。頭を下げて俺の思考を読んでない今がチャンスかもしれない。
魔法の連弾に紛れて【魔糸】を放ったのだ。そして手に絡めてギュッと両手を拘束した。
『エッ!』って顔でこっちを向いたのだがもう遅い! 速攻で【魔枷】を手に嵌め、魔糸で足を閉じさせ足も【魔枷】で拘束する。思ったとおり【魔糸】でなら女神に触れられるのだ。
枯渇寸前だったMPを【魔糸】のドレイン効果でアリアから吸い取る。
「龍馬さん!? ちょっと! えっ? 外れない!? 何これ! 魔力が出ない!」
「あはは、アリアちゃん、これでやっと仕返しができるね?」
もう嬉しくて思わず女神をちゃん呼ばわりしてしまった。
俺はおそらく今とっても素敵な笑顔をしているだろう。心の底から嬉しいのだから仕方がない。
【サンダラボール】を手に浮かべて周りにバリバリッと放電音が鳴り響いた瞬間アリアは慌てて制止してきた。
「龍馬さん! 待ってください! 女神でもこの状態だと死亡します! 死んじゃいます! マジ死んじゃうので待って~!」
もう必死だった……目に涙さえ浮かべて懇願してきた。
「マジで死んじゃうの? この世界の主神様が? 実体がないのに死ぬとか言っちゃって……また俺を嵌めようとしてる?」
「嘘なんて、私は何一つ言っていません!」
「そうだね……嘘は言ってないよね。ただ俺を引っ掛けただけだもんね。確かに嘘は言ってない」
さてどうしたものか……殺したり怪我をさせたりしたいわけではない。でも彼女の話はこれ以上聞きたくない。
今度はどんな罠で何をさせられるか分かったものじゃない。こんな詐欺紛いなことをするくらいだ。さっき仕方がないとか俺に頼るしかないとか言ってたし、俺に何かさせたいことがあるのだろう。
日本では45歳、中年太りのおっさんだ。
こんなおっさんに利用価値などないと思うし、何をさせたいのか興味はあるが、俺は何もする気はない。
なので聞かない。
聞くときっと何かやらされる。詐欺師の話は聞いちゃダメだ。
「少しだけ私の話を聞いてください!」
「詐欺師の話は聞かない。【音波遮断】あなたの発する音を奪った。喋りかけてもこっちにはもう一切聞こえないからね。こっちの声はそっちに聞こえるけど。さてどうお仕置きしようかな」
少し考えて妥当な罰を思いついた。
「さて、俺を嵌めたアリアちゃんの罰を思いついた。俺のいた世界では日本だけじゃなく、世界共通の罰の与え方がある。悪い事をした子はお尻ペンペンだ!」
【魔糸】を使って女神アリアを強制的に四つん這い姿にする。女神は白いシスター服の様な膝下ぐらいの丈のワンピースを着ている。糸でそれをたくし上げお尻をペロンチョする。
うん、可愛いお尻だ。女神もちゃんとパンティーを穿いているんだとどうでもいい事を思ってしまう。
アリアちゃんは顔を赤らめイヤイヤしているが、俺の29年を奪ったんだ、そう簡単に許してあげない。
「やっぱパンティー穿いていたら、痛くないよな。お仕置きなんだからパンティーもやっぱ剥ぐか」
アリアちゃんは俺の言葉でさらに首をぶんぶん振ってイヤイヤをしている。
何か言ってるがこっちには聞こえない。糸をパンティーに絡めて膝元まで一気に引き下ろした。
アリアちゃんは羞恥で真っ赤になって涙目だが、ここからが罰の本番だ。
【魔糸】でしか触れないので鞭打ち刑になってしまうが、細いと怪我をさせてしまう恐れがある。なのでハエ叩きのような物に変形して硬さも少し柔らかめのものをイメージした。
「アリアちゃんの処罰は、お尻ペンペン百叩きに決定しました~」
【魔枷】を嵌められたアリアちゃんはどうやら俺の思考も読めないようだ。
パチン! 生尻を叩くといい音がした。
真っ白いアリアちゃんのお尻が見る間に赤く染まっていく。
30秒ほどそれを観察して、大丈夫そうだと判断する。
昔、日本での刑罰で百叩きとかあったようだが、普通に死亡するレベルのものだったらしい。
全身の皮膚は裂け、パンパンに腫れ上がり高熱を出して、その日のうちに何人かに一人は死亡するそうだ。その場でショック死もある。叩き手に手加減してもらうために家族が賄賂を贈ったりしていたみたいだ。
パチン、パチンと左右順番に数を数えながらお尻を叩いて行く。22回目なのだがアリアちゃんのお尻はもう真っ赤だ。腫れ上がるほどの力は入れていないが、アリアちゃんは叩かれるたびにビクンッと跳び上がる。
「この世界の主神にこんなことをしてるんだ。流石に天罰が下るだろう。まぁ~下すのはアリアちゃんだけどね~。どうせあっちに帰ってもおじいちゃんなんだろ? もうどうでもいいよ。百叩きが終えたら解放してあげるから、俺を殺してくれればいい」
アリアちゃんは首を振って否定してるが、何かさせようと交渉する気だろう。
だが、俺は一切何もする気はない。
30回目をペチンとやった時にバリバリっという放電音とともに眩い光に包まれて爺さんが現れた。
あ、これヤバい人だ! 人じゃないな……神か。
本能的に悟ってしまう。どうやら違う神がアリアちゃんを助けにきたのだろう。
そうだよな、主神がパンティー脱がされて、お尻ペンペンされて他の神たちが黙っている訳ないよな。
爺さんと俺はお互い何も言わず見つめ合っている。だが、俺の手は10秒毎にペチンとやるのは止めない。アリアちゃんは現れた爺さんを見て顔を真っ赤にさせて何か叫んでいるが。声は聞こえない。
「ウヒャハハハ! お主面白いのぅ! この世界の主神にお尻ペンペンだけでも驚いているのに、儂を見ても驚くどころかその手を止めることもせんとはな、実に面白い! これほど面白い見世物は数万年ぶりじゃ!」
ん? 数万年ぶり? ナビーがこの世界はまだできて新しいと言ってたよな? じゃあ、この爺さんはこの世界の神の一人じゃないってことなのかな?
ペチン!
「頭も良いようじゃな。其方の気持ちも分かるのじゃが、そろそろアリアを許してやってくれぬかの? 流石にこの世界の主神じゃから、他の部下にあたる神々に体裁が悪いのじゃ。管理職のそなたなら分かるじゃろ?」
やはりこの神様も思考を読んでくる。
ペチン!
「あなたは、もしやアリアが言っていた創主様とかいう存在の方ですか?」
「うむ、この世界を創った存在で合っておる。もはや主神を呼び捨てとはびっくりじゃ。クククッ」
「敬う心があるから人は『神』に『様』を付けて『神様』と呼ぶのです。この詐欺師に様は付けたくないですね」
ペチン!
アリアのお尻も痛々しいほど真っ赤になったし。俺の気も幾分晴れた。創主とやらが出張ってきたのだ。相手が一方的に力を使えば俺のことなんか存在そのものが一瞬で消し去られるだろう。俺の暴挙もここまでだな。
創主という存在だが偉ぶることも強要することもしない。こっちも態度を改めるしかない。
真っ赤になったお尻に【アクアラヒール】を掛けてあげ、アリアの【音波遮断】【魔糸】【魔枷】での拘束を解いてあげる。
そそくさとパンティーをたくし上げてから、俺を涙目で睨みながら訴える。
「酷いです龍馬さん! 少しぐらい話を聞いてくれてもよいじゃないですか!」
「詐欺師の話は聞いちゃいけないってのが俺の世界の常識だ!」
「詐欺師って!」
「まさか俺を騙したって意識はあなたには全くないのか?」
「うっ~」
「よかった……本人に全く悪い事をしたという自覚がないのなら、お尻ペンペンする意味もないからね」
「あ! 創主様! 挨拶が遅れて申し訳ありません!」
「いいよいいよ、面白いものも見れたしね。気にしなくて良いよアリアちゃん!」
この爺さん、わざと俺が言ったアリアちゃん呼ばわりをして彼女を煽っている。
創造神なのにお茶目な爺さんだ。
「う~、恥ずかしい~! もうお嫁にいけない……」
「アリアよ、流石に可哀想だと思って、パンティーを脱がされる前にこの亜空間の部屋に【ブラインド】の魔法を掛けておいてやった。アリアの尻を見たのは儂と龍馬だけじゃ。龍馬に責任を取ってもらって嫁にしてもらえばよいじゃろう?」
何言ってんだこの爺さん……いくら可愛くてもこんな悪女、嫌に決まっているだろ……お断りだ!
「悪女って……私、慈愛の女神って言われているのに、酷い……それに脱がされる前から見ていたのでしたら創主様ももっと早く助けてくださいよ~」
「ンヒャヒャヒャヒャ! アリアちゃん嫌われておるのぅ」
正直女神アリアの話は聞きたくない。
だが創造神とかヤバいのきちゃったし、俺は生きることすらもうどうでもいい気分になっていた。
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